街路がお店の中に続いている? 名喫茶〈喫茶ロン〉でできる特別な体験

東京都生まれ。大阪公立大学教授。建築の歴史を、作り手ではなく使う者の視点から読みとく。『東京モダン建築さんぽ』(エクスナレッジ)ほか著書多数。BUNGA NET で「ポストモダニズムの歴史」連載中。
深紅のソファに腰掛け、まずはコーヒーとサンドウィッチを。

ホットコーヒーはネルドリップの中煎りに対し、アイスコーヒー750円は程よい苦みが心地いい深煎りが楽しめる。名物「タマゴサンド」に続き、昨今は「ハム&チーズのミックスサンド」850円も、じわじわ人気。創業時から変わらない個性的な切り方にも注目を。
「まず入り口がカッコいい。通りに対して斜めの壁と円筒形の塔で作られた窪みに、ガラスが嵌まっている。この細長いスリットが入り口になっていて、さりげなく屋内へ誘います」と倉方さん。建築家の池田勝也によるモダニズム建築の名店は、1969年に竣工した。入り口の先には2層分の吹き抜けがあり、その景色は店主いわく「街路を引き込んだ“道”。店は街の一部だと思っています」。

1階と2階、屋外と屋内など、普通は分断されるものをうまく繋げた空間に、装飾はほとんどない。緻密に計算された空間そのものが、心を満たすからだ。
〈珈琲ロン〉の魅力1. 体感したくなる階段室。

外観と同じような円筒が店舗の奥にもあり、誘われるように内部へ入ると、2階への螺旋階段になっている。
〈珈琲ロン〉の魅力2. 低めに揃えたオリジナル椅子。

造り付けソファも含め、スペースごとに椅子の高さが揃えられている。低い背もたれは見通しのよさに貢献。
〈珈琲ロン〉の魅力3. 視線を外に向けるスリット。

2 階席。1 階ドアから続くガラス窓や、部屋の隅に設けられた細いスリットが、小さな空間に開放感を生む。

鉄筋コンクリート造のビルの1、2階。店内には柱がなく、右手に見える円筒形の塔がその役割を担う。コンクリート打ち放しの外壁と木レンガの床は店内まで繋がっている。

住所:東京都新宿区四谷1-2
TEL:非公開
営業時間:11:00〜18:00
定休日:土日祝休(毎月第3土日は禁煙で営業)
席数:48席 平日のみ全席喫煙
開業:1954年
改装:1969年
設計:池田勝也
規模:鉄筋コンクリート造4階建(店舗は1・2階)
現在は、2代目マスター・小倉洋明さんと娘の真智子さんご家族が、歴史が刻まれた空間と味を守る。
※記事内に特段の記載がない場合は禁煙店です。
※20歳未満の方は喫煙可能エリアへは入ることができません。