おいしいお茶はどうやってできる?島根・柿木村で受け継がれる「釜炒り茶」を訪ねて。
おいしい茶ができるまで。

島根県の西端に位置する吉賀町(旧・柿木村)。約600年前に開墾されたという美しい棚田が広がり、豊かな湧き水を有する里山だ。この地に伝わる釡炒り茶を「SOTTO CHAKKA(ソットチャッカ)」という名で2017年から発信しているのが、写真家の七咲友梨さん。自身の故郷である柿木村で、味噌や漬物のように各家庭で当たり前に作られていた伝統茶を、「世にお裾分けしたい」と始めたプロジェクトだ。
毎年、新茶の季節には七咲さん自ら茶を摘み、製茶をする。柿木村は有機農業の先進地としても知られ、茶の木も農薬や除草剤を使わず健やかに育つ。品種はすべて希少な在来種で、樹齢100年を超える茶樹も多い。
そして日本では煎茶のように茶葉を蒸して加熱し、酸化酵素の働き(発酵)を止める作り方が中心だが、この地に伝わるのは文字通り釡で炒って発酵を止める釡炒り茶。生産量がとても少ない製法で、香ばしさとまろやかな余韻に心が和む。
茶葉を炒り、揉捻、乾燥、再度火入れをして完成……が一般的な製法だが、摘んだ茶葉を一度陰干しするのが柿木村流。中国茶で用いる萎凋という工程で、茶葉を置くことで発酵が進み、「萎凋香」と呼ばれるフラワリーな香りが現れる。日本茶では珍しいこの工程は、農作業の合間に茶作りをしていた歴史の中で偶然、いや必然的に生まれたものだとか。萎凋の長さも半日や一昼夜など家庭ごとに異なり、それが〝手前味噌〞のように家の味となるのだろう。
「SOTTO CHAKKA」のお茶からは、月光に照らされた白い花のような甘く澄んだ香りがする。それは故郷の手仕事を伝えたいという思いから受け継がれた、山の景色を映す味だ。
1. お茶を摘む

立春から数えて八十八夜(88日目)にあたる5月初旬が新茶の茶摘み時期。柿木村の茶の木は樹齢50〜100年超の在来種。黄緑色に輝く、柔らかな新芽を手作業で摘み取っていく。
2. 萎凋(いちょう)

釜炒り茶は摘んだ茶葉をすぐさま釜で熱するのが一般的だが、七咲さんはザルに広げて一昼夜陰干しに。日本茶では珍しい「萎凋」という工程を経ることで、茶葉が微発酵し、白い花のような甘い香りが生まれる。
3. 釜炒り

薪火を起こし、陰干しした茶葉を鉄釜で一気に炒っていく。加熱で茶葉の酸化酵素を止める「殺青(さっせい)」の工程で、釜炒り茶ならではの「釜香」と呼ばれる香ばしい香りが立つ。熱さは我慢!
4. 手揉み

釜から下ろした熱々の茶葉を揉み込む「揉捻」作業。茶葉の細胞を傷つけ、風味を溶け出しやすくする大切な工程。柿木村ではすべてが手作業で、竹の揉み台も七咲さんの父上のお手製だ。
5. 天日干し

手揉みした茶葉をザルに広げ、乾燥させる天日干しの作業。水分を蒸発させた「荒茶」(原料茶とも)の状態に。この荒茶をもう一度焙煎すれば完成。パサパサとしていた茶葉が2度目の火入れでパリッとした表情になる。
「SOTTO CHAKKA」と名付けられた伝統茶
写真家の七咲友梨さんが島根・柿木村の釜炒り茶を伝えるティーブランド。新茶は7月中旬から登場予定。


















