食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。CASE49 藤川真至
ふじかわ・しんじ/1981年、岐阜県生まれ。大学時代に旅したイタリアでチーズに魅せられ、飲食店勤務を経て2012年渋谷区神山町に〈SHIBUYA CHEESE STAND〉開業。現在は東京、福岡で4店舗を展開。@cheese_stand
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成長する家族とともに育てていくオープンな家。

重厚感のある造りと、高層階ならではの開放感が決め手に。築五十余年のヴィンテージマンションを、自分たちのカラーにリノベーション。家族の形、子供の成長に合わせてバージョンアップし続けている。
国産のチーズがあるのは知っているけれど、作られているのは自然豊かな、牧場の近く……?それが世の中のチーズに対する認識だった2012年、藤川真至さんが東京・渋谷の一角に開いたチーズ工房兼ショップは、大きなインパクトがあった。自らが職人として毎日工房に立ち、「街にできたてのチーズを」という新しい価値観をスタンダードに。二号店ができ、取引先やスタッフも増え、それまで暮らしていた渋谷の店の近所の住まいから「少しゆっくり、心地よい場所へ」と、転居を決めたという。約4年前のことだ。
キッチンをオープンに。修繕は〝心地よさ〞が基準。

「内見に来たとき、広いエントランスやそこから続く階段の意匠を見た瞬間に気に入ってしまい。部屋は高層階で、窓からの景色に抜けがあって。ここだ、と決心しました」
写真家が暮らしていたという部屋は、内装も悪くなかったけれど、自分たちの暮らしやすさを考えリノベーションした。
第一の課題は、独立型のキッチンをオープンにすること。設備的に申し分なく状態もよかったシステムキッチンはそのまま生かし、扉を外してダイニングとの境にカウンターを設えた。
外装は柔らかなラタン材、天板は調理台としても活用しやすい大理石。アール型のデザインも相まって、このカウンターがインテリアのアイコンになっている。絨毯だった床はフローリングに張り替え、天井は抜いてコンクリートの構造を生かした。合わせて壁は、ダイニングを木張りに、リビングは大谷石に。洗面所やバスルームも、デザインと心地よさを基準に手を入れた。暮らし始めて気づいたこともある。古いマンションは冷房効率が抜群とはいえず、ひと冬越して、サッシを二重にした。
リノベーションは渋谷区幡ヶ谷の〈ALP Inc.〉に、キッチンのウンターを筆頭に造り付けの家具の製造は松濤〈HAY hutte〉に依頼した。いずれも〈チーズスタンド〉のご近所仲間。界隈の飲食店の同世代オーナーも含め〝ご近所付き合い〞する、気心が知れていて信頼の置けるプロフェッショナルだ。
家族の変化に合わせて住まいの形も育てていく。
元々、古いものが好きで、50年超えの築年数は気にならなかったという。「それまで集めてきたヴィンテージの家具や日本の古い道具も、ここだからしっくり来るものも多く。室内の建材も、年月を経て表情が出るこが選択の基準に」と話す。
暮らし始めて気づいたこともあれば、変わったこともある。かねてよりのパートナー、望さんと結婚し、子供にも恵まれて、一気に親子五人、プラス愛犬一匹の大家族に。「寝室は、ダブルベッド二台でぎゅうぎゅうになり、五人で枕を並べて合宿所のよう」と、笑うが幸せそうだ。
子供の安全性を考え、なるべくフラットな空間になるよう模様替えをしたり、家具を買い足したり。ベビーチェアは〈ファルスカ〉の「スクロールチェア」に。「子供っぽさのない北欧調デザインで、調整をしながら新生児から大人まで使えるロングライフの発想も気に入って」と、話すのは望さん。いいものを選びたいけれど使う時期は一瞬というベビー用品のストレスから解放してくれるプロダクトだ。
「学習机が必要な年になったらどこに置こうか、さらに大きくなって、部屋が欲しいと言い出したら?」と、近い未来を想像しつつ、パパ・藤川さんの思案は尽きない。が、きっといい方法を手繰り寄せるはず。暮らして4年の家を変化させてきたように、ひいては14年前、誰も思いつかなかった店をつくったうに。夫妻の趣味やセンスが細部まで行き届いた〝キメキメ〞の空間もまた、年月を経て、温かに形を変えていくのだろう。

【TODAY’S SPECIAL】チーズをもっと、日々の食卓に!

定期的な品質チェックや新商品の試食など、自宅でもチーズが食卓に。写真は、ブッラータチーズのサラダ、カラフルなトマトとハーブ、オリーブオイルで。料理は夫婦どちらも好きで、イタリアンのときは藤川さんが、和食などそれ以外は妻の望さんが担当するよう、ゆるやかに分担ができているのだとか。
【MY ESSENTIALS】チーズ、イタリア、家族。大切なものを可視化。
増え続ける牛のオブジェ。

旅先などで出会ったものを買ううちに、“群れ”になった藤川家の牛たち。民芸玩具から五十嵐豊が手掛けた鉄製オブジェなど作家の作品も。
イタリア愛の詰まった書架。

膨大な蔵書の多くはイタリアと、料理やチーズ製造に関するもの。装丁やビジュアルが好きなものを面出しにして、インテリアに。
壁を埋める家族の絵、写真。

長女が5歳のときに描いた絵には、両親と自分と、小さな妹二人が描かれている。ダイニングの壁は一面に、家族の写真や絵がずらりと。


















