【佐賀県】海と生きる街、唐津へ。食も歴史も巡り尽す欲張り旅

【佐賀県】海と生きる街、唐津へ。食も歴史も巡り尽す欲張り旅
【佐賀県】海と生きる街、唐津へ。食も歴史も巡り尽す欲張り旅
TRAVEL 2026.07.10
「おいしい海鮮と、豊かな海に抱かれたい」と東京から飛び出し、向かったのは佐賀県を代表する海の街、唐津・呼子エリア。漁港の朝市や、名物「イカの活き造り」の絶品ランチ、玄界灘の息吹を感じる絶景など、海の恵みを存分に感じるスポットにも癒されながら、歴史ある城跡や窯元、唐津の海の未来を考える最新施設まで。余すことなく巡った、初めての佐賀1泊2日の旅。
text&photo_Ami Hanashima

1日目:潮風に導かれながら、福岡から唐津へ

【10:00 福岡空港を出発】

車で福岡市から糸島へと海沿いを進み、わずか1時間ほどで唐津エリアへ。道中、唐津湾の沿岸に連なっていたのは、日本三大松原のひとつ、虹の松原だ。この日はあいにくの雨模様だったが、車窓いっぱいに広がる約100万本のクロマツの景色は圧巻の一言に尽きる。

【12:00 話題の最新ミュージアム〈PLA PLA〉へ】

まず訪れたのは、6月に開業したばかりの最新施設〈世界海洋プラスチックプランニングセンター〉(愛称PLA PLA)。玄界灘と佐賀の島々を見渡せる波戸岬海浜公園内にあるここは、海洋プラスチック問題をテーマにした世界初となる体験型のミュージアム&ラボラトリーだ。

施設がある波戸岬などの玄界灘をはじめ、九州北部エリアは深刻な海洋プラスチック問題に直面している。海流や冬の季節風などの影響により国内外から大量のごみが押し寄せ、漁業や美しい環境を脅かしているのが現状だ。

問題はそれだけにとどまらない。海を漂うプラスチックは消えることなく微細化し、生態系の食物連鎖に入り込む。プランクトンや小魚がそれを食べ、最終的にその魚を人間が口にする───私たちは知らず知らずのうちに、自らの体内にマイクロプラスチックを摂取しているのだ。

こうした事実を、展示だけで終わらせないのが〈PLA PLA〉最大の特徴。海洋プラスチックの回収・分別・再生のプロセスをリアルに体感し、海と人とのつながりを学べる実践的な拠点として機能している。

展示の見学後には、海洋プラスチックの再生原料を使ったワークショップに参加。玄界灘の名物・イカのチャーム作りに挑戦してみた。

〈世界海洋プラスチックプランニングセンター〉(愛称PLA PLA)。
どれも鮮やかで映える色だが、ペットボトルのパッケージや商品ラベルのごみなどを色別に分けて再利用したそう。

【14:00 カフェで絶品サンドとコーヒーを】

遅めの昼食を兼ねて、施設横にある〈had COFFEE&SEA〉でひと休み。ここは地元の焙煎士が“海”をテーマに仕立てたスペシャルティコーヒーを楽しめるカフェ。雑味が少なく、まさに海のようにすっきり凛としたコーヒーと一緒に楽しみたいのが、地元の旬の食材を使ったサンドデザートだ。

「佐賀は食の宝庫ながら、日の目を見ない食材も多い。少しでもその可能性を引き出して価値あるものに変えていきたい」と語るオーナー・平川秀一さんの言葉を体現するように、主役に据えられているのは規格外や市場に出回りにくい食材ばかり。何気ないメニューを通じて、地域と食が織りなす循環をカジュアルに感じられる。

information
世界海洋プラスチックプランニングセンター
世界海洋プラスチックプランニングセンター

住所:佐賀県唐津市鎮西町波戸720-1
TEL:0955-53-8572
開館時間:9:00〜17:00
HPhttps://pla2.jp/

【15:30 波戸岬と玄界海中展望塔へお散歩】

唐津市の最北端に位置する波戸岬(はどみさき)と、その先に佇む玄界海中展望塔は、美しい玄界灘の大パノラマと豊かな海の生態系を一度に楽しめる観光スポットだ。雨足は変わらず強かったが、お腹も満たされたので散歩がてら行ってみることに。

展望塔の螺旋階段をひたすら降りた先にあるのは、水深7mに位置する海中展望室。360度配置された海中窓を覗き込めば、玄界灘の荒波に抗うように力強く泳ぐ魚たちが目と鼻の先に迫るほど。

波戸岬と玄界海中展望塔
この日は、メジナやイシダイなどが顔を見せた。餌付けではなく、潮の流れや季節によってやってくる魚の姿をリアルタイムで追いかけられるのが楽しい。
information
玄海海中展望塔
玄海海中展望塔

