伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第29回 LEARN 2022.10.28

乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。

(photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Chika Niiyama)

「知らないことだらけの日々」

夏の選挙特番を皮切りに、最近、テレビの情報番組への出演依頼をいただくようになった。やってみないと向き不向きも分からないからという先輩たちからのアドバイスのもと、出演させていただいている。情報番組に限らず、週に6本やっているラジオもまた、毎日違う人たちと違う内容を話し合う仕事だ。チームプレーでもあるので、基本的には我が我がと出しゃばりたくはないし、これからもなるべく人の話に耳を傾けられる人でありたい。ただ、自分の意見を求められ、それに応えること、発言することが、仕事上での私の役割でもある。だからいつも直前まで悩むのだ。弱音を吐こうと思えばいくらでも吐ける。自分が善悪をしっかり判断できるような大層な人間だとは微塵(みじん)も思っていないし、生放送の短い時間に、ひとつの立場に腰を据えて意見を述べるのは難しい。自分の言葉が無意識のうちに誰かを傷つけてしまうかもしれない、そのリスクを負ってまで言わなきゃいけないものなどない。

素朴な疑問をぶつけていいと言われてはいるものの、事の成り行きをまったく知らずに話すのは気が引けるので、自分なりに準備してから向かう。もちろんどんなに準備をしても知らないことはたくさんあって、持てる限りの知識と記憶を頼りにやっていても全く足りていない感じが時々苦しい。海外アーティストの名前や名作映画のタイトルが急に会話の流れで飛び出した時、正直にきょとんとしてしまう。背伸びするのはもっと良くないけれど、世代じゃないから知らなくても仕方ない、では済まされないことも往々にしてある。結局やっているのは自分だから、これまでの経験とか記憶とか感情とかからしか言葉は出せないし、それをどれだけ豊かにしていけるかを問われる仕事でもあるのかもしれない。でも、自分はどちらかというと好奇心旺盛な人間だと思っていたのに、最近は仕事以外の時間で何に興味を持ったら良いのか分からない。正直、ひとにもモノにもなかなか興味を持てなくなっている。変に緊張感が強いのだと思うし、なんとなく、この心の鈍さは危ないな、とも思う。

自分が何をしたら楽しいのか、何をしたらしんどいのか、何をされたらうれしいのか、何をされたら悲しいのか、何を食べたらおいしいと思うのか。自分の好きなことをしたり、好きな人たちと会ったり、普通の自分の生活を大事にできていないと、きっと良い仕事はできない。細部に手が回らないことがあったとしても、土壇場でなんとかなっちゃうような、奇跡の力、みたいなものを発揮できるようにしたい。普通の自分の生活を脅かさないように、全力を出していくところと手を抜いていけるところを分けて、頑張りすぎずに生きたい。

山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」
オーバーオール 24,200円、ボーダーTシャツ 7,700円、チャイナシャツ 20,900円(全てジョンブル|ジョンブル カスタマーセンター■086-470-5770)/サンダル 17,050円( ダイアナ|ダイアナ 銀座本店■03-3479-8010)

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