まるでタイムスリップした気分に。 群馬・四万温泉を満喫するなら、築300年の老舗温泉旅館〈積善館〉がおすすめ!

LEARN 2018.12.29

体の不調や病を癒す「湯治」が、本来温泉の意義。そんな歴史を物語る築300年の本館建築をはじめ、クラシックな佇まいが美しい浴場で過ごす週末旅はいかが?群馬・四万温泉の人気温泉旅館〈積善館(せきぜんかん)〉をご紹介します。

湯治文化を今に伝える各時代の建築意匠に浸る宿。

昭和11年に建てられた山荘の客室。欄間や障子の組子模様など桃山様式の粋を凝らした造り。
昭和11年に建てられた山荘の客室。欄間や障子の組子模様など桃山様式の粋を凝らした造り。

元禄4(1691)年、新湯川の川底に湧く源泉を引き、湯場を造った先代から300年余り。変わらず豊富な湯量で旅人を魅了し続ける〈積善館〉。創業時に建設された本館は、現存する日本最古の湯宿建築として今も大切に使われている。

本館玄関の上がり框周り。 3世紀の時を経ても現役の太い木の梁や階段。 のちに加わった古いランプもよく溶け合う。
本館玄関の上がり框周り。 3世紀の時を経ても現役の太い木の梁や階段。 のちに加わった古いランプもよく溶け合う。
川辺に近い本館と、山肌に建てられた山荘を繋ぐアーチ型の通路。昭和初期に造られた トンネルには幻想的な雰囲気が漂う。
川辺に近い本館と、山肌に建てられた山荘を繋ぐアーチ型の通路。昭和初期に造られた トンネルには幻想的な雰囲気が漂う。

「山や谷を歩いて越えてやって来た人々の目的は、湯に浸り体を癒す湯治です。長きにわたり、それが温泉の本来の意義でした」と19代目当主の黒澤大二郎さん。当時は襖で仕切る小部屋が連なる建物を外廊下が囲み、そこで客たちが煮炊きし、食事を作っていたという。

人々を癒し続ける湯宿建築と湯治の湯。

宿の前の新湯川の川底から湧く源泉をたたえる「元禄の湯」。大正ロマネスクの和洋の美を感じさせる大浴場。
宿の前の新湯川の川底から湧く源泉をたたえる「元禄の湯」。大正ロマネスクの和洋の美を感じさせる大浴場。

現存する湯宿建築は、長逗留した江戸期の温泉滞在の様子を伝え興味深い。のちに、山側にかけて山荘、佳松亭と建て増した宿には各時代の個性豊かな意匠が宿り、300年の湯宿の歴史を肌で感じさせる。中でも昭和初期に建てられた浴場「元禄の湯」の優美さは息を飲む。川のせせらぎを耳に、アーチ型の窓から注ぐ朝日とかけ流しの源泉に身を委ねる悦楽は、今も昔も変わらない。

「元禄の湯」の階段部分に施された古いタイル。館内の浴場で目にするタイル細工は必見だ。
「元禄の湯」の階段部分に施された古いタイル。館内の浴場で目にするタイル細工は必見だ。
斜面高台の清々しい木立に囲まれた館内の露天風呂「杜の湯」。飲んで胃腸を、浸って肌を整えるという効能も昔日より変わらない。
斜面高台の清々しい木立に囲まれた館内の露天風呂「杜の湯」。飲んで胃腸を、浸って肌を整えるという効能も昔日より変わらない。

名だたる歌人、文化人に愛された大正モダンな客室。

昭和11年に建てられた山荘の客室。欄間や障子の組子模様など桃山様式の粋を凝らした造り。
昭和11年に建てられた山荘の客室。欄間や障子の組子模様など桃山様式の粋を凝らした造り。

昭和初期の職人が粋を尽くした山荘の客室は、当時の建築細部を残しながら一部屋ずつ改装中。名だたる歌人、文化人に愛された大正モダンな雰囲気を残す設えが心地よい。湯宿の変遷に思いを馳せて寛ぎたい。

昔日の湯宿の客室を今に伝える本館の旧客室。現在は日替わり昼食がいただける予約制の食事処に。
昔日の湯宿の客室を今に伝える本館の旧客室。現在は日替わり昼食がいただける予約制の食事処に。
喫茶「積善や」の甘味「やきもちアイス」。熱さと冷たさを同時に味わうオリジナル。
喫茶「積善や」の甘味「やきもちアイス」。熱さと冷たさを同時に味わうオリジナル。

〈積善館(せきぜんかん)〉

湯治目的なら湯治棟本館のシンプルな料理と客室、会席料理など温泉旅館ならではの贅沢を楽しむなら旅館棟の山荘や佳松亭がおすすめ。
■0279-64-2101
■群馬県吾妻郡中之条町四万温泉
■全52室
■本館 8,100円~、山荘 41,040円~(共に1泊2食付き、入湯税別)
www.sekizenkan.co.jp

(Hanako TRIP『思い立ったらすぐ行ける!自分のための心休まる宿へ。』掲載/photo:Tomo Ishiwatari text:Chiyo Sagae)

Videos

Pick Up