週末行きたい大自然のアドレス 山梨県北杜市で見つけた、
生きる力を取り戻すキャンプ場0site (ゼロサイト) へ。

LEARN 2023.08.31

最近、"今ここにいる"という瞬間を感じられたのは、一体いつだろう。
体の声、心の声に耳を澄ませるのにぴったりな場所、山梨の0siteを訪ねて。

今ここにいるという実感を感じられたら、それでいい。
0site(ゼロサイト)ってどんな場所?

0siteを立ち上げた古山憲正さんは過去に俳優を目指していたり、バックパックで世界を旅した、さまざまな経験の持ち主。0siteは2021年の1月に移住先の山梨でオープンした。普段は1日1組限定のプライベートキャンプ場として貸し出しており、月に一回は四季折々の宿泊型ワークショップを行なっている。

「今の社会って、いろんなことをたくさん吸収しすぎちゃって自分を見失いがちな人があふれてると思う。僕は10代の頃から俳優活動をしていて芸能の仕事をしていたのですが、事務所に所属してから自分ってなんだろうとか、周りの人と比べて苦しくなったり、生きている意味がよくわかんなくなってしまう時期がありました。学び続けたり、成長を目指すことだけが人生なのか、とか」

そのころ、俳優業を目指すかたわらバックパックで世界を旅した経験が、今の場所を作るきっかけになっているという。
「実は世界には、0siteのように宿泊しながら農作業の体験や大工仕事の体験ができる場所がたくさんあって。僕も10代〜20代前半の苦しんでたときに、そういう環境で過ごして、自分を取り戻せた感覚がありました。だから自分も同じように息苦しさを感じている人たちのために居場所を作りたいと思ったんです。もちろん一泊二日で完全な0に立ち返ることは、難しいとは思うんですけど、自然に囲まれた環境で、五感を研ぎ澄ますことで、この瞬間は自分だなっていう心地よい時間は見つけられると思うんです」

今後もさらに0siteをパワーアップすべく、五右衛門風の設置や、畑で育てた野菜の販売、粘土土でのピザ窯作り、展示スペースなども始めたいと語る古山さん。これからも、ゲストみんなで育てていく、そんなオープンでのびやかな場所になる予定だ。

「梅採りと種まき」の一泊二日のワークショップに参加した、鈴木 駿さんに聞く。

今回は2022年の6月に行われた0siteの「梅採りと種まき」のワークショップに参加した、鈴木駿さんにイベントの様子を振り返ってもらった。
鈴木さんは東京で編集者として働いていており、普段から街を散策したり、知らない場所に出かけることが好きだそう。0siteを立ち上げた古山さんとは昔から幼馴染だという彼に、この場所の魅力を伺った。

<1泊目>のんびりワークショップスタート! 

【昼~夕方】
「まずは山梨の0siteにお昼くらいに集合しました。いつもスケジュール通りというより、その時の流れで全てが進んでいく緩い空気感があります」この日は急遽「女将と梅取り+ペンキ塗り」のイベントから「梅採りと種まき」に予定が変更。
「まずはみんなで梅シロップの仕込みから。初めまして同士なので自己紹介がてら、淡々と梅を洗ってヘタをとって、下準備をしました」この仕込み方法も、0siteの古山さんからゲストに伝授されるそう。

のんびりとした空気から始まるワークショップ。実際参加する人はどのような人が多いのだろう。
「この時は全員初対面で、6人くらいだったかな。みんなそれぞれ出身地もバラバラで全国各地から来ていました。インスタを見てきたという人や、友達の紹介で来たという人、きっかけもさまざまで、基本的には20代の人が多かったです」

参加者はみんな初対面。
参加者はみんな初対面。

出来上がった梅シロップは、一年間漬けて出来上がる。「これをまた、来年みんなでここに戻った時に開けましょうということになって。各自家で作れるようにと、一キロの梅もお土産にもらいました」
そしてこの日は梅シロップ作りが早く終わったということで、古山さんこだわりの畑をみんなで見にいくことに。「この畑には、古山さんが不耕起栽培で育てたという野菜があって。農地を耕さないで人間の手を加えずに、植物たちの力を存分に生かして育てるという方法だそう。そういった話を聞きながら、みんなで実際に野菜を収穫しました。その後、今夜の夜ご飯のお皿にしようということで、フキの葉も持ち帰ることに」

【夜】
あたりが真っ暗になり静けさに包まれる頃、古川さんお手製のライトに照らされて、いよいよお待ちかねの晩御飯タイム。0siteの晩御飯は古山さんのパートナー、古山美左紀さんが振る舞う。
「この日の夜ご飯は、かまどで炊いたご飯に、猪のお肉のサラダなどが出ました。野菜などは0site畑で育てたものが主で、その土地のものをいただける。開放的な野外でお酒も飲みながら、古山さんチョイスの雰囲気のいい音楽も流れます」

