【東京】珠玉の1杯に感動。わざわざコーヒーを味わいに行くべき喫茶店8選

【東京】珠玉の1杯に感動。わざわざコーヒーを味わいに行くべき喫茶店8選
【東京】珠玉の1杯に感動。わざわざコーヒーを味わいに行くべき喫茶店8選
FOOD 2025.05.22
カップの中には店主の美意識と昭和から続く喫茶文化が息づいている。カフェ〈MIA MIA(マイア マイア)〉代表のヴォーンさん、ネルドリップコーヒーとチョコレートの店〈蕪木〉代表の蕪木祐介さんに“喫茶店のコーヒー”を体感しに訪れたい、東京のお店を教えてもらいました。

photo_MEGUMI, Hikari Koki, Kunihiro Fukumori, Asako Hirose text_Yoko Fujimori, Mae Kakizaki, Ami Hanashima, Mako Yamato, Maiko Shimokawa
教えてくれました
ヴォーン
〈MIA MIA(マイア マイア)〉代表

カフェオーナー、モデル。喫茶店へのリスペクトを込めて東京・東長崎にオープンしたカフェ〈MIAMIA〉が2025年春に5周年を迎え、2025年夏には浅草橋に2号店を開店予定。

教えてくれました
蕪木祐介
〈蕪木〉店主

かぶき・ゆうすけ/日本らしい喫茶の世界観が人気を博す蔵前のネルドリップコーヒーとチョコレートの店〈蕪木〉代表。〈大倉陶園〉の器に映える一杯にファンも多い。

1. ブレンドの魅力に開眼する名店。渋谷〈茶亭 羽當〉

渋谷〈茶亭 羽當〉のコーヒ
本日は〈ヘレンド〉の「ヴィクトリア」の器で(写真)。羽當オリジナルブレンド1,000円。

1989年の創業から変わらぬ、コーヒーファンにとって特別な場所。店長・寺嶋和弥さんの凛とした立ち姿と物腰柔らかな接客が心地よい空気を生む。店名を冠した、ブラジルをベースにした中煎りのブレンドは、粗挽きにしてたっぷり28g使い、寺嶋さん曰く「おいしいところだけ」を贅沢に抽出。だから深いコクと複雑味にあふれ、澄んだ後味に感嘆する。

渋谷〈茶亭 羽當〉の店内
ストックを含めると600客に及ぶ名作カップ&ソーサーの前でドリップするネクタイ姿の寺嶋さん。まさにこの店の景色だ。湯を点々と糸のように細く注ぐ丁寧で無駄のない所作が、〈羽當〉の味を作る。

壁一面のコレクションから客の印象に合わせて器を選ぶのも店の醍醐味。営業は毎日23時まで、年中無休。変貌激しい渋谷に残された“喫茶店の鑑”だ。

information
茶亭 羽當(ちゃてい はとう)

住所:東京都渋谷区渋谷1-15-19
TEL:03-3400-9088
営業時間:11:00~23:00(22:00LO)
定休日:無休
席数:50席

2. レコードの音色に合わせた軽やかさ。神保町〈ミロンガ ヌォーバ〉

神保町〈ミロンガ ヌォーバ〉のコーヒー
〈ウェッジウッド〉のカップでいただく、「マンデリン」750円。

店のシンボルともいえる巨大なスピーカーから流れるアルゼンチンタンゴ。その心地よいリズムのように、ペーパードリップで軽やかに淹れるコーヒーは全て炭火焙煎だ。豆の焙煎度が一番深いブラジル豆ベースのブレンドや、季節替わりで7種類展開するストレートが主力。

神保町〈ミロンガ ヌォーバ〉の店内
棚いっぱいに並ぶ、アルゼンチンタンゴのLPやCDたち。

「暖かい陽気が続くこの時季は、人気の高いマンデリンや、中性的な味わいのコロンビアもおすすめ」と、店長の浅見加代子さん。一杯に対して、豆の量は少し多めに設定。粗めに挽くことで、スッキリとした後味を実現している。

information
ミロンガ ヌォーバ

住所:東京都千代田区神田神保町1-3-3
TEL:03-3295-1716
営業時間:11:30〜22:30(土日祝〜19:00)
定休日:水休
席数:40席

タンゴ愛好家もこよなく愛する音楽喫茶。世界のビールも楽しめる。

3. 変わらない味こそが魅力。御茶ノ水〈喫茶 穂高〉

御茶ノ水〈喫茶 穂高〉のコーヒー
珈琲650円。今もネルドリップで豆の旨みを引き出している。

飛驒山脈にある奥穂高岳にちなんだ店名や山小屋をイメージした内装など、随所に山を感じることができる老舗の名店。「山で飲むコーヒーはおいしいからね。雰囲気だけでも近づけられたら」と店主の粟野芳夫さんは話す。