住所:佐賀県唐津市鎮西町波戸
TEL:090-3464-5337
開館時間:9:00〜18:00(10月から3月は〜17時)
HPhttps://hadomisaki.jp/

【17:00 海を一望できる宿〈おんくり唐津〉に到着】

 海を一望できる宿〈おんくり唐津〉

宿は、虹の松原近くにあるビーチフロントリゾート〈おんくり唐津〉へ。佐賀県の人気温泉ホテルブランド〈おんくり〉が、唐津の老舗旅館〈魚半〉(うおはん)の跡地を引き継ぎリニューアル。2025年7月にグランドオープンを迎えたばかりだ。なにより、浜崎海岸の目の前という好立地。玄界灘を一望できるとあって今回の旅で泊まれるのを心待ちにしていた。

ロビー横にはセレクトショップもあり、九州をはじめとする銘品がずらり。有明海苔などローカルな手土産から、焼き物といった少し上質なクラフトまで。つい時間を忘れてお土産選びに夢中になってしまった。

〈おんくり唐津〉の客室は、嬉しいことに全27室がオーシャンビュー。今回は和室タイプの「ビーチフロントバス ジャパニーズルーム」に宿泊した。部屋に入ると、目に飛び込んできたのは壁一面大きな窓。そしてその先に広がる玄界灘のブルー! 穏やかな波の音と、この絶景を独り占めしながらインフィニティバスに浸かる贅沢さといったら…想像しただけで、長旅の疲れも瞬く間に吹き飛んでしまう。

 海を一望できる宿〈おんくり唐津〉
information
おんくり唐津
おんくり唐津

住所:佐賀県唐津市浜玉町浜崎1669-55
TEL:095-556-6234
IN/OUT:15:00/11:00
HPhttps://oncri-karatsu.com/

【19:00 〈山茂〉で旨い魚と佐賀の美酒に酔う】

地元の人々や食通たちが「魚を食べるならここ」と太鼓判を押すのが、JR唐津駅すぐの〈活魚料理 山茂〉。店主が目利きで仕入れる地魚は店内の生け簀から揚げてすぐ捌くため、刺身から焼き魚あら炊きまで抜群の鮮度が宿っていた。これまで多くの常連客を唸らせてきたのも頷ける。唐津の海の恵みを堪能するならもってこい、な名店に出会えた嬉しさを噛みしめて、日本酒もするする進んだ。

JR唐津駅すぐの〈活魚料理 山茂〉
コースの〆は、あら(クエ)炊き。九州の甘辛い醤油でじっくりと煮込まれたぷるぷるの身と根菜には、旨味たっぷりの汁が染み込んでいた。思わず白米が欲しくなる美味しさで感服。
information
山茂
山茂

住所:佐賀県唐津市紺屋町1674
TEL:0955-73-0201
営業時間:17:00〜22:00
Instagram@yamashige_karatsu

2日目:朝市、神秘な洞窟、イカ活き造り…唐津の“いいとこ取り”スポットを満喫

【6:00 浜崎海岸をお散歩】

浜崎海岸

初日の出に期待したが、この日も太陽は雲に隠れて顔をのぞかせず。せっかく早く起きたので、朝食の時間まで浜崎海岸をのんびり散歩することに。少しひんやりとした朝に、波音を聴きながら歩く時間はなんだか心地よく、すっかり目は冴えてお腹も空いてきた。

浜崎海岸
対岸の山裾を走る、JR筑肥線を発見。佐賀の電車旅もいつかしてみたい。

【7:00 釜炊きご飯と楽しむ贅沢な朝食】

宿の1階〈鮨・日本料理 暦〉で供されるのは、唐津の豊かな自然が育んだ食材をギュッと詰め込んだ和朝食御膳。壱のお重には、槍烏賊の花造り、まぐろやかんぱちなど玄界灘の鮮魚の小鉢が並ぶ。まずはそのまま刺身や胡麻だれで、〆は佐賀県産夢しずくの釜炊きご飯にのせ、特製出汁を注いで胡麻和え茶漬けにしていただいた。旅の朝にふさわしい滋味深い朝食! 今日もなんだか素敵な旅ができそうな気がしてきた。

〈鮨・日本料理 暦〉
ほかにも佐賀のブランド豚・金星豚の角煮や、おんくり唐津仕込みの明太子なども。毎日でもいただきたい理想の朝食。

【9:00 歴史ある呼子朝市へ】

宿を後にし、この日最初に向かったのは呼子町で大正時代から続く呼子朝市。石川県の輪島、岐阜県の高山と並ぶ日本三大朝市の一つに数えられているそうだ。呼子港の東側にある約200mの朝市通りが歩行者天国となり、多くの露店や商店で活気に溢れる名所として知られている。

