苦手意識はもったいない。和田静香さんに聞く、フェミニズムと政治を知ることで得られるものって?

SUSTAINABLE 2024.01.17

2023年9月に出版された『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと』というタイトルの本。著者の和田靜香さんは、自身の暮らしを通して感じた、不安や疑問(焦りも?)の答えを求めて、女性議員の比率が半数の「パリテ」を20年以上実現している町を体当たりで取材した。この本の執筆に至る背景にはいったいどんなことがあったのだろうか?

フェミニズムへの気づきと政治への関心

——わたし自身がSDGsに関連した活動を追い始めた頃は環境問題に関心があって、それは「地球が滅びたら経済活動も何もできないじゃん!」っていうシンプルな発想がベースにありました。ただ、和田さんの書籍のタイトル然り”フェミニズム”や”政治”に関する話は正直、小難しそうで避けていたところがありました。なので、この本をきっかけに関心を持つようになり、”フェミニズム”や”政治”って、実はとても身近で、自分にとても関わることなんだと実感しました。

そうなんです。オンリーワンである“わたし”を大切にしながら、持続可能な生きやすさを考えることは、自分自身に関わるすごく大事なこと。“そのためには政治”っていきなり言われると重たい気がして、考えたくなくなってしまうけど、噛み砕いていうと、「私たちのこれからの暮らしをどうしていったらいいかをみんなで考えようよ」っていうことなんですよね。

椅子に座って話す和田静香さんと品田ゆいさん

——和田さん自身が感じたジェンダーの不平等と、政治に女性議員がもっと増えることを願い、後押しするこの本を書いたきっかけは?

私自身ずっと音楽業界でライターをしてて、男性と女性で評価が全く違ったり、嫌なこともいっぱいあったけど、それが当たり前だし、私は頭がよくないからしょうがないって当時は思っていました。

だけどライターの仕事だけでは生活が成り立たなくなってきて、アルバイトばっかりしてて、未来や明日どころか今日が見えないっていうぐらい不安定な中、なんとか日銭を稼いでやってきたのにコロナ禍でバイトをクビになっちゃって。

この時、「私は元々書く仕事をしていたんだから、書かなきゃと!」覚悟を決めて国会議員の小川淳也さんに手紙を書いたんです。「一緒に本を作りたい」って。これがきっかけでできた本が、2021年に発売した『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』でした。

でもこの本を作っているときはまだ、ジェンダーの意識は薄かった。ただ、女性ならではの問題の話になると、男性の政治家は、どうしても共感の度合いが薄い。そう実感して、やっぱり女性の政治家がいいなって、その時初めて思いました。

笑顔で話す和田静香さん

——実際に政治家さんと接してみた肌感が今回の本が誕生する足がかりに。そのとき、“女性ならでは”のどんな話をされたんですか?

例えば、非正規労働者は女性の方が男性より2倍も多いことについてとか。でもそれ以前に、女性っていうだけで、「女のくせに」と言われたり、飲み会で飲み物を注いだり、小皿に分けなきゃ“気が利かない女”だとか言われたり。

生活のなかに困難って山盛りで、そういうことを経験している女性の政治家であれば一緒になって私たちのその大変さを分かち合えるんじゃないか、だから女性の政治家を増やしたいと思いました。

ただ現状まだ少ないし、女性議員が多くなったら何が良くなるのか、実際に女性が多い議会をインタビューしたり取材しなければわかんないよなと探し出して、神奈川県大磯町の議会に取材に行くことにしたんです 。

社会構造が女性を分断している?

和田さんの著書

——パリテ(男女同数議会)を軸足に、大磯町がいかにして達成したのか、和田さん自身の足跡と共に記されてますが、取材は大変でしたか?

自分の暮らしも不安でしか無いんだけれど、なんとかしなきゃっていう気持ちで大磯町に通い続けたら、そこで出会った女性たちがいろんなことを話してくれて。仲良くなったり、人を紹介してくれたり。そうするうちに、だんだんといろんなことが腑に落ちたり、繋がってきたんですよ。

子育てのことを70代の男性だけで話し合うよりも、今、当事者であるママ世代の議員がいれば当然、より議論が深まる。だから、議会も女性が増えると当然長くなるんだけど、そういう風にして広い視野とか多様な意見を取り入れて、話し合いをしているのが大磯町議会で、パリテの素晴らしいところなんですよね。

 

——パリテが特別なことではなく、自分の住む街でもそうだったらいいのに、と思いますね。

大磯町だってそんなふうになるには、1970年代、80年代から女性たちが”みんなで体にいいものを食べましょう”って〈生活クラブ〉を中心とした消費者運動から始まって、市民運動で連携して自分たちの暮らす町を守ったり、よくおしゃべりをして、学びをして、支え合ってきた。

​​例えば今日、シナダさんが住んでいるところで何かを始めたとして、実現するのは今だったら情報の伝達が早いから2〜3年で実現出来るかもしれないし、もしかしたら、ものすごく時間がかかるかもしれない。でも何かを始めたら、いつか何かが変わるかもしれないですよね。

和田さんの著書のページ

ーーそうですね! 実は今まで、議員のことを全然知らなかったがゆえに、女性の議員さんに対して、よくない印象を持っている部分もありました。だからきちんと応援しよう!っていう気が起こらなかったっていうのが正直なところあったんですけど、この本のおかげで考えが変わりました。

おお、嬉しいです!「女たちは分断させられてきた」の章でも触れたように女性と女性が分断されがちじゃないですか。私、結婚してない人でしょ。結婚して子供がいる人とは、 どうしても互いに合わないなと思うところがあると思います(笑)。

