喫茶店で見かける「アレ」。あなたはどれだけ知っている?

1. テーブルの上の定番娯楽。ルーレット式おみくじ器
おおの・こういち/営業、部品の発注、硬貨識別センサー調整、リース器のメンテナンスなどを担当し、おみくじ器を知り尽くす。12星座は天秤座。よく見る占いは朝の情報番組の星占い。

見覚えのある風景、昭和の喫茶店のテーブルでよく見かけた球体型のルーレット式おみくじ器が、最近ひそかにブーム再燃中。新たな展開の兆しあり。
ルーレット式おみくじ器とは、星座を選んで100円硬貨を投入し、下のレバーを動かすと、ルーレットが回ると同時におみくじが出てくる、という仕組みだ。
「今の形になったのは、1980年代前半。待ち合わせ相手を待つ間や家族同士で楽しんでいたようです。スマホもネットもない時代の、よい時間つぶしだったのかもしれませんね」とは国内唯一の製造メーカー〈北多摩製作所〉の大野幸一さん。
懐かしの風景の一つ…と思いきや、2013年放映のNHK朝ドラ『あまちゃん』に登場したことでブームが再燃。現在、月に約50台を販売し、今後はオリジナルデザインへの対応も検討中。「街で見かけたら運試し感覚で楽しんでみてください」

サイズはミニでもくじの内容は濃い!
出てくるおみくじは、幅25㎜、直径4㎜の筒状で極小だが、開いてみると2種類の占いがこんなにぎっしり。
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-5 B1
TEL:0422-29-0121
営業時間:10:30~18:30LO(土日祝~19:30LO)
定休日:無休
席数:27席
2017年開店。濃厚な「自家製ぷりん」820円は、深い香りと滑らかな舌触りが自慢のオリジナルブレンド880円とともに。
2. 味わいを増した姿に店の歴史を重ね見る。喫茶家具
むらた・りゅういち/2015年、閉店した喫茶店の家具や食器を引き取り販売する〈村田商會〉創業。2018年に閉店した喫茶店〈POT〉の場所や家具を受け継ぐ形で、喫茶店兼店舗をオープン。

喫茶店の風景を作るテーブルや椅子。たくさん使われ色や質感が変化した姿は、店が愛されてきた証でもある。そんな視点で眺めれば、いつもの店の家具も、ぐっと愛おしく思えてくる。
喫茶店は自分を受け入れてくれる場所。その象徴が椅子だと話すのは村田龍一さん。閉店した喫茶店の家具や食器を引き取って販売するショップ兼喫茶店、〈村田商會〉の主人である。
「大切に愛されてきた家具を受け継いで、次の人につなぎたい。そう思って始めたんです。店がなくなっても、椅子やテーブルにはその店や使った人たちの記憶が宿っていると思うから」
村田さんのような視点で喫茶家具を見つめ直すとしたら、まず何に着目するとよいだろう。「木の椅子のひじ掛けが、よく触れる部分だけツヤツヤになっている。あるいは張地の角が擦れて薄くなっている。それはたくさんの人に愛されてきた歴史の形ですよね。エイジング加工では出せない、喫茶店家具ならではの味わいだと思います」
椅子は座面が低めで落ち着くものが多い。背もたれが垂直で壁につけられる椅子など、狭い空間に便利なものも。
住所:東京都杉並区西荻北3-22-17
TEL:なし
営業時間:12:00~19:00
定休日:月火休ほか臨時休
席数:13席
Instagram:@muratashokai
ブレンド珈琲550円、スパゲティナポリタン800円など。店内や建物脇のコーナーでは、引き取ってメンテナンスをした家具や食器も販売。椅子は1脚数千円から。
村田さんを通じ、小伝馬町で45年続いた喫茶店〈コット〉の家具を引き継いだ高井戸の〈喫茶マカボイ〉。