御茶ノ水〈喫茶 穂高〉の店内
店内の本棚には、常連の作家から寄贈された本も並んでいる。

そんなこの店で提供するコーヒーは、コロンビアを主体とした中煎りのブレンドのみ。「ほっとする喫茶店の味。本が読みたいときに行きたい店です」とは蕪木さん。創業時から変わらないコーヒーの味とともに粟野さん一家の朗らかな人柄も、この店が愛され続ける魅力となっている。

information
珈琲 穂高

住所:東京都千代田区神田駿河台4-5-3 御茶ノ水穂高ビル1F
TEL:03-3292-9654
営業時間:8:00〜19:00
定休日:日祝休
席数:44席

2025年で創業70年を迎える。2017年から禁煙となり、女性客も増加。

4. 芸人たちも愛したマスター熟練の味。浅草〈珈琲 アロマ〉

浅草〈珈琲 アロマ〉のコーヒー
ブレンドコーヒー400円とオニオントースト330円の相性は抜群。

浅草演芸ホールのほど近くにある人気店。コの字カウンターの奥で常連客との会話に相槌を打ちながら、テキパキと手を動かしているのは82歳の店主・藤森甚一さん。「ブレンドコーヒーの配合は、酸味と苦味の絶妙なバランスを考え抜きました」。そう説明する藤森さんは、長年培ってきた技術で器用にネルドリップしていく。

浅草〈珈琲 アロマ〉のネルドリップ
「時間とお湯の温度でコーヒーの味は決まります」と藤森さん。

お湯で温めたカップに注がれたその味は、浅煎りながらまろやかな酸味とほのかな苦味が心地いい。生のスライスオニオンとピクルスを挟んだオニオントーストと味わいたい。

information
珈琲 アロマ

住所:東京都台東区浅草1-24-5
TEL:03-3841-9002
営業時間:8:00〜18:00
定休日:水土日祝休
席数:16席

1964年創業のこの店には、場所柄、演芸関係の常連客も古くから多く訪れる。

5. 職人技が成す普遍的な優美さ。表参道〈Café Les Jeux Au Grenier〉

表参道〈Café Les Jeux Au Grenier〉のオレグラッセ
オレグラッセ700円。すすらずに飲むと最後まで2層を維持できる。

骨董通りの裏路地にあるこの店は、コーヒーとミルクが2層に分かれたアイスコーヒー、オレグラッセ発祥の店として知られる。「1980年代にオーナーがこの店の売りになるものを作ろうと、カクテルをヒントに生み出したと聞いています」と説明するのは店長の上本貴央さん。使用するのは、〈コクテール堂〉のオールドビーンズ。生豆を熟成させ、深煎りで仕上げることで生まれる豊かなコクと苦味が特徴だ。それを専用に濃く抽出し、甘めのミルクと合わせた一杯には古くからのファンも多い。

表参道〈Café Les Jeux Au Grenier〉の店内
建築デザイナーの松樹新平さんが手がけた内装は創業時のまま。
information
Café Les Jeux Au Grenier

住所:東京都港区南青山5-9-5 村山ビル2F
TEL:03-3499-6297
営業時間:11:00〜23:00
定休日:不定休
席数:40席

1976年創業。オレグラッセの生みの親である斎藤修一さんは、今でも時々店に立つ。

6. “まろい”コーヒーと出合う。銀座〈十一房珈琲店〉

銀座〈十一房珈琲店〉のコーヒー
タイ・メーカジャン・サイワーン・ナチュラル(フレンチ)1,250円。

店主の長谷川能一さんがネルドリップで丹念に引き出す味は、濃さがありつつも、トロッとした柔らかい口当たりで甘みをも感じさせる“まろい”コーヒー。定番種だけでなく、時代に即した期間限定のスペシャルティコーヒーの存在は、またお店へ訪れたくなるきっかけに。

銀座〈十一房珈琲店〉の店内
入店は3名までと、コーヒーと向き合う空間も大切にしている。

この日は数年ぶりに東南アジアの豆が登場。農園独自の発酵技術を用いたタイ産の豆を、シティ(中煎り)とフレンチ(深煎り)で自家焙煎。生産背景や特徴を丁寧に伝えてくれる真摯さも、コーヒーとのひとときを更に充実させる。

information
十一房珈琲店

住所:東京都中央区銀座2-2-19
TEL:03-3564-3176
営業時間:11:00〜21:30
定休日:無休
席数:31席

ネルドリップと自家焙煎のコーヒー店。スペシャルティコーヒーは定量販売、なくなり次第切り替え。

7. スモーキーで重厚なエイジングコーヒー。下北沢〈トロワ・シャンブル〉

下北沢〈トロワ・シャンブル〉のコーヒー
「ニレ・ブレンド」には「チーズケーキ・レア」を(セットで950円)。

〈シャンブル〉のブレンドは、深煎り「ニレ」と浅煎り「カゼ」の2種類。コクとキレを体現するコーヒー、とマスターの松崎寛さんも語る「ニレ・ブレンド」は、六本木〈カファブンナ〉で出合い惚れ込んだ〈コクテール堂〉のオールドビーンズを使用。半年ほど熟成させた豆を粗めに挽き、名だたる名店で修業を重ねたネルドリップで丁寧に落としていく。淹れたてを出すのではなく、1時間ほど寝かせるのがシャンブル流。開店前から淹れ始め、味が落ち着いたタイミングで至高の一杯を届けてくれる。

