〈帝国ホテル〉がずっと特別な理由。 開業130周年〈帝国ホテル〉が一流であり続ける理由とは。8つの“おもてなし”を大解剖。
日本の迎賓館として1890年11月に開業し、今年130周年を迎える〈帝国ホテル〉。もてなしの技は唯一無二。宿泊を通して、ホテルを支える一流の仕事を紐解きます。
【理由.1】エレベーターのバラなど、 館内の花は生花だけ!
ふんわりとした絨毯の感触を確かめながら〈帝国ホテル東京〉のロビーに足を踏み入れると、堂々たる佇まいの「ロビー装花」に出迎えられる。ケイトウの燃えるような深紅の色が、秋の訪れを告きらげている。装花の頭上で煌めくシャンデリア、奥に続く階段と、シンメトリーな美しさに改めて見惚れてしまう。
さて、今日は念願の宿泊の日。ドアマンからベルマンへ、流れるような連携作業でスムーズにチェックインを済ませると、スターターと呼ばれるエレベーター専門スタッフが客室へと導いてくれる。エレベーター内には小さなピンクのバラが一輪。「このバラの美しさを保つのも私たちの仕事なんですよ」というスターターの言葉に、おもてなしは既にここから始まっていることを知る。
【理由.2】もてなしの心を象徴する着物姿の客室スタッフ。
本館16階のインペリアルフロアに到着すると、部屋の前で着物姿のゲストアテンダント(特別フロア専門のスタッフ)の女性が笑顔で迎えて下さり、感動してしまう。
客室の壁一面の大きな窓からは日比谷公園が真正面に広がり、この場所が東京の一等地であることを再確認する。バスルームのシンクの水栓はピカピカに磨かれ、真っ赤なバラが一輪、さりげなく飾られている。品のいい開き具合は、エレベーターのピンクのバラと同じだ。
【理由.3】チェック項目は200以上!客室の守り神インスペクター。
〈帝国ホテル〉が長い歴史の中で研鑽してきたおもてなしの一つが、妥協なき掃除への姿勢。2人一組の清掃係が30分かけて丹念に掃除した後、さらにもう一度、「インスペクター」という客室点検の専門スタッフがくまなくチェックする。グラスの微細な欠けも見逃さず、落とし物がないか、カーテンのヒダやベッドの下も入念に確認し、テレビは必ずつけて適度な音量か確かめる。そのすべてが、宿泊客がストレスなく寛ぐための準備。
【理由.4】水漏れから灯りの番人まで、非日常を支えるプロ集団。
また、ホテル内には家具や水回り、照明などを修繕する専門部署があり、表舞台を支えている。だから誤ってシンクに指輪を落としたりしても、すぐに駆けつけてもらえるのだ。評判を聞いていたシャワーの水圧や水切れもさすがの快適さ。これも見えないところまできちんとメンテナンスされている証なのだ。
【理由.5】客室やレストランの家具は木工室で丁寧に補修・修繕。
【理由.6】国内外の賓客を魅了するランドリーの凄技!
〈帝国ホテル〉に滞在する日が来たら、やってみたかったことがある。それはクリーニングと靴磨きを体験すること。今年11月で開業130年を迎えるこのホテルは、「日本初」尽くしであり、ランドリーサービスはその筆頭。長旅を経て到着した海外客のために1911年に開設され、凄技のプロが常駐する。
【理由.7】アーケードの歴史と歩む日本最古のジュエラー。
地階に店舗が連なるアーケードもこのホテルが日本1第号。開業時から店を構えるジュエラーは、ソフィア・ローレンなど多くのスターが訪れた華やかな歴史を刻んでいる。
【理由.8】あまたのVIPの顧客を持つシューシャインの名人。
そしてアーケードには、伝説の靴磨き職人がいる。大切な靴を名人に磨いてもらうのは、一人前の大人になれたようでなんだか誇らしい。
朽ちない生花、一つの欠けもない完璧な照明…そうした集大成がホテルという非日常を生んでいる。この心地よさも高揚感も、365日、休むことのないプロの仕事に支えられている。帰り際、エレベーターのバラ一輪の変わらぬシルエットを見て、〈帝国ホテル〉が一流であり続ける理由に改めて気づくのだ。
〈帝国ホテル 東京〉
1890年開業、手厚いもてなしで知られる、日本を代表するホテル。130周年を迎え、記念プランも登場。1階には名匠フランク・ロイド・ライト建築のライト館(1923〜1967年)の歴史を辿る展示スペースも。
■東京都千代田区内幸町1-1-1
■03-3504-1111
■IN:14:00/OUT:12:00
■客室数:931室
(Hanako1189号掲載/photo:MEGUMI illustration:Mizumaru Kawahara text:Yoko Fujimori)