貧困、格差、望まぬ妊娠、パパ活……
これまでのフェミニズム作品に描かれていたことから、更に踏み込んだドラマ『SHUT UP』

CULTURE 2024.01.15

配信サービスに地上波……ドラマが見られる環境と作品数は無数に広がり続けているいま。ここでは、今日見るドラマに迷った人のためにドラマ作品をガイドしていきます。今回は12月からテレビ東京でスタートした『SHUT UP』について。

貧困・格差・復讐――これまで描かれてきたフェミニズムから、更に新たなことを描く

テレビ東京で月曜の深夜のドラマプレミア23という枠で放送されている『SHUT UP』は、第一話のタイトルが「貧困・格差・復讐」とあって目を引いた。このドラマを見ていると、これまでのフェミニズムを描いたドラマや映画、小説や漫画のことを思い出させるとともに、そこから更に新たなことを描いていることがわかり、毎週の放送が心待ちになってきている。

プロデューサーは、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』や『うきわ ─友達以上、不倫未満─』、『今夜すきやきだよ』を手掛けてきた本間かなみ。彼女にとっては初のオリジナル作品となるが、毎回、作風が違うものの、ひとつの芯のようなものが通っている気がする。

物語の主人公は、学費や生活費を自分で稼ぎ、学生寮から大学に通う田島由希(仁村紗和)。寮には同じ境遇の恵(莉子)・しおり(片山友希)・紗奈(渡邉美穂)がいて、バイト先でもらったお弁当を分け合ったりしながら、皆で助け合って暮らしていた。

しかしある日、恵がインカレサークルで知り合ったエリート大学生の鈴木悠馬(一ノ瀬颯)との間に望まぬ妊娠をしたことが発覚。しかし悠馬は、自分の子どもであるとは限らないとし、恵からの連絡を遮断。由希らは、恵の中絶費用をパパ活をすることで稼ごうとするのだが、パパ活の客が由希とのやりとりを動画にアップしてしまい…。

昨今、大学生が貧困などを理由にパパ活をしている現実を描いたドラマや漫画などはある。をのひなおによる漫画の『明日、私は誰かのカノジョ』は、MBS/TBSのドラマイムズにてSeason 1、Season 2が作られたが、『SHUT UP』は、そのようなリアルな現状を描きながら始まるサスペンスドラマである。

このドラマに出てくるエリート大学生の鈴木悠馬のキャラクターが良くも悪くも興味深い。彼は将来、起業することを夢見て、大学ではサークルを率いて人脈づくりに精を出している。同じ大学に通う露木彩(芋生悠)という彼女がいて大事にしているが、その裏でインカレサークルに参加する恵のような学生とも一夜限りの関係を持っている。

恵の望まぬ妊娠に対して由希達から抗議を受けた悠馬は、証拠もないのに責めるのはおかしいと言ったり、もうちょっと落ち着いて建設的に話せないか?と由紀らを小バカにしながら諭す。また由紀らのことを、自分の努力が足りないのに、他人のせいにするのが好きな人たちであるとみなしている。つまり、自分の恵まれた環境に無自覚な自己責任論者なのである。女性たちが浅はかな訴えをしてきたが、自分には叶うわけがないという態度からは、姫野カオルコの小説『彼女は頭が悪いから』を思い出させるものがある。

一方、お嬢様育ちで同じ学校に通う彼女には、由希や恵に見せたような狡猾な部分は見せず、家で食事をした後に、彼女と共に後片付けを自然に分担できるような紳士的な面も持ち合わせているのである。

これまでにもドラマや映画では、表向きには紳士的で威圧感のない男性が、実は無自覚のミソジニーを持っているという作品はあった。小説や映画にもなった『82年生まれ、キム・ジヨン』に出てくる主人公の夫であったり、野木亜希子脚本のドラマ『獣になれない私たち』に出てくる主人公の彼氏などがそうであった。彼らは、社会の中で男性として生きる中で、無自覚にミソジニーを身に着けてしまった、至ってどこにでもいる男性であった。

