言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第50回~

LEARN 2021.05.14

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。今回は語り出したら止まらない偏愛漫画作品について。

「会いたいけど、会ったら人生終わっちゃいそうな人ナンバーワン」

 読書をテーマに、最近読んだ好きな作品、作家さんのお話をした前回。変わって今回は15年ぶりに出会って「やっぱり好きだ!」と思った作品について。それは矢沢あい先生の『Paradise Kiss』です。すみません、突然の漫画の登場です!これまで書籍の話ばかりしてきましたが、私は漫画も大好きなのです。いや、正確に言うと、矢沢あい先生の漫画がとにかく大好きです。
 1990年代後半から2000年代に学生生活を送っていた人なら必ず通ったであろう、矢沢あい作品。大ヒット作『NANA』を筆頭に『天使なんかじゃない』『ご近所物語』など名作ぞろいで、私も学生のときに授業そっちのけで貪り読んでいた。いわゆる少女漫画としてイメージするような王道の展開である、学園生活で主人公とタイプの違う二人のイケメン君との三角関係、どっちが取るのか喧嘩していたら、その二人と異母兄弟だったことが判明!?なんていうファンタジー要素は一切ない。東京のどこかで起こっていてもおかしくないって思うくらい、リアリティを背負った物語たちなのだ(あと、とにかく絵が美しい…。ひとコマひとコマため息が出るくらい綺麗。登場人物の何とも言えない表情の描写が素晴らしいと思う…。本当に!)。

 先日、担当する番組で漫画全巻をすぐに送ってくれるサービスがあるというのを知り、無性に集めたくなった。というのも、中学生が読むにはちょっと大人びた内容もあり、当時は友達から借りるとかクラスに置いてあるのを読むとかで、手元にはなかったからだ。今は誰に何を言われることもない!ポチポチっと、久しぶりの再会に高鳴る胸を抑えて注文した。ほどなくして届き、あの頃と同じく貪るように一気に読んだ。大好きだった『Paradise Kiss』…。ページをめくる手と、目から流れる涙が止まらなかったです。ジョージも紫(ゆかり)も徳森君も、いつだって色褪せないセリフのひとつひとつが最高です…(もちろん嵐もイザベラも!)。初めて読んだティーン時代における衝撃もすごかったけれど、30歳になって読む『パラキス』は予想以上の破壊力。こんなに泣かされるとは思わなかったです。当時ははっきり言ってお子ちゃまの恋しかしていなかったし、こんな感情があるのか…とオトナの世界をティーンエージャーが背伸びして覗き見させてもらっていたようなところがある。あなたのことが好き!だけでは表せない感情とか、相手のことは好きだけど自分のやりたいことも曲げられないとか、正直分かっていなかった。けれど、自分も年を取るごとに色んな経験やそれに付随するやるせなくてままならない感情を乗り越えてきたからこそ、分かる良さがありました…。
 特に、ジョージに付いていくかいかないかの選択は、パートナーとの関係で起こりうる事象がぎゅっと集約されているような気がした。ここまでのスケールではなくとも、自分の仕事や夢と相手といる幸せのどっちを取るかというのは周りでもよく聞く議題だし、これから先もますます起こりそう。普遍的なテーマ。だけど、あんなに美しく物語に出来る人はいない。いくら時が経っても、絶対にこの作品は色褪せない。

 ここからはもうこの漫画を読んだことのある人だけ読んでください。誰だってジョージより徳森君の方が自分のことを(もうこの時点で自分と紫を同一視してしまっているので、冷静ではないと見なしてください)大切にしてくれて、絶対に気持ちも安定して、周りも心配させないし何なら将来性もバッチリだし、何の非の打ちどころもないんだけど、やっぱりジョージに気持ちが持っていかれるっていうのは、もう人類みな共通の見解ってことで良いですか?
 ジョージは本当にズルい…。会いたいけど、会ったら人生終わりそうだから会いたくない人ナンバーワン。ラストも最高だし、ネタバレしてもよければあと2000文字は語れそうです…。ああ、思い出したら、胸が辛い。
 

次回:2021年5月28日更新予定

【弘中のひとりごと】
『天使なんかじゃない』も好きですぅ~!

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