トップサウナーたちにサウナの基本をお聞きします! サウナって結局、何がいいんですか?【後編】 LEARN 2023.01.31

ムシムシして熱いのに健康にいいの? ととのうってどういう状態? 大ブームのサウナだけれど、よくわからないことだらけ。

そこで3人のプロサウナーの方たちに、ご自身の体験をもとにサウナのメリットや入り方を語っていただきました。

サウナに入るようになって、 お金持ちになりました!?

Hanako:サウナに入るようになってから、大きく変わったことはありますか?

清水:基本軽くなった気がしますね、考え方も、フットワークも。きっとサウナがシンプルな場所だっていうこともあると思うのですが、物事をあまり重く捉えず、とりあえずやってみようと何事に対しても軽くいられるようになったんじゃないかな。

加藤:僕もめちゃくちゃ変わりました。わかりやすいことで言うと、昼ごはんを食べた後、眠くならなくなりましたね。それまですごく午後に眠くなる人だったんです。
だから、大変な仕事のときはパフォーマンスが落ちるから、昼ごはんを食べられなかったんですよ。今は食べても眠くなりません。サウナに入ると睡眠の質が良くなるので、日常生活が快適に過ごせるようになるんですね。

タナカ:これはサウナの醍醐味だと思うのですが、毎日入っていると、やっぱり体がちょっとずつ変わってくるんですよね。 言ってみれば、生活習慣が変わるわけですから。私も本当に風邪をひかなくなりましたね。
あと、仕事柄デスクワークで目も使いますから、凝りがずっと残ったままみたいな状態だったんですが、そんなのがやっぱりなくなりました。でね、細かな体の変化っていうのはあるんですけど、めちゃくちゃわかりやすいので言うと、ヒット作が出るようになりましたね(笑)。

清水:すごい!(笑)

タナカ:サウナに入る前は、かなりマニアックな作品ばっかり出していたんですけれど、10年ぐらい前からサウナに入り始めて、「コップのフチ子」が当たり、『サ道』が当たり……それで、あの、お金持ちになりました(笑)。富を得ましたね、サウナで(笑)。

一同:(笑)

加藤:すごく大事なことですよ!

タナカ:でもね、これは、結構論理的にも説明することができるんです。まず、一日のうち元気な時間が増えるということは、それなりに労働力も増え、加えてハイパフォーマンスが発揮できる時間も増えるんです。
一日に描けるページ数がもう全然違うんですよ。そして病気しないでしょ。だから、ずっとコンスタントに量産できますよね。
さらにリラックスする時間も増えるから、アイデアがひらめく(#4)。特にサウナから上がって、ととのったあと、何にもやることがない状態になったときに、良い考えが思い浮かんだりするんです。そういう好循環が生まれるようになりました。

加藤:僕も実はすごく思い当たる節がありまくってですね、サウナの最中は熱いとしか思わないので、基本あまりアイデアがひらめくことはないんです。でも、休憩したあとは良いことばっかり思いつくから、何なんだろうと思って、実際に脳科学的に調べてみたんですよ。
Magneto-Encephalo-Graphy、通称MEGという脳をスキャンする最先端の機械が僕の所属している病院にあって、サウナ後の脳をスキャンしてみたんです(笑)。そうすると、普段使えない領域がとても活性化しているんですね。
なので、クリエイティビティというか独特な発想というのが生まれやすくなると思われます。タナカさんの体感っていうのは恐らく合っていると思いますね。

タナカ:逆に、サウナ室では途中から何も考えてられなくなるんですよね。もう熱いとしか思わない。それはそれで、完全にいろんな意味から解き放たれる瞬間ですよね。脳が休んでるなと感じるときがすごくあります。
加藤:実際、サウナ室に入っているときは脳血流が減るので脳が休んでいる状態になるんです。サウナに入ると血流が良くなるイメージがあると思うんですが、実は脳血流だけ下がるんですよ。だからそもそもものを考えづらくなる。タナカさんの肌感覚って、医学的に大体合ってるのがすごいですよ。

KEYWORD #4 アイデアがひらめく!? サウナと脳の関係

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©『マンガ サ旅』

加藤先生の研究によると、サウナの効果の一つは「脳疲労が取れること」。サウナ室に入ると強制的に思考を停止させられるため、脳回路の消費量が減る。それにより脳がスッキリするのだそう。また、MEGでサウナ後の脳をスキャンした際に活動していたのは感覚を司る領域。これによって、アイデアが浮かびやすい状態になるという。

プロ注目のサウナ界 ネクストトレンド!

Hanako:みなさんが注目している、サウナのネクストトレンドは何かありますか?

