愛され続ける懐かしのパン! 浅草・神楽坂の人気老舗ベーカリーとは?ずっしり重い名物クリームパンは必食。 FOOD 2018.10.14

ずっしり重い名物クリームパンをはじめ、変わらない味にほっとする懐かしのパン。浅草・神楽坂の愛され続ける人気老舗ベーカリーを、パンラボ・池田浩明さんをナビゲーターにお迎えしてご紹介!

1.〈神楽坂 亀井堂〉/神楽坂

神楽坂を裏通りへと折れる。歩きながら思わず幸せな気持ちになるのは、趣ある町だからというだけではない。あの角を曲がると亀井堂がある。そう想像するだけで笑みがこぼれるのだ。

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和菓子店として明治23年創業。パンを始めて21年たつ。

左が平日でも300個以上売れる「クリームパン」210円。右は「神楽坂バーガー 生姜焼き」310円。ほんのり甘いパンに、しょうゆ味の肉がよく合う。
左が平日でも300個以上売れる「クリームパン」210円。右は「神楽坂バーガー 生姜焼き」310円。ほんのり甘いパンに、しょうゆ味の肉がよく合う。

名物のクリームパンはずっしり重い。

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ずっしりとしたクリーム。重みで形が崩れないよう、トングではなくヘラで取り分ける。

底から破れてはみだしてきそうなぐらい、クリームが詰め込まれている。齧ると中から甘さがあふれだす。その瞬間のうれしさを味わいたくて、神楽坂にくると路地を曲がってしまう。お客さんをよろこばせたい気持ちが、あんなにもクリームを入れさせるのだろう。

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名物の亀マーク入り袋がかわいい。

2.〈ケーキショップ テラサワ〉

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浅草の裏通りにあるテラサワ。尻尾までクリームの入ったチョココロネが有名な店だが、私のお気に入りはミルクパン。

先までしっかりとクリームが入った「チョココロネ」120円
先までしっかりとクリームが入った「チョココロネ」120円

ほかに「生クリームコロネ」も人気で、持ち帰り用の冷凍もある。

クッキーだが名前は「ミルクパン」
クッキーだが名前は「ミルクパン」

しっとりした生地と甘酸っぱいあんずジャムは、昭和25年の創業当時から変わらぬ味。各130円。

写真を見てびっくりしないでほしい。パンでもないし、ミルククリームでもない。クッキーにあんずジャムがのっている。甘酸っぱさが、ミルク風味のクッキーのおいしさを引き出す。かわいい見た目も私を夢中にさせている。

なぜこれをミルクパンと呼ぶのか、ご主人に訊いたことがある。
「私にもわからないんですよね。生まれたときからそうだったから」

店主の寺澤長晴さん(写真右)いわく「安心して食べられるものにしたいから、ショートニングは一切使わずバターのみで作っています」。結婚前に、妻・実栄子さん(写真左)へコロネをプレゼントしたというチャーミングな一面も。
店主の寺澤長晴さん(写真右)いわく「安心して食べられるものにしたいから、ショートニングは一切使わずバターのみで作っています」。結婚前に、妻・実栄子さん(写真左)へコロネをプレゼントしたというチャーミングな一面も。

店主の寺澤長晴さん(写真右)いわく「安心して食べられるものにしたいから、ショートニングは一切使わずバターのみで作っています」。結婚前に、妻・実栄子さん(写真左)へコロネをプレゼントしたというチャーミングな一面も。

可笑しかった。でも、すごくいい話だと思った。肩肘張らず、伝統を守っている。さりげなく手に取ったものが、昔むかしの人が食べていたものと同じだなんて、とても楽しいではないか。浅草が、かつては東京で一等の繁華街だったと聞いても、いまではぴんとこないけれど、フランスの焼菓子みたいなこのおしゃれなクッキーに、その時代の記憶はとどめられているのだろう。

サンドイッチやコッペパンサンドのマヨネーズは自家製で、亜麻仁オイルと米油だけで作るというこだわり。
サンドイッチやコッペパンサンドのマヨネーズは自家製で、亜麻仁オイルと米油だけで作るというこだわり。

サンドイッチやコッペパンサンドのマヨネーズは自家製で、亜麻仁オイルと米油だけで作るというこだわり。

ドッグパンのラスク。1枚1枚ていねいに焼き上げる。
ドッグパンのラスク。1枚1枚ていねいに焼き上げる。

ドッグパンのラスク。1枚1枚ていねいに焼き上げる。

池田浩明/パンラボ主宰。パンを食べまくり、食べたパンについて書きまくる。最新刊に『おかしなパン』(山本ゆりことの共著、誠文堂新光社)。

(Hanako1128号掲載/photo:Yoichi Nagano text:Hiroaki Ikeda(essay), Kaori Hareyama)

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