日常の中で考える「憲法改正」。
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まつだ・あおこ/『おばちゃんたちのいるところ』がTIME誌の2020年の小説ベスト10に選出され、世界幻想文学大賞や日伊ことばの架け橋賞などを受賞。その他の著書に、小説『持続可能な魂の利用』『女が死ぬ』『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』(いずれも中央公論新社)、エッセイ『お砂糖ひとさじで』(PHP研究所)『自分で名付ける』(集英社文庫)など。
少し前、用事があった街で時間があったので散歩をしていた。
公園の入り口を見つけたので中に入ってみると、林の中を歩いていく大きな自然公園であったことがわかり、紫陽花が群生しているコーナー、水生植物のコーナー、古墳のコーナーなどを堪能しながら見て回った。高台にあるので眺めもよく、大きな川が見下ろせた。
だいたい一周したあたりで、広場に出た。なんとなくその広場も歩いていると、片方の腕に赤ん坊を抱き、スッと立つ女性の銅像を見つけた。
銅像には「平和都市宣言」と刻まれていて、近くには、平和へのメッセージとともに「平和憲法を擁護し核兵器のない平和都市であることを宣言する」と書かれた銅板もあった。
私はそれを見て、あ、そうだよな、平和都市宣言があるんだよな、とハッとして、帰ってから改めて「平和都市宣言」について調べてみた。
平和都市宣言は、広島、長崎のような被曝都市や、一般市民を巻き込んだ戦地となった沖縄だけではなく、平和行政を重視する各自治体が「平和都市」であることを表明し、恒久的な平和を誓う公式の宣言文で、昭和後期に全国的に広まったそうだ。この宣言があることで、平和の大切さを忘れずにいることができるし、どんな生活やコミュニティを築きたいか、といった町づくりの礎にもなる。
もちろん「平和都市宣言」を出していない自治体もあるけれど、出している自治体も想像以上に多いので、もし気になったら、自分の住んでいる町が「平和都市宣言」を出しているか、調べてみてほしい。ちなみに、私が今住んでいる区は出している。

それで思い出したのだが、去年の八月、町内報にふと目を通したら、町内に住んでいる女性の戦時下に体験した出来事を聞き書きとして載せていたことだ。町内新聞は普段は町内の情報や報告などに占められているので、この聞き書きは、内容とともに深く私の心に残った。八月だから戦争にまつわる記事を載せるべきだと考え、当時を知っている女性に取材をして、町内報に載せた方がいるという事実に感銘を受けた。
町内報の人が「平和都市宣言」を意識していたかどうかは別として、これも「平和都市宣言」を実践していることになるし、こういった個人の意識が町を守っているのだとも言える。
近所の図書館では今、町内の戦後の暮らしの写真や資料を、自習室の横に展示している。地味で目立たないかもしれないけれど、この町はこういった取り組みを、当たり前のこととして、積み重ねてきたのだろう。
数十年前、「平和都市宣言」を出さなくてはならないと考えたたくさんの人たちの思いの上に築かれた町に、普段意識していなかったとしても、私たちは住んでいる。けれど、後の世代になればなるほど、そのことに鈍感になる。これはあらゆることに言えることだ。
自分たちが経験し、目にしたことを、後の世代が二度と経験しないでいいように築かれ、持続されてきたものを、時代が変わったからといって簡単に崩してもいいものなのか、私たちはしっかりと、地道に、考える必要がある。
だから、憲法改正についても、第一政党の政治家がそう望んでいるからではなく、ニュースやSNSなどで改正しても大丈夫だと知らない誰かや有名人が言っているからでもなく、自分自身にとって必要なのかどうかを考えなければいけない。自分の日常の中で感じなくてはいけない。そうしないと、こんなはずじゃなかった、こんなことになると思わなかった、と後悔する事態にもなり得る。
そのためには、歴史や過去に起こったことを知っていたほうが判断しやすい。

私は2017年の冬に、『1945年のクリスマス』という、若干二十二歳で日本国憲法の草案に携わり、第14条「法の下の平等」、第24条「両性の平等」の条文を作成したベアテ・シロタ・ゴードンの自伝を読んで驚き、その流れで『日本国憲法』を読んだ。文庫で読んだのだが、思っていた以上に短いし、面白かった。わかりやすく解釈されているいろんなバージョンも刊行されているし、『日本国憲法』、ぜひ一度読んでみてほしい。
また、『1945年のクリスマス』には、ベアテ・シロタ・ゴードンが書いた草案で採用されなかった部分が載っているのだが、女性や子どもの権利を細かく書き込もうとしていて、熱い。彼女は子ども時代に十年間日本で育ち、当時の日本人女性の苦境を知っていたため、「女性が幸せにならなければ、日本は平和にならないと思った。男女平等はその大前提だった」との思いのもと、草案作成に臨んだ人だ。
ここ数年、私が読んで、おすすめしたい戦争にまつわる本は、ノンフィクション 『新版 いくさ世を生きて 沖縄戦の女たち』(真尾悦子/ちくま文庫)である。あまりにもつらく、壮絶な内容だけれど、読まなければならない本だったと心から思う。この本を読むと、きっと大丈夫と楽観視する気にはなれない。
また、長崎の兵器工場学徒動員で被曝し、その経験と、被爆者としてのその後の人生を書き続けた作家、林京子の作品も強くおすすめしたい。
自分なりに知識を深め、考えていきたい局面だ。
text_Aoko Matsuda illustration_Hashimotochan

