とはいえ、1日目に続きあいにくの雨模様&平日だったのもあり、朝市は少し落ち着いた様子。それでもイカの串焼きなどの食べ歩きグルメや地元で獲れた野菜、果物も並び、飾らない地元の日常にお邪魔させてもらったようなローカルな雰囲気を味わえた。

information
呼子朝市
呼子朝市

住所:佐賀県唐津市呼子町呼子4177
TEL:0955-82-3426(呼子観光案内所)
出店時間:7:30〜12:00
HPhttps://yobuko-asaichi.saga.jp/

途中、〈鯨組主 中尾家屋敷〉を発見。ここは、江戸時代から明治初頭にかけての約170年間、呼子を拠点に捕鯨業を営み巨万の富を築いた鯨組主(くじらくみぬし)中尾家の邸宅で、現在は県の重要文化財に指定されているそうだ。主屋は見事な松の太柱が当時のまま残されていて、往時の繁栄ぶりをしっかり伺える。

敷地内の勘定場跡などの展示スペースでは、当時の捕鯨の様子を描いた絵図「小川島鯨鯢合戦」(おがわしまげいげいかっせん)をはじめ、中尾家に伝わる貴重な古文書捕鯨道具などの歴史資料を見ることができた。

information
鯨組主
鯨組主 中尾家屋敷

住所:佐賀県唐津市呼子町呼子3750-3
TEL:0955-820-309
開館時間:8:45~17:00
Facebookhttps://www.facebook.com/kujiranakaoke

【10:30 遊覧船で天然記念物・七ツ釜の海食洞窟を探検】

せっかくこの街に来たのなら、賑やかで美味しいものが揃う朝市を巡るだけではもったいない。〈マリンパル呼子〉の遊覧船「イカ丸」に乗って出かける七ツ釜もまた、絶対に訪れるべき場所である。実は船が少し苦手だったが、玄界灘の荒波が途方もない歳月をかけて創り出したという海の芸術なるものをこの目で確かめたく、気合いを入れていざ乗船。

七ツ釜とは、玄界灘の荒波によって削られた7つの巨大な洞窟(海蝕洞)が連なる景勝地だ。その特徴のひとつが、火山活動のマグマが冷え固まってできた幾何学的な岩肌だという。港を出発して10分ほどで、早くもその全貌が姿を現した。

〈マリンパル呼子〉
存在感を放つ黒い断崖。よく見ると巨大な柱を束ねたような奇妙な岩肌になっている。
〈マリンパル呼子〉
「柱状節理」と呼ばれ、溶岩が冷えて固まる際に五・六角形の規則正しい柱状の割れ目となり、こうして連なっているそうだ。
〈マリンパル呼子〉
象の横顔のように削られた場所も。鼻の先付近にはなんと釣りをしているおじさん(!) この周辺はフィッシングスポットらしい。

圧倒的な自然の造形美に開いた口が塞がらないまま、さらに奥へと進むといよいよ七ツ釜が見えてきた。イカ丸ではダイナミックな断崖に近づくだけでなく、天候や波の条件が良ければ洞窟内へと突入してくれる。この日は船体が入るギリギリのところまで船を寄せてくれた。

〈マリンパル呼子〉
荒波に打ち続けられてできた自然の海食洞窟。深くえぐられ、ぽっかり開いた7つの穴の上は遊歩道になっていて展望台もある。

往復で40分ほどの乗船だったが、うねる波が岩にぶつかる轟音のなか間近で見れば見るほど、その迫力自然の神秘を肌で実感した。まさに、佐賀の海が誇る最高の芸術作品だと思う。

information
七ツ釜周遊
七ツ釜周遊

呼子港発着の遊覧船「マリンパル呼子」より乗船。1時間毎に出港、所要時間約40分。https://marinepal-yobuko.co.jp/ikamaru.html

【11:30 〈玄海〉でイカの活き造りに舌鼓】

実は佐賀の旅が決まった時から、頭の中はあの透明な姿でいっぱいだった。佐賀といえばイカ、イカといえば呼子、イカしゅうまい…そして活き造りである。今回は、イカの活き造り発祥のお魚処〈玄海〉へお邪魔した。

〈玄海〉でイカの活き造りに舌鼓
店に入ると、隣の玄界灘の海水を直接引いた大小15面の生け簀がバーン!と広がり、スイスイ元気に泳ぐ剣先イカがお目見え。

この時期は、身が厚く濃厚な甘みが特徴の剣先イカ(呼子ではヤリイカと呼んでいる)が旬。注文後に先ほどの生け簀から上げて調理されるとのことで、あの活き活きと泳いでいる姿を見たら胸を膨らませずにはいられない。