清水:岐阜に〈恵みの湯〉というスーパー銭湯があって、そこは薬草やハーブを育てて、それを使ってロウリュしたり、ヴィヒタを作ったり(#5)して、サウナ施設だけにとどまらない活動をされているんです。
いい香りがするとか、このハーブは体にこう効くんだというような切り口で、今までにないサウナの入り方を提案されていて、これからはそういう複合的な体験ができる施設が来るんじゃないかなって思います。

タナカ:フィンランドなどの本場のサウナって、日本と違っていろんな植物を使うんです。特にヴィヒタはめちゃくちゃ気持ちいいですよね。清水さんのおっしゃったサービスは、数年前に日本にもやってきた、ウィスキングというものの一種だと思います。
本場ではいろんな植物を使って、施術者がマッサージをするんですけど、これが来年から日本でも資格制度になるんですよ。私も『はじめてのウィスキング』(リトル・モア)という本を書きました。
今はまだみなさん自分でサウナ室に何分いようか、水風呂は何分いようかと試しながらやっていると思うのですが、ウィスキングの場合は全部パッケージになってるんです。
まず専門家に相談するところから始まって、専門家に施術してもらう、と。これが、今よりもっと普及すると思いますね。

KEYWORD #5 気持ちいい〜!ロウリュ&ヴィヒタとは?

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©『マンガ サ旅』

「ロウリュ」とは、熱したサウナストーンにアロマオイルなどを加えた水をかけて蒸気を発生させること。湿度が高くなり肌のピリピリ感などが軽減される。「ヴィヒタ」は白樺などの若い枝葉を束ねたもので、冷たい水を含ませ体にかけるのに使われる。さらに、ヴィヒタやハーブを使いマッサージなどをするサービスを「ウィスキング」という。

Hanako:ほかにも注目のトレンドはありますか?

タナカ:これまではコロナもあってなかなか難しかった分野ですが、サウナツーリズムというのが、恐らく爆発的な広がりを見せると思います。
いわゆる「サ旅」(#6)です。国内外問わず、サウナにフォーカスを当てた旅行というのが頻繁に行われるようになると思います。「サ旅」のすごいところは、旅行して、サウナで癒されるじゃないですか。そうすると疲れも取れるので、延々旅行し続けちゃうんですよね。連泊ばっかりしちゃう(笑)。

一同:(笑)

タナカ:今、日本国中にいろんなサウナができていて、昔からある老舗のサウナもリニューアルして新しくなっていますから、楽しいと思いますよ。
なにせもう、田舎の方に行けば、広いし、人も少ないし、景色もいいし。サウナの後のごはんもおいしいじゃないですか。旅とサウナってセットにするべきなんですよ。旅に出かけたら、サウナに行きづらいとかもないでしょ?

清水:ない。ないですね。

タナカ:サウナだけに行こうとしたらちょっと敷居が高く感じられるかもしれませんが、旅にしちゃうと、温泉と一緒で行かないと損じゃないですか。それに、いいサウナのあるホテルを選んでるだけで楽しいと思いますね。

加藤:ホテルのサウナは綺麗だし、宿泊者しかいないから基本的に空いてますよね。
タナカさんがおっしゃる通り、サウナだけのためにわざわざ地方へ行くというのはハードルが高いですが、旅とセットなら初心者の方でも行きやすいと思います。
僕ね、サウナはRPGゲームで言うような「最初の村」だと思ってるんですよ。例えばどこか地方に出張などで行って、良さそうなサウナを見つけて、サウナ施設の人に「この地域で、どこかいいところありますか?」という感じで話しかけてみるんです。
そうやっていろいろ情報収集をして、さらなる冒険の旅に出る。サウナをその地方を知るための入り口にすると、より楽しめると思います。

KEYWORD #6 これから流行る!? 「サ旅」のススメ

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©『マンガ サ旅』

サウナの楽しみ方として主流なのが、サウナ室で温まり、水風呂で体を冷やし、外気浴などで休憩をとるという入り方。この休憩の間に「ととのう」人が多い模様。この流れを1セットとし、3セットほど行うと効果的。とはいえ、一番大切なのは自分自身が心地いいかどうか。その日の体調と相談し、無理は禁物。水分補給はこまめにしよう。

清水みさと 俳優・タレント
しみず・みさと/サウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持ち「サウナ大好き女優」としても知られる。初の著書『サウナのぷりンセス』(虎鶫)が11月1日発売予定。

タナカカツキ マンガ家
サウナブームの先駆け『サ道』シリーズの著者。〈日本サウナ・スパ協会〉より「サウナ大使」に任命される。12月開業予定のサウナ施設〈渋谷SAUNAS〉のプロデュースも行う。

加藤容崇 医師・医学博士
かとう・やすたか/サウナを科学し発信していく団体〈日本サウナ学会〉を立ち上げ、代表理事を務める。著書に『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)。

illustration : Katsuki Tanaka text : Yoko Abe

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