トップサウナーたちにサウナの基本をお聞きします! サウナって結局、何がいいんですか?【前編】 LEARN 2023.01.31

ムシムシして熱いのに健康にいいの?ととのうってどういう状態?大ブームのサウナだけれど、よくわからないことだらけ。

そこで3人のプロサウナーの方たちに、ご自身の体験をもとにサウナのメリットや入り方を語っていただきました。

サウナって本当に健康にいいんですか?

Hanako:現在サウナブームといわれていますが、日本ではまだ男性が入るもの、というイメージ(#1)があるように思います。まず、改めてサウナのメリットはどんなところでしょう?

清水みさと(以下、清水):単純に冷え症や、日々の不調が改善したかなという実感はありますね。私はあまり美容目的でサウナに入ってはいないのですが、それでも肌が強くなったな、とか、体温が上がったような感じがするというのはすごくあって。
それに、朝入るときのサウナ、昼入るときのサウナ、夜入るときのサウナって、自分の中で効果が違うような気がするんですよね。例えば、私は朝に入るのが好きなのですが、眠たい状態のままで行くと、サウナで体がぱーっと起きる感じがするんです。
昼や仕事の合間に行くと、地続きだった時間がそこでパチッと切り替わって「はい、次!」と気持ちを切り替えられる感じがして。でも、夜はちゃんと体をスイッチオフしてリラックスモードに導いてくれる。医学的に、やっぱりそういうものなんでしょうか?

加藤容崇(以下、加藤):そうですね。その体感は正しいと思います。実は僕、最近自律神経をリアルタイムで解析するデバイスを開発していて、自分でいろんなシチュエーションでサウナに入るという人体実験を繰り返しているんですけど(笑)、それでわかったのは、朝サウナ、いわゆる朝ウナと夜サウナでは体に起こる変化が全然違っていて、朝は基本ととのわないっていうことなんです。
なぜかというと、朝はそもそも体が目覚めるために交感神経を優位にしているので、リラックス状態にならないんですね。なので、がっつりサウナに入っても、ととのうわけがない。
逆に体に軽く刺激を加えることで、体を目覚めさせる。一方、夜は疲れているし、すでに体がリラックスに向かっているので、サウナに入るとすごくリラックスできてととのう(#2)んです。

Hanako:医学的な観点から、ほかにもサウナのメリットはありますか?

加藤:病気のリスクを低減する効果が報告されています。ただ、あらゆる病気に効くというわけではなく、例えば僕の専門のがんにはあまり影響がないという報告があります。効果が報告されている症状としては、大きく分けて3つあり、メインは高血圧や心筋梗塞です。
心筋梗塞のリスクが50%程度減るということが報告されています。あとは認知症。これも66%リスクが低減される。それから精神科疾患ですね。こちらも78%程度、罹患するリスクが減るということが報告されています。
これらは、フィンランドの50年にわたる医学的な研究、大規模追跡調査の結果なので、エビデンスとしては高い部類ではないかと思いますよ。

KEYWORD #1 世界的に見ると、サウナは老若男女に愛されている

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©『マンガ サ旅』

世界的に見ると、女性のサウナ利用者は非常に多いそう。日本のドライサウナと違い、フィンランド式のサウナはスチームを発生させる「ロウリュ」のおかげで湿度が高く、美容や健康維持の一環として利用されている。左はリトアニアのサウナ祭の様子。ドライサウナが苦手な人は、フィンランド式サウナからトライしてみては?

KEYWORD #2 ととのうための基本の流れ「サウナ室→水風呂→休憩」

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©『マンガ サ旅』

サウナの楽しみ方として主流なのが、サウナ室で温まり、水風呂で体を冷やし、外気浴などで休憩をとるという入り方。この休憩の間に「ととのう」人が多い模様。この流れを1セットとし、3セットほど行うと効果的。とはいえ、一番大切なのは自分自身が心地いいかどうか。その日の体調と相談し、無理は禁物。水分補給はこまめにしよう。

“ととのう”ために大切なのは何よりもメンタル!

Hanako:みなさん、普段はどれくらいのペースでサウナに入っていらっしゃいますか?

全員:毎日。

Hanako:みなさん毎日ですか!?

加藤:特別なものじゃなくて生活の一部になっているから、お風呂に入る感覚と一緒です。僕はお風呂とサウナを組み合わせて入ることもあるし、サウナに入って家に着いたときに汗をかいていたら再び軽くお風呂に入る、というようなときもありますね。

清水:私は基本的に家のお風呂は使わないです。通っているジムにサウナがあるので、もうそこでパッと体洗ってサウナ入って帰る感じ。

タナカカツキ(以下、タナカ):じゃあお風呂なしの部屋でもいいね(笑)。

清水:大丈夫ですね。ちょっと物置になってるもん。捨てる予定の大きいテレビとか置いてます(笑)。

加藤:サウナーあるあるだよね。

タナカ:私の場合は仕事が終わったらサウナに行くって感じですね。それから夜にジムで軽く運動することがあるので、まあお風呂というよりは、シャワーを浴びて寝るみたいな感覚でサウナに入っているかな。基本的に湯船に浸かったり、ゆっくりするのは家じゃなくてサウナ施設ですね。

Hanako:“ととのう”という言葉がよく出てきますが、そもそもととのうの正解ってどんな状態なんでしょうか?

清水:私は「あ、今ととのった」とか「ととのわない!」というようなことを感じたことがなくて、あまり気にせず入っていることの方が多いですね。なので、あくまで感覚的なものなのですが、サウナで熱ーくなって汗を出して、水風呂でヒヤーッて体を冷やして、上がったときに、なんかちょうどよくなる感じなのかなって。体が「自分今めっちゃちょうどいいわ〜!」って一番気持ちいい状態になることが、私にとってととのっている状態ですかね。

タナカ:私、この間めちゃくちゃととのわなかったんですよ。
清水:なんでですか?

