ドリアン・ロロブリジーダのゆずれないもの
〜第3回〜どんな時でも街中のエレベーターやエスカレーターの位置を把握すべし! LEARN 2023.11.11

踊り場世代のドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダさんの"ゆずれない、ゆずりたくない、でも時々ゆずっちゃってるかもしれない?!大切にしているコトやモノ”をゆるーくご紹介する連載です。

ハッシュタグは#ドリゆず。あなたのゆずれないもの、なんですか?

今月のゆずれないもの/「街中のエレベーターやエスカレーターの位置を把握すること」

Hanako WEBをお読みの皆様、ごきげんよう。ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダです。日に日に朝晩が涼しくなってくる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
夏の暑さが大嫌いなので気温が下がるのは大歓迎なのですが、冬は喉とお肌の大敵でもある“乾燥”が襲来する季節でもあり、初回の「#ドリゆず」でもご紹介した、“手洗い・うがい”を念入りにする季節でもあります。春は春で花粉に苛む季節なので、年間を通して快適な気候って本当に一瞬。そんな想いを巡らしていると、一年があっという間に過ぎていきます。Time flies....


さて、気の置けない友人(もちろんゲイです)から、初回、第二回の内容について「説教臭いわ!貴女という人間が偉そうに!」という心温まるご指摘をいただいたので、今回の「#ドリゆず」は少々ライトに参りたいと思います。



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本題に入る前に、ここで一つ問題です。皆様は「お仕事の度に絶対に使うドラァグクイーンの必需品」と聞くと、どんなものを思い浮かべますか?
ドレスやウィッグ、ハイヒールや化粧道具、様々なものを想像されるかもしれません。それらも全て正しいのですが、“毎回必ず同じものを使う”という点で申し上げると、正解は「キャリーバッグ」です。様々な場所やステージでパフォーマンスをするタイプのドラァグクイーンにとって、先に挙げたドレスやヒールなどを運ぶためのキャリーバッグは必需品。背負ったり、肩にかけたり、引きずったりと形状こそ様々なタイプがありますが、我々はいつも“巨大なカバン状の何か”を持ち歩いています。異常な高さのハイヒールや無数のメイク道具、フリンジやスパンコールが付いた男性サイズのドレスって、重いのです。とてもとても重いのです。それらを沢山詰め込んだバッグの重量は20kgを優に超え、車輪や留め具がすぐにダメになってしまいます。アタシもデビュー当時から今まで十数個のキャリーバッグを使ってきましたが、いまだに“コレだ!”というモノに巡り会えておりません。読者の皆様の中で“巨大で頑丈なキャリーバッグ”のオススメがございましたら、是非編集部までご一報くださいませ…。

いけない。前置きが長くなりすぎました。
第三回目の「#ドリゆず」は【街中のエレベーターやエスカレーターの位置を把握すること】です。重い重いバッグと共に目的地に向かうとき、一番の障害は“階段”です。2~3段ならどうにか「エイヤっ!」と持ち上げられますが、駅や歩道橋の長い階段ともなるとどうしても難しくなってしまいます。そこで使用するのがエレベーターやエスカレーターなのですが、これが本当に数が少ない。階段で行けば1~2分で行けるところも、エレベーターやエスカレーターを探して10分近く汗だくになってさまようこともしばしばあります。その度にアタシの頭をよぎるのは「車椅子の方やベビーカーの方は、日々もっと大変な思いをされているのね…」ということです。これはキャリーバックと共に満員電車に乗り込む時も同じ事を感じます。アタシの手元にある巨大な荷物を見た時の、乗客の皆様からの言葉にならない“圧”。アタシはご覧の通り厚顔無恥なので、「はいはい、ごめんなさい、ごめんなさーい」というやや大きめの声と共にドシドシと乗り込むのですが、車椅子の方や赤ちゃん連れのお母さんはそう簡単にいかないですものね…。




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バリアフリーやユニバーサルデザイン、引いては“一人でも多くの人が生きていきやすい世界”について考える際に一番大切なのは想像力だと思うのですが、やはり人は実際にその境遇になってみないと、見えない/感じられないこともたくさんあるはず。アタシは女装カバンを引きずっているだけなので、そういった状況の方々の日々のしんどさを100%は分かりません。でも、ちょっとだけ似たような事を体験することで、想像力を働かせることは出来ると思っています。なのでアタシは電車やホームや道で何か困っていそうな車椅子の方やベビーカーの方がいたら、なるべくお声がけをしています。突然うっすらオネエの大男に話しかけられて、怖がらせてしまっているケースも多々あるかもしれませんが…。苦笑
ちょっとだけ想像して、ちょっとだけ思いやって、そうやって世界がちょっとずつ優しいものになればいいなぁと願いながら、今日もアタシは巨大なキャリーバッグを転がして街を往きます。

今回も最後までお付き合いいただき本当にありがとうございます。またお目にかかれることを楽しみにしております。それでは、ごきげんよう。

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text_ Durian Lollobrigida collage_Fumiko Oda edit_Wakaba Nakazato

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