しかし、悠馬の場合は、決して無自覚ではない。自分と同じランクの人間であるとみなしている本命の彩のような女性に対しては決してミソジニーを向けたり小バカにしたりはしないが、自分とは別の階層にいると判断した女性に対しては、小バカにしたりミソジニーを向けたり、ぞんざいな扱いをしてもよいと思っているところが、これまでの男性キャラクターとは違うところである。

映画『あのこは貴族』と並べて見る、格差による男女関係の描き方

こうした、格差による男女の関係性を描いたものに、山内マリコの原作の『あのこは貴族』がある。岨手由貴子の脚本・監督で映画化もされた。

『あのこは貴族』に登場する美紀(水原希子)は、地方出身で東京の名門大学に入学するも、学費のためのバイトに忙殺され、そのままドロップアウトしてしまう。美紀は、かつては同じ大学に通っていた弁護士の青木幸一郎(高良健吾)と出会い、関係性を持っていたが、幸一郎は良家の生まれの榛原華子(門脇麦)と見合いで結婚することになる。幸一郎は、美紀とは結婚できる関係性とは違うという認識は持っているが、悠馬のように美紀にだけあからさまなミソジニーや侮蔑を向けることはない。幸一郎にあったのは、逃れられない「家」の呪縛であったのだ。

『あのこは貴族』では、ひとりの男性=幸一郎の「不誠実さ」を知っておくべきであるとして、美紀と華子は人生の中で少しだけすれ違い、お互いが他者(というか他の階層とでもいうべきか)を知ることになる物語であったが、『SHUT UP』の場合は、ひとりの男性=悠馬の「不誠実さ」(それは幸一郎のそれとは比べ物にならないほど酷い)を知った恵と彩は共闘するのである。

これまでの作品であれば、外で多少の浮気をしていたとしても、「私」に対して誠実であれば少々は目をつぶるという本命彼女が描かれることは多かったし、そのような本命彼女は、主人公の女性からすると憎き恋敵であった。しかし、『SHUT UP』では、女性たちは共に戦う仲間となるのだ。

彩が共闘すると決意したのは、悠馬が自分に対しては紳士的な態度で尊重していて、しかも彩を何も気づかないピュアな女性と信じているのに対し、望まぬ妊娠をさせた恵やその仲間の由紀に対しては、「論破してやった」とうそぶいたり、格下の大学の女性はまともに相手をするわけがないと書いてあるサークル仲間とのSNSのやりとりを見たからである。彩が由紀たちに「絶対に許しちゃいけないことってあると思うんです」と告げるセリフがあり、心に残った。

世の中ではこのドラマ以上のことが起こっているのではないか

そして由紀や恵、彩たちは、悠馬への復讐として、彼がサークルで行っている『VIP』というパーティ(サークル内で選抜されたかわいい女の子と、タレント、商社、メディア系の男性を個室で飲み会をさせるものでると説明されている)のチケットで集めた100万円を強奪する計画を遂行するのである。

この原稿を書いている時点では4話の放送が終わったばかりであるが、100万円強奪は、理由どんなものであれ犯罪であるし(ほかの作品であれば、犯罪描写にこのようなエクスキューズもいらない場合もあるのに、女性のリアルな復讐ものであるということで、このような補足を入れないといけないことにも、若干の疑問を感じるが)狡猾な悠馬が、この事態に黙っているわけはない。

予告を見ると、ますます事態は混乱していくような映像になっていた。由希たちになんとか貧困や抑圧、そして搾取から自由になってほしいという思いを持つともに、サスペンスや復讐劇のハラハラドキドキも増していて、次回が早く見たくてしょうがなくなるのである。

しかし、『SHUT UP』についての今回のこのコラムを読んで、現実には、ここまで酷いことはないと思う人もいるかもしれない。しかし、毎日ネットなどで報じられるニュースやSNSでのやりとりを見ていると、むしろ世の中ではこのドラマ以上のことが起こっているのではないかとも思えるのだ。

text_Michiyo Nishimori illustration_Natsuki Kurachi edit_Kei Kawaura

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