夏休みに読みたい! 作家・鈴木涼美さんが選ぶ今月おすすめの3冊

夏休みに読みたい! 作家・鈴木涼美さんが選ぶ今月おすすめの3冊
夏休みに読みたい! 作家・鈴木涼美さんが選ぶ今月おすすめの3冊
CULTURE 2026.08.07
作家・鈴木涼美さんがセレクトした、2026年8月におすすめの3冊をご紹介。ぜひ手に取ってみてください。
CURATED BY 鈴木涼美

1. 「交信したい」著者が人や場所を訪ねて記した言葉。『信号旗K』朝吹真理子

「交信したい」著者が人や場所を訪ねて記した言葉。『信号旗K』朝吹真理子
3,300円(マガジンハウス)

タイトルの「信号旗K」は船舶が用いる信号旗のひとつで色は青と黄色、単体で使用した際には「わたしはあなたと交信したい」というメッセージになるらしい。著者が毎月、誰か、あるいはどこかを訪ねた、その交信の記録を綴る。会った人との関係や場所の歴史的な記憶、会った日の出来事、相手のいくつかの言葉などで構成されるエッセイは、対談や書簡集とはまた違う不思議な読後感を残す。いつも重い荷物を持って現れる作家の村田沙耶香氏がぬいぐるみについて語った言葉や、〈Mame〉デザイナーの黒河内真衣子氏が買って著者に渡した絵のことが読んでからずっと頭にある。

2. 凡庸な不倫が愛や結婚への違和感を浮き彫りに。『不倫に関する、ちょっとした疑問』許 俐葳

凡庸な不倫が愛や結婚への違和感を浮き彫りに。『不倫に関する、ちょっとした疑問』許 俐葳
2,420円(中央公論新社)

著者は台湾の文芸誌の副編集長でもある作家で、かつては別のペンネームで創作やエッセイを多数執筆、賞にも輝いていた。本作の主人公はとてもリアルな現代女性だ。フェミニストを自認する物書きの卵でありながらも、凡庸な映画監督との不倫に没入していくなかで、正しさと気持ちのよさの狭間で揺れる。「からだって怖い」。その印象的なフレーズに何度か頷いた。たしかに体は時に頭を裏切る。「私にとっていちばん致命的なのは、浮気ではなく、本気だ」。少し意外で、清々しい結末にむかっていく道中は、自我と恋に揺れる私たちの物語そのものかもしれない。

3. ごはんのように日常的におやつを作るという選択。『とびきりおいしい おうちおやつ』野村友里

ごはんのように日常的におやつを作るという選択。『とびきりおいしい おうちおやつ』野村友里
1,760円(小学館クリエイティブ)

お菓子作りはハードルが高い。と私なんかは思うが、人によっては手際や目分量が優先されるおかずよりも、きちんと秤を使うおやつは実験のようで楽しいという意見もある。小学生にもわかるシンプルな工程と鮮やかなイラストつきレシピで構成されるこの本は、実験っぽい楽しさはそのままに、お菓子を作る習慣のない私にもとてもとっつきやすい。特別な道具は不要、毎日のおかず作りのように、家にある基本的な材料を活用して手作りおやつのある生活が実現する。「カップショートケーキ」と「お花クッキー」は娘が小学生になったら台所に並んで挑戦したい。

CURATOR
鈴木涼美
作家

すずき・すずみ/エッセイ『めめSHEやつら』(KADOKAWA)、長編小説『典雅な調べに色は娘』(河出書房新社)が発売中。

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