ライトは古山さんお手製。
ライトは古山さんお手製。

地元の豊かな食に満たされたあとは、焚き火が用意される。
「お腹いっぱいになったあとは、みんなで火を囲んで一休み。ギターを弾く人がいたり、おしゃべりをしたり。みんな初めまして同士なのに、結構プライベートな話もするんです。もちろん、参加したくない人はしなくてもいい。自由な雰囲気です」

焚き火を囲んでリラックスした後は、各自食卓の片付けなどをして、明かりが消される。そこに現れるのは...満天の星空。
「0siteは山奥にあるので、街灯もなければ、音も聞こえない。ちょっと怖いくらいの静けさ。その分、星がめちゃくちゃ(本当に)綺麗で圧倒される。あまりに綺麗なので、みんなで近くの田んぼのような場所で寝そべって、そのまま20分ぐらいじっと星空を眺めました」

都会では味わえない満天の星空を全身で感じた後は、就寝時間。外にテント張って、みんなで寝袋を並べて眠る。
0siteにはお風呂の設備がないので、入りたいという人は近くの温泉に行くそう。「歩いて10~15分ぐらいの近所に、『増富の湯』という温泉があるのでそこにいきました。免疫力や自然治癒力が高まるというラジウム温泉で、信じられないほど効くんです」

0site名物の焚き火時間。
0site名物の焚き火時間。

<2泊目>さいごの日。

【昼~夕方】
壮大な自然に囲まれ、明るい太陽の光で目覚める朝。起床してから、新鮮な朝の空気の中をみんなで軽くお散歩。帰ってきてから、朝食の準備が始まる。外の机にテーブルクロスを敷いて、古山さんは自らが焙煎した豆でコーヒーを淹れ、美左紀さんは手作りスコーンを焼いてくれる。なんとも優雅な朝だ。

焼きたての手作りスコーン。
焼きたての手作りスコーン。
自家製パンも。
自家製パンも。

「どれも身体に染み渡るようで本当に美味しい。手作りの朝ご飯でお腹が満たされたあとは、みんなで梅とりにいきました。近くの旅館の女将さんの梅の木がある土地にお邪魔して。地元の方たちとはもちろんお互いはじめましてなんですけど、作業しながらだと自然に会話も弾んで。若い者たちと年配の方、みんながごっちゃになって汗をかきました」
沢山身体を動かしたあとは、なんと女将やお手伝いにきた村のおばさまたちが用意してくれた、手作りの弁当がお待ちかね。「これがもう、本当にものすごく美味しい。おにぎりや煮物とか唐揚げとか、いつもの倍美味しく感じる。みんなバクバク食べてました。みんなでお皿を回しながら、和気藹々と食べる時間も楽しくて」

そんな賑やかな時間もあっという間、集合もマイペースな0siteは、解散ものんびりと。
「予定がある人は好きに帰っていいよみたいな感じです。この時はみんな梅とりが終わって、行きたい人だけでまた温泉に入りました。それでこの回は解散に」体を動かして、食べて、湯に浸かる。全てをやり切った後の温泉は格別に違いない。
0siteのイベントって、染め物とかクリエイティブなワークショップもあるけど、体を動かしてよく働くこともある。でもなんか働いている感じがしないというか。いつの間にか清々しい気持ちになっているのが不思議なんです」

地元の方々が作るお弁当をみんなで広げて。
地元の方々が作るお弁当をみんなで広げて。

0になって見えてくるもの。0siteの魅力とは?

「まず0siteは、古山さんが0から作ろうとしているってところが魅力だと思います。やっぱり空間って、あまりにおしゃれすぎたりするとゲストも緊張しちゃう。でも古山さんの人柄もあってか、全体的に緩さがあるのがいい」

また、何度か0siteのワークショップに参加しているという鈴木さんが、訪れるたびに魅了されるのが、夜の焚き火時間だという。
「やっぱり0siteのあの焚き火の時間がいつもすごく良くて。あそこのあの時間なら話せるっていうのが、参加者全員の中にある気がします。初めましてなのに自然とプライベートの話もでて、心が緩んだのか泣き出してしまう人もいます。古山さん自身も人生で色んな経験をした人だから、どんなゲストでも受け入れる度量がある。そのままでいいんだよっていう雰囲気があの場所全体にあるんですよね。これは僕の偏見なんですが、来る人はやっぱり何かに悩んでいる人も多い気がします。でもそれはみんな何かに挑戦してるからこそ。ここでいろんな人の話を聞くと、刺激にもなるし同時に自分が楽にもなれるんです」

R0007103

次回の0siteイベント「田園音楽室 vol.3」

[公演概要]
タイトル:田園音楽室 vol.3

日程:2023年10月14日(土)
会場:0site
出演:mmm
角銅真実
時間:OPEN 14:30(予定)〜未定
料金:前売¥3,500, 当日¥4,000 (ドリンク代別)

※その他、宿泊券とのセットも用意。詳しくは0siteインスタグラムで。
主催:田園音楽室

photo_峠 和花菜 edit&text_Wakaba Nakazato

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