住所:東京都杉並区高井戸東2-26-7
TEL:11:30(土日8:00)~17:00(日~16:00)
営業時間:水~土は夜営業あり
定休日:月火休
席数:20席
Instagram:@mcavoy_takaido
〈コット〉の家具に合わせた内装は細部まで手作り。
3. カチコチ音に耳を澄ませて。振り子時計
てらやま・かずひろ/時計修復技術を独学で習得し、アンティークの機械式時計を修理・販売する〈とらいふる〉を開店。映画やドラマを見ていても振り子時計があると気になってしまう。

喫茶店の振り子時計が刻むあの音は、せわしない日常を忘れ、ゆったりした喫茶時間に没入するためのスイッチだ。そんな振り子時計の鑑賞法を喫茶店好きの時計マイスターに聞いてみた。
17世紀に西洋で発明された振り子時計。日本に入ってきたのは明治期だ。以来、海外への憧れの象徴として、昭和40〜50年代の喫茶店にもよく取り入れられた。
「いちばんの魅力は音ですね。均一な音で規則的に時が刻まれている安心感。喫茶店の扉を開けた時に、コーヒーの香りがしてカチコチ音が聞こえたら、それだけで異空間に誘われます」
そう話すのは、西荻窪で古い時計の修理と販売を手がけている〈とらいふる〉の寺山和弘さん。時計のマイスターは大の喫茶店ファンでもある。
「カチコチ音が聞こえるのは静寂の印。私たちを取り囲むさまざまな音が、振り子時計の音でいったんクリアになるんです」

では、喫茶店で振り子時計に出合った時の鑑賞ポイントは?
「針の金具や扉のガラスを見ると製作年代がわかります。ゆらゆら波打つガラスなら古いもの。戦後のものには草花や幾何学的な切子模様が刻まれていることも。懐かしい音とともにそういう細工を見るのも楽しいですよ」

針の留め具をチェック!
長針と短針を留める金具で製作年代がわかる。ネジは昭和初期以降、楔(くさび)はそれ以前の古いもの。文字盤の数字がローマ数字の場合も古いものが多い。
住所:東京都杉並区松庵3-31-16
TEL:03-6765-7690
営業時間:14:00~18:00
定休日:不定休
振り子時計やアンティーク腕時計のほか大正ガラスの器など古道具を販売。時計の修理やオーバーホール(要予約)、喫茶店の振り子時計のメンテナンスも。
4. チケットが並ぶ様は常連に愛されている証。コーヒーチケット
すずき・まゆ/2023年4月より〈はまの屋パーラー〉の広報を担当。好きなメニューはコーヒー。「はまの屋のためだけにブレンドされた中深煎りで、“ザ・喫茶店”という味わいが好きです」

コーヒーチケットは、いわばコーヒーの回数券。昭和の喫茶店では、店舗がチケットを預かり、陳列することが多かった。今では珍しくなった風景を訪ねると、常連客の思いがあふれていた。
ペーパーレス化が進み、来店スタンプなどもスマホアプリへ移行する現代において、コーヒーチケットはまさに昭和を代表するカルチャーのひとつ。〈はまの屋パーラー〉がコーヒーチケットを導入したのは、広報の鈴木真由さん曰く、名古屋独特の喫茶店文化がきっかけだったそう。
「一日に何度も喫茶店に通う風習がある名古屋では、経済的なコーヒーチケットの利用が盛んです。そこで、生活に根ざした喫茶店を育むひとつのきっかけになるかもと思い、当店でもチケットを導入しました」
店としては割引をすることになるが、「ご購入いただいた方には、ごく控えめにお店の存在をアピールでき、忘れずにいてもらえるのがメリット」と話す。

レジ周りの壁には、お客様の氏名が書かれたコーヒーチケットがずらり。それだけ常連が集う証ともいえる。現在は新規客への提供はないが、「時期は未定ですが新たな形で再開したいと考えています」というから、今後に乞うご期待!
表紙デザインも見どころのひとつ。
〈はまの屋パーラー〉のコーヒーチケットは、ミルと射手、2種の表紙が。そのうち新デザインにも会えるかも?
住所:東京都中央区日本橋室町1-7-2 八木長ビルB1
TEL:03-6281-8818
営業時間:9:00~18:00
定休日:無休
席数:32席
創業1966年。