帰国まで1週間をきり、3日連続で通ったカフェ。|前田エマの秘密の韓国 vol.15 MAA TRAVEL 2023.12.14

この連載では、韓国に留学中の前田エマさんが、現地でみつけた気になるスポットを取材。テレビやガイドブックではわからない韓国のいまをエッセイに綴り紹介します。本連載はついに最終回。最後となる第15回目は、3日連続で通うほど大好きなカフェ「MAA」へ。

友人が来ると必ず連れて行った店。こういう場所ができたことを、本当に嬉しく思っている。

韓国での生活も今月で一旦、おしまい。
8ヶ月間、書かせていただいてきたこの連載も、今回が最終回。
最後に行きたいと思って足を運んだのは、第8回で訪れたカフェ「オレムス」の姉妹店、「MAA」。

「オレムス」は、アイスクリームを使った美しいデザートと、丁寧に淹れられたお茶、テイクアウトもできる焼き菓子が並ぶ、こじんまりとした店だ。
黒や茶色を基調とした店内はシックな雰囲気で、それこそとっておきの秘密の店として、こっそりと友人に教えたくなるような場所だ。
いつも外に、入店待ちの人々が、今か今かと並んでいた。

連載第8回「オレムス」での様子。記事はこちら
連載第8回「オレムス」での様子。記事はこちら

そんな「オレムス」を一旦おやすみにして、ご夫婦が始められたのが「MAA」だ。
「もっと色々なことをしたくて作った場所」だと言うここは、以前よりも広くて、窓も大きく、明るい。

「オレムス」と大きく違うのは、ショーケースに並ぶケーキたちだと思う。

ブダペストというロールケーキや、チョコレートケーキであるザッハトルテを見ていると、ヨーロッパに留学していた頃を思い出す。
留学先のウィーンで食べたザッハトルテは、甘くて、まるで砂糖のかたまりをジャリジャリ噛んでいるのではないかと思った記憶があるのだが、「MAA」のザッハトルテはとても軽く、甘すぎず、何度食べても飽きない。
ハーブで作られたリキュールや、アプリコットの爽やかさが、いい仕事をしているのだろう。感動した。

まるで縁日の焼きそばのように、プラスチックのケースに収められているのは、モンブランだ。
底にはメレンゲとサブレ。サクサクと音を立てる。
その上にはローズの香りがついた生クリームと、甘酸っぱいカシスソース。
香ばしいマロンクリームの下に、こんな鮮やかな層の世界が埋まっているなんて、びっくりした。

前田エマ

ご夫婦は、独学でお菓子作りを学んできたそうだ。
だから、既存の枠にハマらない自由さがあるような気がする。
だってモンブランは山の名前から来ているじゃないか。
こんな平らなモンブラン、面白すぎる!!!

前田エマ

「これからは、パンやサンドイッチなどもやってみたいし、いろんな飲み物も出していきたい」という。
カウンターに並ぶ瓶の中は、試作中のカリンのシロップ。
ああ、早く飲んでみたい。

前田エマ

コーヒーやお茶などもある中で、私がオーダーしたのはアップルシナモンのドリンク。
これは冬にぴったりだ。身体がほかほかする。
ソウルの冬は、寒い。11月に初雪が降った。

もちろん、大人気のアイスクリームたちも、健在だ。
「オレムス」で食べた季節によって変わるソフトクリームも、ここで食べることができる。
この連載の第8回で食べた、マロンクリームや黒糖のクランブルがたのしい、ほうじ茶のソフトクリームも。

前田エマ ケーキ

秋に食べた若葉色のソフトクリームは、ディルとフェンネルで作られていた。
いちじくやピスタチオ、白胡麻、アーモンドのクランブルやハイビスカスソース、そして洋梨のソルベまで登場し、もう本当に大興奮だった。

夏には、桃のパフェを食べた。
ラムのアイス、アーモンド味のメレンゲ、ラズベリーのソース、そしてジューシーな桃。
食欲の落ちる季節に現れた、ご褒美のようなデザートだった。

前田エマ ケーキ

最近、毎週水曜には「オレムス」で人気だった焼き菓子も販売しているという。
お客さんからの要望が多く、できる範囲で作っているという。
フィナンシェやガレットブルトンヌは、根強いファンがいるのも納得する。
嫌味がないというか、本当に純粋な「美味しい焼き菓子を作りたい」という気持ちが現れたような、そんな感じが伝わってくるのだ。

前田エマ ケーキ

帰国まで1週間をきり、3日連続で通った。
友人が来ると、必ず連れて行った店。
こういう場所ができたことを、本当に嬉しく思っている。

photo_Mio Matsuzawa edit_Kei Kawaura

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