タナカ:サウナ室の正面に大きなテレビがあるところで、それが結構大音量なんですね。そこでぎっしり人もいて、みなさん汗かいて身動きがとれないから、正面にしか向けないんですよ。だから全員が完全にテレビ対自分なんですよね。

清水:それはととのうのが難しい環境ですね……。

タナカ:ととのうっていうのは、私も清水さんが言ったように「気持ちいい! ちょうどいい!」って感覚だと思うのですが、そのためにはメンタルが重要だと思いましたね。

加藤:おっしゃる通り、ととのうのにメンタルはめちゃくちゃ関与してるんですよね。僕は感覚でものを言うのはあまり得意ではないので、またもや自分でテレビあるなしの人体実験をしたことがあってですね(笑)。

一同:(笑)

加藤:具体的に言うと、テレビがある施設でまずテレビを消してもらってデータを解析し、次の日はテレビをつけてもらってデータを解析するということをやったんです。すると、テレビのあるなしで自律神経の交感神経、副交感神経のパラメーターが変わってきちゃうんですね。ととのうためのサウナ室内での理想的な状態というのが、前半に副交感神経が優位になって、後半だんだんしんどくなっていくに従って、ゆるやかに交感神経が優位になるという流れなんです。そこにテレビが入ると、その流れがぐちゃぐちゃになってしまう。

Hanako:ということは、テレビはできればない方がいいのでしょうか?
加藤:いや、あってもいいとは思うのですが、静かにリラックスしたいという人にはちょっと邪魔かもしれないですね。でも、じっとしているのが落ち着かなくて気を紛らわしたいという人がいれば、別にサウナの中にテレビがあっても悪くはないです。人それぞれ合うところを選ぶということが大切だと思います。

プロサウナーたちのサウナMYルール。

Hanako:加藤先生は、好みのサウナの入り方やMYルールはありますか?

加藤:めちゃくちゃあってですね。水風呂がぬるかったり、自分の好みに合わない場合、それをデータ化して、ちゃんとととのえるように入り方をカスタマイズしています(笑)。例えば、水風呂がぬるい場合には休憩時間をどのくらい延ばしたらいいのかっていうのをデータ化しているんです。みなさんの参考になることで言えば、水風呂がぬるかったら、炭酸を飲んで休憩時間を延ばします。炭酸を飲んだときと水風呂に入ったときは体が同じような反応をするんですね。なので水風呂に入る直前に飲むと、水風呂の冷たい感覚が増幅するんですよ。それでも真夏などで水風呂がぬるく、炭酸水を飲んでもあまり爽快感がないときには、少し長めに休憩します。体をクールダウンさせるために。

清水:私は逆に、同じ入り方をあまりしてないですね。例えば時間が30分しかないというときは、ちょっとスポーツみたいな入り方をしていて、サウナ5分、水風呂休憩1分、すぐまたサウナ、みたいなセットを3回くらいバババババってやって、最後にドーンって休んでレッツゴー!みたいな(笑)。自分の中で、今日はめちゃくちゃ汗出していこうっていうときはすごくストロングな入り方にするし、あーもう休もうってときはすごくゆったり時間を使います。時間配分を変えて、その日の自分の体に合う入り方を見つける作業をしています。

加藤:でも、ダーンって入ると結構ととのいません?

清水:そう、ととのうんですよ。意外とね、ババババーンってやるとね。爽快だなーって思ったりしますね。慣れてくれば、割と自分でルールって決められる気がしますね。

加藤:それで言うと、女性からよく相談を受けるのは「水風呂(#3)が無理」ということなんです。その場合、騙されたつもりで水風呂をスキップしてみてください。水風呂なし。

Hanako:水風呂なしでもととのうんですか?

加藤:はい。水風呂無理っていう人は無理して入る必要は全くなくて、その場合は水シャワーで体の下の方から上の方へ順番に全身を冷やして、休憩を長めに10分程度とってください。女性にとっては無理が一番良くないんです。交感神経って卵巣に直結していて、負荷をかけすぎると生理不順になったり、美容にもかえって良くなかったりするんですね。なので、まずはこうしなきゃいけないという先入観は捨てて、自分が気持ちいいように入ってほしいですね。

KEYWORD #3 どうして水風呂に入らないといけないの?

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©『マンガ サ旅』

サウナ初心者にとってハードルが高い水風呂。どうして必要なのか、加藤先生に聞いてみた。「ごく簡単に言えば、サウナは人体にとって“非日常的な危機的状況”を作り出すことが大切。サウナ室で極限まで熱せられた体が、水風呂に入ることで驚き、環境に適応しようと活発になるんです。水風呂は“危機的状況”を作り出しやすいのです」

清水みさと 俳優・タレント
しみず・みさと/サウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持ち「サウナ大好き女優」としても知られる。初の著書『サウナのぷりンセス』(虎鶫)が11月1日発売予定。

タナカカツキ マンガ家
サウナブームの先駆け『サ道』シリーズの著者。〈日本サウナ・スパ協会〉より「サウナ大使」に任命される。12月開業予定のサウナ施設〈渋谷SAUNAS〉のプロデュースも行う。

加藤容崇 医師・医学博士
かとう・やすたか/サウナを科学し発信していく団体〈日本サウナ学会〉を立ち上げ、代表理事を務める。著書に『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)。

illustration : Katsuki Tanaka text : Yoko Abe

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