下北沢〈トロワ・シャンブル〉の店内
マスターの松崎さん。一杯入魂で向き合う姿は、職人そのもの。
information
トロワ・シャンブル

住所:東京都世田谷区代沢5-36-14 湯浅ビル2F
TEL:03-3419-6943
営業時間:9:30〜20:00
定休日:無休
席数:32席 喫煙席あり

昭和55年創業。コーヒーの重厚さを引き立たせる空間も趣深い。

8. 職人技を愛でるバー感覚の一杯。蔵前〈蕪木〉

蔵前〈蕪木〉のアイリッシュコーヒー
深煎りとクリームの芳醇な共演。アイリッシュコーヒー1,100円。

ヴォーンさんが「モダン喫茶」と称賛する蕪木祐介さんの店。看板は自家焙煎の豆をネルドリップで一杯ずつ丹念に落とす艶やかなコーヒーと、カカオ豆から仕入れて作る自家製チョコレート。アレンジコーヒーも名作で、たとえばアイリッシュコーヒーは、シングルモルトウィスキーをグラスごとアルコールランプの火にかけ、深煎りのグアテマラと合わせる工程すべてが美しく、まるでバーを訪れたような感覚に。味わいは重厚かつ透明感に満ち、まさに“静謐な一人の時間”に似合う上質なカクテルだ。

蔵前〈蕪木〉の店内
ドリップ中の蕪木さん。彼が表現するブレンドもぜひ体験を。
information
蕪木

住所:東京都台東区三筋1-12-12
TEL:03-5809-3918
営業時間:水木10:00〜18:00(金〜20:00)、土9:00〜20:00(日祝〜18:00)、月10:00〜17:00(販売のみ)
定休日:火休
席数:15席

2016年オープン。

more recommended spots 1. デミタスで愉しむ、“一滴一滴”の豊かさ。福岡〈珈琲美美〉

福岡〈珈琲美美〉のコーヒー
濃厚なデミタスコーヒーにフルーツケーキの甘味が引き立つ。

創業者の森光宗男さんは東京・吉祥寺の〈もか〉で修業。1977年に地元・福岡で開店して以来、自家焙煎豆とネルドリップコーヒーの名店として50年近くコーヒー愛好家から親しまれている。蕪木さんも学生時代から通い、お気に入りは「ゴールデン・ハラール」や「サンイルガチェフェ・モカ」などのデミタスコーヒー。特に前者は、希少なモカの中からさらに「ゴールデン・ビーンズ」だけを厳選した、〈美美〉だけの至高の一杯。一滴一滴、ゆっくりと抽出される濃厚な香味とエキスが心に沁みわたる。

福岡〈珈琲美美〉の外観
1階はコーヒー豆の販売スペース、2階は緑を望む喫茶室。
information
珈琲美美

住所:福岡県福岡市中央区赤坂2-6-27
TEL:092-713-6024
営業時間:12:00〜17:00LO
定休日:月、第1火休(ほかの火曜は豆の販売のみ)
席数:22席

デミタスコーヒー800円〜、フルーツケーキ400円。

more recommended spots 2. 目覚めの深いコーヒーと朝食。京都〈六曜社珈琲店 一階店〉

京都〈六曜社珈琲店 一階店〉のモーニング
コーヒー、トースト、ゆでたまごのモーニング800円。

1950年の創業以来、京都に受け継がれる喫茶文化を守り続ける一軒。常連も観光客も問わず、さっと来て思い思いの時間を過ごす。そこに寄り添うのは昔ながらのネルドリップのブレンドと、くつろぎをもたらすソファ席。意外なことに始まったのは2007年からで、店の歴史に比べればまだ新しいモーニングも今では欠かせない。

京都〈六曜社珈琲店 一階店〉の店内
素早い提供を大切に、コーヒーはネルドリップの10杯立て。

「店もコーヒーも、モーニングも、肩肘はらず生活に溶け込む存在でありたいというのは、創業者の祖父から変わりません」と3代目として店を切り盛りする奥野薫平さん。

information
六曜社珈琲店 一階店

住所:京都府京都市中京区河原町三条下ル大黒町40
TEL:075-221-3820
営業時間:8:30〜22:00LO(モーニング〜12:00)
定休日:水休
席数:35席

モーニングサービスタイムは禁煙、それ以降は喫煙。

※記事内に特段の記載がない場合は禁煙店です。
※20歳未満の方は喫煙可能エリアへは入ることができません。

Videos

Pick Up