わざわざいきたい店|盛岡
Shop#2 羅針盤 TRAVEL 2023.07.21

ECで何でも買える時代だけど、やっぱり実際に行ってみないと買えないモノや体験、出会いがある。その場所に行くことが旅のメインになるような名店を毎回ゲストの方に紹介してもらいます。

レコードが流れる喫茶店で、ゆっくりとコーヒーを一杯。

東京・西荻窪で雑貨店〈FALL(フォール)〉を営む三品輝起さん。初めて訪れた盛岡の喫茶店〈羅針盤〉の居心地のいい雰囲気と、コーヒーとカルチャーの話。「〈FALL〉でも展示をしてくれた、デザイナーでコラージュ作家の佐藤洋美さんが『盛岡に行くなら』とおすすめしてくれたお店。閉店した喫茶店を引き継いで、現在の形になったそうです。オーナーは、蔵前にある喫茶室〈蕪木(かぶき)〉の蕪木祐介さん。〈羅針盤〉は盛岡城址の近く、盛岡駅から歩いて20分くらいのところにあります。中に入ると、設えは簡素で薄暗く、レコードかかっていたことをはっきり覚えています。というのも、ちょうど旅行の直前に訃報に接したピアニスト、エマホイの曲だったから。修道女でもあった彼女の禁欲的なパーソナリティと店内の素朴な雰囲気がぴったりだったこともあって、一層印象深かったですね。飲み心地のブレンドコーヒー『オリザ』(700円)を片手に、閲覧用の小さな本棚にあった堀田善衛のエッセイ集『時代と人間』を半分くらい読んでお店を後に。すごくいい本だったし、思い出も兼ねて帰京してから本書を買いました。思えば、旅に欠かせないのは本と喫茶店。そのどちらも満たしてくれる素敵な場所でした」

text : Ryota Mukai

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