読書の秋へ向けて。作家・鈴木涼美が選ぶ今月のおすすめ3冊|『どれか一つは嘘』キム・エラン、『ぼくは青くて透明で』窪美澄×青井ぬゐ、『紅茶と花の香る暮らし』中西玲子

読書の秋へ向けて。作家・鈴木涼美が選ぶ今月のおすすめ3冊|『どれか一つは嘘』キム・エラン、『ぼくは青くて透明で』窪美澄×青井ぬゐ、『紅茶と花の香る暮らし』中西玲子
読書の秋へ向けて。作家・鈴木涼美が選ぶ今月のおすすめ3冊|『どれか一つは嘘』キム・エラン、『ぼくは青くて透明で』窪美澄×青井ぬゐ、『紅茶と花の香る暮らし』中西玲子
CULTURE 2026.09.11
今回は、作家・鈴木涼美さんがセレクトした、2026年9月におすすめの3冊をご紹介。韓国で12万部を超えるベストセラーとなった『どれか一つは嘘』(キム・エラン)、窪美澄のボーイズストーリーをコミカライズした『ぼくは青くて透明で1』(窪美澄・青井ぬゐ)、紅茶と花のある暮らしをのぞける『A CUP OF TEA & FLOWERS 紅茶と花の香る暮らし』(中西玲子)。気になる一冊を、ぜひ手に取ってみてください。

※書籍情報・価格などは記事公開時点のものです。
CURATED BY 鈴木涼美

1. 何かを失った3人の高校生たちを繋ぐ「嘘」の物語。『どれか一つは嘘』著・キム・エラン、訳・古川綾子

何かを失った3人の高校生たちを繋ぐ「嘘」の物語。『どれか一つは嘘』著・キム・エラン、訳・古川綾子

タイトルの「どれか一つは嘘」は、高校の担任が生徒にやらせた少しユニークな自己紹介の方法。五つの文章を使って自分を紹介するのだが、どれか一つは嘘を入れる。「私は水中分娩で生まれた」「僕は去年に脚を怪我してサッカーを引退した」「私はたまに目覚めるのが怖くなる」など。それぞれ別の事情で現在母親と暮らすことができない3人の高校生が、「嘘」をきっかけにお互いの秘密や不幸を垣間見ることになる。喪失をテーマとした『外は夏』が話題となった著者の最新長編。若い主人公たちの絶望や物語の持つ不穏な光を生かす翻訳も見事で、かみしめるように読んだ。

2. 空気みたいに過ごすはずだった「ぼく」を揺らすもの。『ぼくは青くて透明で1』原作・窪美澄、漫画・青井ぬゐ

 空気みたいに過ごすはずだった「ぼく」を揺らすもの。『ぼくは青くて透明で1』原作・窪美澄、漫画・青井ぬゐ

小説だけが持つ自由に、漫画でこそ表現できるものが重なり、重層的な恋物語が幕をあけた。家庭の事情から血の繋がらない母と知らない地方の町へ引っ越してきた「ぼく」は、恋愛対象が男の子である自分の普通が、世間的に理解される普通ではないことに自覚的で、「今日も自分の『中身』が漏れ出さないように生きていく」ことに慣れていた。そんなぼくが転校先の高校で出会ったのは、クラスをまとめる優等生のクラスメイト。時はコロナ禍、マスクで半分隠された高校生たちの、若くて複雑でまっすぐな表情が、自然の残る風景の中で少しずつ揺れていく。

3. 日常の中のティーポットや生花で暮らしを想像する。『A CUP OF TEA & FLOWERS 紅茶と花の香る暮らし』中西玲子

日常の中のティーポットや生花で暮らしを想像する。『A CUP OF TEA & FLOWERS 紅茶と花の香る暮らし』中西玲子

朝起きた時、仕事から帰ってきた時、雑然とした生気のない部屋を目にして疲れが倍増した経験はたくさんある。かといってホテルのような空間を維持する時間はない。ティールームやサロンの運営を手掛けてきた著者が、その知識やこだわりを惜しげもなく詰め込んだ本作の写真は、スタジオで作り上げたものではなく長年スマホで日常的に撮りためてきたものが中心。紅茶の種類や一工夫くわえた楽しみ方はもちろん、花と紅茶の隙間から垣間見える暮らしを想像するのが楽しく、小さな真似から始められる気がした。まずは手になじむ花切りハサミを探したい。

CURATOR
鈴木涼美
作家

すずき・すずみ/著書にエッセイ『めめSHEやつら』(KADOKAWA)など。新刊『女の子未満』『悪い血』が発売中。

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