食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE48 藤井志織
ふじい・しおり/1979年生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。食やインテリア、ライフスタイルに関する記事、書籍を手掛ける。『ウー・ウェンの100gで作る北京小麦粉料理』(髙橋書店)など編著は多数。@fujiishiori1979
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年月をいつくしむ、昭和に建てられた木造の家。

注文住宅として建てられた、築四十余年の一軒家。広々とした間取り、窓や収納、ベランダなど贅沢なディテールは、古さゆえの“多少の不便”を凌駕する。古いもの好きが愛し、整える部屋と暮らし。
振り返ってみれば社会人になって初めて一人暮らしをしたときから、古い家ばかり選んで住んでいたという。「最初は、勤め先に近かったという理由で選んだ飯田橋駅からすぐの、一階にたばこ屋さんがある木造アパート。その後、自分的に〝飛躍して〞都立大学駅界隈に越したときも、借りた部屋は一軒家の2階で、下に大家さんのおじいちゃん、おばあちゃんが住むアパートでした」古い家好きは「神奈川県の新興住宅地で生まれ育った反動かな」と、藤井志織さんは話す。現在、家族4人で暮らすのは、杉並区西荻窪駅が最寄りの築40年を超える一軒家だ。
間取りの贅沢さを生かし古い戸建ての魅力を楽しむ。

広い玄関が入って、左手に6畳の和室。その先にある、元々食堂として作られた洋間は中庭のようなテラスに面していて、さらに先に独立型のキッチンと、約17畳の居間が並ぶ。二階は寝室、書斎、和室の三間で、納戸や広いベランダも贅沢。和室には押し入れが、洋間には造り付けの収納がある。
「以前の所有者が昭和58(1983)年に建てた家で、しっかりとした造りが気に入っていて。部分的に手をいれたいところはあるけれど、今のところそのまま暮らしています」
現在は、広い居間がダイニングを兼ねている。ダイニングテーブルや座卓は親族から譲り受けたものだというが、そこに好きなデザイナーズチェアやソファをうまく組み合わせていて、昭和の雑誌で特集された「憧れの洋風の暮らし」のようだ。幅広いジャンルの書籍で埋め尽くされた書架も、よき景色に。
「本棚は、都立大学住まい時代に〈東急ハンズ〉で板を買って組み立てたもの。車もなく、電車で持ち帰れる一番軽いものを選んで1万円くらい?ところが引っ越す先々でちょうどいい場所にフィットしてしまって、思わぬ長い付き合いに」と笑う。値段の付けられない古い家具を基調に、奮発したデザイナーズ、インダストリアルとDIYが有機的に一体化した風景に、藤井さんという人が浮かびあがる。
「古い」の価値を見直す暮らしの知恵を今に。
西荻窪は、これまで暮らした町の中で一番好きだと言う。
「昔から続く商店街があって、昭和の時代に建てられた一軒家が多く、どこも素敵なお庭があって。著名な翻訳家の方が建てたという洋館のようなお宅が残っていたりもして、散歩をするのが楽しい」
藤井さんは「小さな頃からおばあちゃん子だった」とも。
「高度成長期を生きたザ・団塊世代の両親より、おばあちゃんと過ごした時間が今の自分の土台にあるように思います」
箪笥ごと譲り受けた着物は決してその“肥やし”にせず、日常的に袖を通す。茶の紬など、地味なものほど、今着てしっくりくるのだそうだ。子供の頃の手芸も、おばあちゃんから習った手芸だった。大学時代、インテリア本の編集のアルバイトから入った出版業界だが、卒業後に専業編集者として働きはじめ、手芸誌の編集部に配属される。約5年の勤務の後、27歳で長男、2年後に次男を出産した。
「キャリア的には一番大事な30歳前後を、出産と子育てに充てることになり。どっちも中途半端になってしまった気が」と話すが、子育てに追われた時代さえも、選び揃えた家具や器が身の回りにあり、日々を彩ってきたのだろう。古いもの好きの軸を、ぶれさせることなしに。
「ものの持ちがいいんですよ」と、話しながら教えてくれた長年来の愛用品の数々が、そんな年月を物語る。食べること、暮らすこと、装うこと。自分のこと、家族のこと。仕事のためだけでなしに考え続けた日々が、巡り巡って今の仕事に表れている。

【TODAY’S SPECIAL】香りのアクセントで酒に合う一品に。

晩酌は日本酒党。つまみは、みょうがと実山椒をたっぷり合わせたトマトの和え物など、シンプルな野菜料理が中心。藤塚光男(皿)、西川聡(片口)など好きな作家の器で。「息子が2人なので、子供がいるときはボリュームのある肉料理なども作りますし、自分だけの日は、ビールを飲みながらポテチを食べるのも大好き」
【MY ESSENTIALS】譲り受けた“財産”も生かし、和の文化を大切に。
和服を、日々の装いに。

祖母、母から箪笥ごと受け継いだ着物に、義祖母からのものも加わり、かなりの衣装持ち。自分で着られるので、和装を日常的に楽しんでいる。
8年来愛用するお香。

京都に行くたびに求めると話す江戸時代からの老舗〈林龍昇堂〉製のお香。お気に入りは白檀が香る「長春香」。玄関に、居間でくつろぐときに。
人とのつながりで増える器。

器好きで、器をテーマにした料理連載をはじめ、器関連の仕事も多い。夫の実家“仕舞い”の際に譲り受けたものも。元食堂の造り付け食器棚に。


