そして待ち焦がれた本日の主役とご対面! 海のみずみずしさをそのまま纏ったような透明感に驚きながら、一口食べるとコリコリとした小気味良い歯ごたえ。噛みしめるたびに広がる官能的なまでの濃厚な甘み。この食感と鮮度を生み出す職人の包丁さばきにも惚れ惚れした瞬間だった。

〈玄海〉でイカの活き造りに舌鼓
運ばれてきた時にもまだ元気に動いていたイカ達にそっと感謝して。そして「イカは白い」の概念が覆された。
〈玄海〉でイカの活き造りに舌鼓
残った頭やゲソは、あとづくりで天ぷらにしていただいた。揚げるとフワッと軽く、身はより濃厚にしまって箸が止まらないおいしさ。
information
玄海
玄海

住所:佐賀県唐津市呼子町殿ノ浦508-3
TEL:0955-82-3913
営業時間:11:00~17:00(火曜11:00〜15:30)
HPhttps://yobuko-genkai.co.jp/

【13:00 名護屋城跡&名護屋城博物館を見学】

旅といえば、その土地の歴史を巡ることも醍醐味。〈名護屋城博物館〉は、天下人・豊臣秀吉の朝鮮出兵の拠点となった名護屋城跡に隣接しており、日本列島と朝鮮半島との数千年にわたる長い交流史を展示している。

そして、秀吉ゆかりの「黄金の茶室」が忠実に復元公開されているのも見どころの一つだ。緊迫した戦争の裏で最高峰の茶の湯文化が政治に利用されていたという、当時の息づかいや戦国時代の奥深さを象徴する場所だ。これだけの見応えがありながら常設展示はなんと入館無料。日本の歴史が大きく動いた舞台を佐賀でじっくり巡るのも良いかもしれない。

information
名護屋城博物館
名護屋城博物館

住所:佐賀県唐津市鎮西町名護屋1931-3
TEL:0955-824-905
開館時間:9:00~17:00
HPhttps://saga-museum.jp/nagoya/

【14:30 唐津焼の窯元で絵付け体験】

佐賀・唐津を巡る旅の最後に訪れたのは、鏡山の麓にひっそりと佇む唐津焼の窯元〈鏡山窯〉(きょうざんがま)。初代・井上東也氏が、桃山時代の古唐津(桃山から江戸時代初期にかけて、現在の佐賀・長崎県周辺で焼かれた陶器)の美しさを現代に蘇らせたという、歴史と伝統ある名窯だ。現在は2代目の井上公之氏が継いでいる。

唐津焼は、楽焼や萩焼とともに「一楽、二萩、三唐津」と称されるほど、古くから茶人たちに愛されてきた日本を代表する焼き物だという。飾るための器ではなく、料理を盛り付ける、お茶を注ぐなど“使うことで完成する(器を育てる)”と言われるほど。何を語らずとも、素朴で力強い美しさが見て取れた。土地に根づく手仕事に触れ、その思い出を形に残すのも粋だと思い、今回はこちらの工房で絵付け体験をお願いすることに。

唐津焼には色々な装飾技法があるが、ここでは伝統的な絵唐津に挑戦。程良い緊張感の中、粗い土のぬくもりが残る器に触れながら、鉄釉(てつゆう)と呼ばれる絵の具のようなものを筆にとり思い思いに描いてみた。

玄界灘の波をイメージして、すーっと筆を走らせてみた。が、筆の強弱が本当に難しい。
唐津焼の窯元〈鏡山窯〉
筆に迷いが出そうだったので、勢いそのままに1分ほどで完成

旅の途中で見た唐津の美しい海の景色をぼんやり思い浮かべながら、一筆一筆に想いを込める時間なんだか心地がよかった。描き上がった器は他の作品と一緒に窯に入れて焼き上げられ、2〜3か月ほどで届く。どんな仕上がりになっているのか、今からもう待ち遠しい。

information
鏡山窯
鏡山窯

住所:佐賀県唐津市鏡4614-1
TEL:0955-77-2131
開館時間:工房9:00~17:00、ギャラリー(直営販売店)9:00〜17:30
HPhttps://kyouzan.co.jp/

【18:00 福岡→羽田へ】

初めての佐賀・唐津の旅は、一言では語り尽くせないほど多彩な表情に出会う旅だった。そしていつもそこには豊かな「海」の存在があり、五感でその土地の物語を感じさせてくれる場所がそこかしこに息づいていた気がする。旅を終えた今も、あの心安らぐ潮風の余韻が残っている。佐賀、また行く日まで!

Videos

Pick Up