コーヒーを飲むなら銀座へ行こう。 銀座とコーヒーの関係、その歴史を伝える3店。 FOOD 2022.12.02

銀座には、日本のコーヒーの歴史と切っても切れない名店がある。中でもその3巨頭ともいうべき名店をご紹介。誕生から現在までの物語を知れば、銀座とコーヒーの関係をもっと知りたくなるはず。

1.〈カフェ・ド・ランブル〉故・関口一郎氏が築き上げた独自のスタイルは今も健在。

〈カフェ・ド・ランブル〉の創業者・関口一郎氏が103歳で逝去してから早3年。コーヒー界のレジェンドと呼ばれた彼が残した喫茶店文化への影響は大きい。豆を熟成させ、オリジナルの焙煎機で自家焙煎。フランネルの布フィルターを使い点滴ドリップして濃厚なコーヒーを抽出する…。コーヒーに関する書籍もない時代に、自身の舌を頼りに試行錯誤を繰り返し完成させたその味に、数々の店が衝撃を受けた。そして今も、同店には少しも変わらず、その美学が残る。

40年以上関口氏の右腕として働いてきた林不二彦さんが抽出するコーヒーには、フレンチスタイルの濃厚な味わいが豊かに広がる。見れば昭和45年の移転以来そのままという店内は、無駄なものがなくピカピカに手入れされていて機能的。「当たり前のことを続けるだけ」と語る林さんにも、コーヒーに妥協を許さないこの店ならではの佇まいが宿っている。

〈カフェ・ド・ランブル〉
コーヒー豆の販売も可。100g 900円~。通販もOK(送料別)。
住所:東京都中央区銀座8-10-15 SBM BLDG 1F|〈地図〉
TEL:03-3571-1551
営業時間:12:00~22:00(日祝~19:00)
定休日:火休
席数:22席

2.〈カフェーパウリスタ〉明治の頃から大衆を魅了する店で伝説のブラジルコーヒーを。

明治44年、銀座に出現した白亜の洋館〈カフェーパウリスタ〉。コーヒーの相場が15銭だった時代に、ここでは5銭で本格的な一杯を提供。「豪華な雰囲気の中、ハイカラな飲み物が飲めるなんて!」とたちまち時代を席巻する店となる。この破格値には理由がある。当時サンパウロ州政庁は、年間1000俵の珈琲豆を無償提供する代わりに、日本でのブラジルコーヒーの普及を依頼。豆代がない分、安く提供できた。だからこそ、この店には幅広い客層が訪れた。

文化人や新聞記者、大学生までが集まり、当時は1日4000杯ものコーヒーが注文された。銀座でブラジルコーヒーを愉しむことが「銀ブラ」の語源だという説もある。そんな名店は、今もその大衆性を貫く。朝は常連客の朝食、昼はビジネスパーソンのコーヒー、夕方には出勤前の黒服やホステスさんに軽食を……。銀座で働くすべてのゲストを110年間変わらずに見守っている。

〈カフェーパウリスタ〉
住所:東京都中央区銀座8-9-16 長崎センタービル1F|〈地図〉
TEL:03-3572-6160
営業時間:9:00~20:00(モーニング~11:30)、日祝11:30~19:00 ※2階席は12:00~ 
定休日:無休
席数:100席

3.〈トリコロール 本店〉銀座に異国の風を呼び込むクラシカルで静謐なカフェ。

昭和11年、コーヒー普及のため〈木村コーヒー店〉(現キーコーヒー)の創業者が作ったこの店は、ガラス張りの窓に絵がペイントされたり、螺ら旋せん階段がある洗練された店だった。ここには往航帰りの画家や文士などが集まり、いわば銀座のサロン的存在だったようだ。戦後すぐに復興した2代目の店舗も白壁が印象的なモダンな造りで、画家・浜田泰介が銀座百景のひとつに描いたほど。現在の店舗は昭和57年に改装された欧風建築。

英国の老舗〈ウィリアム・サックス社〉のガス灯が目印の外観は、銀座にあって異国情緒を醸し出している。そんな店内でいただけるアンティークブレンドは、中南米の高山で収穫された豆をネルドリップで丁寧に淹れた名物。これを抽出するのは技術や知識面でも認められたコーヒー抽出技術者のみだ。エクレアやアップルパイなど力作も多数。カフェ文化を優雅に再現した店には、特別な空気が流れている。

〈トリコロール 本店〉
アップルパイのみ3日前までに予約すればテイクアウトもOK。ホール3,500円で1日5台限定。
住所:東京都中央区銀座5-9-17|〈地図〉
TEL:03-3571-1811
営業時間:8:00~18:00
定休日:無休
席数:50席

photo : Kotori Kawashima, Akira Yamaguchi text : Kimiko Yamada edit : Kana Umehara

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