豊かな未来のために、今、みんなで考える。 「“年上彼氏”の価値観について、友人と言い合いになってしまう。」4人の賢者が答える、未来のための相談室。

SUSTAINABLE 2022.07.30

全ての人が尊重される未来の実現のためには、わたしたちの悩みの解決も大切な一歩なはず。すぐには解決しなくても、どう考えればいいのかだけでも、教えて賢者たち!

Q.「年上の彼氏との付き合いに、友人が固定観念で干渉してくる。」

33無題

二回り以上年上の彼氏と付き合って5年。周りの同世代の友人には「結婚するの?」(結婚したとしても、将来介護などどうするのという意味で)、「子供はどうするの?」(彼にその体力はあるのか)などと聞かれ、返答に困ってしまいます。以前、私の考えをストレートに話した時に言い合いになってしまって、それ以来あまりパートナーについては話さないようにしているのですが……。(いぶ/32歳)

A.1 鈴木涼美「自分の信じる宗教に強引に勧誘してくる人とは少し距離をとってみるのがお勧めです。」

あなたにとって大切なお友達を悪く言いたくはありませんが、自分の信じる宗教に強引に勧誘してくる人とは少し距離をとってみるのがお勧めです。例えば未婚の母、不倫、フリーセックス、SMプレイ、専業主夫など、一部の人にとっては喜びでありときめきであるものが、信条的に許せないという人も一部にいます。

どんな神を信じるのも個人の自由ですが、相手に自分の神を押し付ける習性のある人は厄介です。本人は善意のつもりで言っているので、抵抗すればするほど、「この子を悪い道から救ってお祓いして光の道に導かなくては!」とやる気を出すことも多いからです。そのご友人が甘いものが好きだとして、「甘いものは身体に悪いのにどうして食べるの?太るし虫歯になるし生活習慣病のリスクもあるのよ?」と言い返して、自分のしていることがいかに迷惑で不快か思い知らせるのも手です。

A.2 イシヅカユウ「二人の関係は、二人だけのものです。」

言い合いになってしまって以来パートナー関係について話していないにもかかわらずこのような相談事がおありになるということは、そうしてからも聞いてくるということなのでしょうか。そうなのであれば、もしも私なら言い合いになっても構わないからもう一度はっきりと相談者様達の関係について「これでいいんだ」と返答してしまうと思います。結婚も子供もパートナー関係に必須なものではありません。そして二人の関係は、二人だけのものです。これからもパートナーさんと素敵な関係を築いていくことを応援しています。

A.3 吉村泰典「お二人の人生を尊重した選択を大切にしてください。」

そういう意見は、無視していいと思いますよ。日本では男性のみならず、女性にも「女性はこうあるべき」といった性別役割分担意識の強い方が少なくありません。身近に多様な生き方をする女性のロールモデルがいないのが問題ですね。例えば、本来は「結婚すること」と「子供を産むこと」は切り離して考えていいはずなのに、婚内子が全体の98%を占める日本では、出産=結婚という意識が根強い。

希望してシングルマザーになった人に対するリスペクトにも欠けています。これは残念ながら長い時間をかけて出来上がった日本特有の風土です。その風土をこれから覆していくためにも、相談者様はぜひご自分の考えを持ってパートナーと共有し、お二人の人生を尊重した選択を大切にしてください。

Answerers

◆吉村泰典(よしむら・やすのり)/産婦人科医師・慶應義塾大学名誉教授・ウィメンズ・ヘルス・アクション代表。生殖医療の第一人者として、不妊症、分娩など数多くの患者の治療を担当。ウィメンズ・ヘルス・アクションのメディア「わたしたちのヘルシー」(https://watashitachino-healthy.com/)にて、心と体の話を始めるきっかけを発信している。

◆太田啓子(おおた・けいこ)/弁護士。神奈川県弁護士会所属。明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)メンバーとして、主に離婚、セクシャルハラスメント、性被害などの案件を手がける。近著に『これからの男の子たちへ「 男らしさ」から自由になるためのレッスン』(大月書店)など。

◆イシヅカユウ/モデル・俳優。1991年生まれ。2021年に、文月悠光の詩を原案とした短編映画『片袖の魚』で主演としてスクリーンデビューを果たす。雑誌やCM、ショーなどさまざまな媒体で活躍中。体が男性として生まれながら女性のアイデンティティを持つMtFであると公表している。

◆鈴木涼美(すずき・すずみ)/社会学者・作家。1983年生まれ。慶應義塾大学在学中にAVデビューしたのち、東京大学大学院を修了し、日本経済新聞社記者を経て作家に。書評から恋愛エッセイまで幅広く執筆。近著に『ニッポンのおじさん』(角川書店)、『娼婦の本棚』(中央公論新社)など。

(Hanako1210号掲載/illustration : Suzu Saito text & edit : Rio Hirai, Uno Kawabata (FIUME Inc.))

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