前田エマの秘密の韓国 vol.8 オレムス TRAVEL 2023.09.01

この連載では、韓国に留学中の前田エマさんが、現地でみつけた気になるスポットを取材。テレビやガイドブックではわからない韓国のいまをエッセイに綴り紹介します。第8回目は、季節の食材を使って、シンプルながら手の込んだスイーツを味わえる「オレムス」へ。

気取っていないところが、とても好き。

ある春の日。
授業の合間の休み時間にスマートフォンを開くと、メッセージが届いていた。
「今日、オレムスに行けますか?」
私の胸は、きゅーんっと鳴った。

オレムスというのはアイスクリーム、焼き菓子、お茶を出すお店で、メッセージを送ってきてくださったのは、チェ・ジウンさんだ。

チェさんとはその2週間ほど前、友人の紹介で出会った。
仕事でソウルに来ていた友人の、現地でのコーディネーターを担当されていた。
グレイヘアーをおかっぱに切りそろえ、モノトーンのきちんとした格好の中に、様々な素材や、主張しすぎないさりげない模様で遊びを加えた、とても素敵なファッション。
日本語の選び方、テキパキと仕事を進める潔さ。
一緒に過ごさせていただいた時間は1時間にも満たなかったが、私はチェさんの振る舞いや、かっこよさに憧れた。

なので、チェさんから「今日、オレムスに行けますか?」とメッセージを受け取ってからは、はっきり言って授業どころではなく、うきうきした気持ちで、早く放課後にならないかなあと、心ここにあらずであった。

前田エマの秘密の韓国 オレムス

チェさんと初めて出会った日、「オレムスという、とても素敵なアイスクリームのお店がありますから、今度行きましょう」と、言われた。
そういう約束をする人はよくいるが、皆さんお忙しいので、口約束で終わることが多い。
なので、いつかひとりで行こうと思い、お店の情報も調べ、3日後くらいに行けそうだなあと、オレムスのインスタグラムを眺めながらニマニマしていた矢先に、チェさんから連絡があったのだ。
とてもびっくりした。

学校が終わりに駆け足で店に向かうと、カウンターの奥の席に座って、アイスクリームを食べているチェさんがいらした。

オレムスは、季節の食材を使って、シンプルでありながら、とても手の込んだスイーツを作る。気取っていないところが、とても好きだ。
マスカットやイチゴ、イチジクといった果物だけでなく、エシャロットなど野菜を使うこともある。

前田エマの秘密の韓国 オレムス

看板メニューとも言えるソフトクリームは、必ず食べてほしい一品だ。
私が初めて行ったときにたべたのは、淡いグリーンが美しい、ピスタチオのソフトクリームだった。上にかけられたアプリコットのシロップがさわやかで、トンカ(芳醇な香りのスパイス)が効いていて、ソフトクリームの山に雪のようにさらさらとかけられた薄く焼いたクレープ生地で出来た粉がサクサク。

今回は、ほうじ茶のソフトクリームだった。セイロンシナモンと塩がアクセントとなっており、豊かな味わい。ソフトクリームの山の上に、水玉のように散らばったマロンクリーム。
その上には、黒糖のクランブル(砂糖やバター、小麦粉などで作られたクッキーのようなもの)がふわっとのっていて、わくわくする味がした。

前田エマの秘密の韓国 オレムス

夏と言えば、かき氷だ。
運ばれてきた瞬間、キラキラ。その姿は、まるで宝石。
チャメと生姜でつくられた上品でフレッシュなシロップ。
アクセサリーのように、ポツンとのっているオレンジ色のグミのようなものは、パッションフルーツで作られている。

前田エマの秘密の韓国 オレムス

チャメは春先から夏にかけて韓国の市場では必ず売られている果物で、日本名はマクワウリ。
韓国では、スイカのようなかんじなのだろうか? 日本に住む韓国の友人たちは「日本にはチャメがないから恋しい」とよく口にする。メロンやスイカのようなもので、それほど甘くないと聞いていた。
かき氷の上にのったパッションフルーツは、もちもちしていて美味しかった。
かき氷を崩していくと、ガランガのアイスクリームがが見えてくる。これぞ、最高の喜びだ。

店頭で売られている焼き菓子は、友人への手みやげや、翌朝の贅沢な朝ご飯としてもぴったりだ。

前田エマの秘密の韓国 オレムス

オレムスは今、少しお休み中だ。なぜなら、MAAという新しいお店を近くにオープンしたから。今、私は夏休みで日本に帰ってきているのだが、9月に韓国へ戻ったら、新しいお店に真っ先に向かうつもりだ。

そして、オレムスは、新しいお店が安定したら、また営業を再開するそうなので、それもまた楽しみだ。

Photo_Mio Matsuzawa

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