私だって「チェっ、子供だ、うるさいな〜」とか、心の中で、本音ではそういうことを思うことがあったり。でも、それって実は男性中心の、いわゆる資本主義システムの中で、みんながみんな大変な思いをしているから“ちょっと得してる風に見える人”がいると妬んじゃうんですよね…。

だけど、フェミニズムや政治のことが分かってくると、議員も、そうじゃない人も、社会人も、専業主婦も、やっぱり女性同士が、繋がっていかないとダメだなって気づくことができます。

 

ーー妬みも嫉みもそう思うのも仕方ないと受け止めてもらえたところに絆(シスターフッド)を感じられましたし、いろんな立場の人が繋がらないとですね。

これまで、女性は家事に育児、介護とか無償のケア労働をやって、さらに働く男性を支えて当たり前。でも外で働きたいんだったら、安い時給でちょっと働けばいいよっていうシステムがあって。もちろん、女性の社会進出も進んではきているけれど、そういう昔のシステムはもう変えなきゃいけないのに、まだ根強く残っている

 

ーー本当ですね。家庭だけではなく、様々なシーンで活躍している女性も増えてきてるなぁ、という印象はありますけど、まだまだ家事や育児の負担が女性に偏っているなど、旧態依然な部分が残っていますよね。日本の2023年のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位。2022年と比較して、9ランクも落とすという事態…。にも関わらず、大人しくジェンダーギャップに耐えているような印象すら持ちます。

あと育児の問題だけじゃなく、産んで育てたくとも元々子を持つことが難しいなど、人それぞれの事情も今の社会通念のままでは、生きづらさを感じやすいのではないかと思います。

みんな真面目に 一生懸命働いて、一生懸命やってますよね。ほんと今のままではみんな黙って削られていってしまう気がします。だけどそもそも、自分の声を持たなきゃ、声を上げられない。そのためにはやっぱりみんなが自尊心を養って、自信を持って、””っていうものを持たないと。「私、ここにいていいんだよね」、「私ここで生きてていいんだよね」って。そういう肯定ができたら、それはもう自信がついたってこと。だから、そのためにフェミニズムが大切なんだと思う。

 

ーーフェミニズムってなかなか腹落ちしなかったんです。それに、声をあげるのは“インテリ”という部類の人たち、と思い込んでいました…(笑)。

フェミニズムっていうと、なんか“戦う”というイメージが強くて、誰かが先頭に立って旗振ってって、怖いイメージがありますよね。私も若い時はずっとそう思っていた。でも、実はそうではなくて、“女性だから、男性だからこうあるべき”といったジェンダー規範をつくらないで、その人らしく、自分がやりたい、ありたい生き方を応援する。それが多分フェミニズムだと思うんです。

間違っていてもいい。自分を認めてあげることからはじめてみる

笑顔の和田さんと品田さん

ーーちなみに和田さんが思う政治に関わるきっかけ、入り口として、とっつきやすいものは何だと思いますか?

街で暮らしてて、自分が暮らしてて、困ることってあるじゃないですか。 ほんとに些細な問題でもいいんです。例えば、通りのゴミ捨て場がいつも汚い、街灯が暗いとか。それを街の区議会議員さんに言っていいんです。

実は、区議会のホームページを見ると、大体みんなメールアドレスと電話番号と、今はSNSのURLも書いてあることが多い。同性の方が理解しやすい困り事だったら、女性の議員さんに連絡してみたり、SNSだったら書き込みしやすいんじゃないでしょうか。

 

ーー気軽な相談窓口みたいな役割でしょうか!? そういうことを知っているだけで、、生活するうえで心強いですよね。

議会を傍聴とかしてもいいんだけど、そんな時間、みんながみんなあるわけではないと思うし、手軽に議員本人のSNSでの発言を見て、「あ、この人なんかこういうのに関心ありそう」とか、「優しそう」とかと思えたら連絡してみるとか。で、そっけなくされたら、「ダメだった」でいい(笑)。

 

ーーそんな感じでいいんですか(笑)。

そうそう。最初はそんな感じでもいいし、おしゃべり会だとか政治に関する本の読書会をやってる人もいたりするから、参加してみるのもいいですね。もちろん推したい国会議員や市議会議員を見つけて、事務所内でボランティアをしてみたり。そこでの何気ない会話から広がることもありますよ。

 

ーーなるほど、まずは関心を持つことですね。

そうです! 関心を持って、今ある構造を変えていかなきゃ、老後だって心配ですよ〜。とにかく不安に思った事は声にしていい。政治が良くなるとかじゃなく、暮らしが良くなる。ほんとに政治って、私たちの生活そのものだから。


ーー高齢になった時、安心して暮らせるパラダイスを社会全体でつくれたら理想ですね。

じゃあどうしたらいいんだろうってことは、正解はないので、みんなで考えるしかないですよね。私は声あげることが当たり前になったし、間違えていてもいいやと思うし、叩かれても別に。しかも私はちゃんと本名でX(旧Twitter)をやっていて、 向こうは匿名の誰か知らない人ばっかりで、別によくわからない誰かが何か言ってきても、屁でもないです! 

それに間違いってことはないと思うんです。 向こうの観点からしたら、間違えてるかもしれないんだけど、また別の視点で見たら、いや、こっちの方が実は正しいっていうこともあるから、どの視点で見るかによって政治においての議論って変わるから、絶対的な間違いってのはないと思いますよ。なので皆さんにも「私はここにいていい、間違っててもいい、それが他の誰でもない私の声なんだから」と自信を持って政治に関わっていってほしいです。

品田さんと和田さんの記念写真

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