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自分を曲げずに突き進む姿勢のヒントに。 「大切なことは本に学んだ。」話題の作家おすすめ!女性作家による伝記・小説・短編集4冊
魅力的な作品の裏に垣間見える、作家の人となりや女性ならではの視点。そこには、自分らしく生きるためのヒントが詰まっています。Hanako『自分を高める学びの場へ』「大切なことは本に学んだ。」よりお届け。
1.フランソワーズ・サガン『サガンという生き方』斜に構えてものを見る不良少女のような眼差し。
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18歳で『悲しみよ こんにちは』を上梓し、鮮烈なデビューを飾ったサガンの伝記。既成概念を覆す、偽善のない人生美学が綴られる。
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「酒やドラッグに溺れながらも、一般論に縛られず、社会への不信感を持ち続けた女性。この本には“幸せとは自分のしていることを恥に思わない状態です”という好きな一節があります。与えられた善悪の物差しで測らず、感情を信じる考え方。今、悪はSNSで叩いてもいいみたいな風潮ですが、善悪の基準は時代や立場により変わるかもしれない。常識を疑い、自分の角度から物事を見ることが大切だと教えられます」
2.ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』自由の権利を主張したフェニミズムの先駆者。
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パーティの一日を描いた、現在と過去へと視点が移り変わる、実験的で斬新な長編小説。日常と死との向き合い方が主題。
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「“女性が小説なり詩なりを書こうとするなら、年に500ポンドの収入とドアに鍵のかかる部屋を持つ必要がある”。つまり、表現には経済的自立と精神的余裕が必要だと主張していた女性。フェミニズムという言葉が生まれる以前の約100年前のイギリスは、知的、芸術的水準の高かった彼女でさえ、女性というだけで満足に教育を受けられなかった。ですが、その信念には、精神的にも自立した女性の意識が窺えます」
3.金井美恵子『愛の生活・森のメリュジーヌ』磨かれた知性が表現する思考の遊び。
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19歳の若さで執筆した、実験的な第一作『愛の生活』は、感覚的な文体によって日常が刺激的に映る名作。そのほか『兎』など9編の小説を収録。
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「知的な言葉で綴られ、些細なことも難解に表現する文体が持ち味。あえてわかりやすく書かず、思考を運動させ遊ぶようにしながら読ませる醍醐味に、刺激と文学の面白みを感じます。この読み手に対する媚びなさの美学は、女性こそ空気を読んで、丸く収めることがよしとされる世の中で、自分を曲げずに突き進む姿勢のヒントに。ブリッ子が苦手でも、不器用でもいい!そんな救いとなってくれる女性です」
4.鈴木いづみ『 鈴木いづみ コレクション〈4〉女と女の世の中』一瞬一瞬を生きた1970年代のアイコン的存在。
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女性しかいない世の中を描き、性が垣間見えたり、社会への気付きが語られたりする『女と女の世の中』など7作のSF短編集。無秩序な鋭い視点が。
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「地に足がついた安定より、バカらしいけれど豊かなものに価値のあった70年代。ホステスやヌードモデルを経て、人気作家となった彼女は、この時代を体現する女性。恋愛に命をかけ、今この瞬間を生き、36歳のときにパンストで首吊り自殺をした波瀾万丈な人生は、現代と真逆の無秩序さと言えるのでは。コツコツ貯金を、結婚は○歳までに、といった現代の地道な発想の対極を知ることで、価値観を解放してほしい」
Navigator…作家・社会学者 鈴木涼美
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東大大学院卒、元AV女優、元日経新聞記者。現代を斬るコラム等を執筆。女性の生き方に関する著書を11月末発刊予定。
(Hanako1178号掲載/text : Kyoko Kashimura illustration : Yu Tokumaru edit : Nao Yoshida)