俳優・桐谷美玲さんにインタビュー。
HANAKO PEOPLE story#15

LEARN 2023.07.30

日々の記憶や感情、自らを取り巻く物事の中から、気になる3つのキーワードについてインタビュー。パーソナルなストーリーが紡がれます。第15回は、俳優・桐谷美玲さんが登場。

Theme #1 時間の価値

桐谷美玲さん アンパンマン

今、自分の時間のほとんどを占めているのは“子育て”です。2歳の子どもに対して、最も時間を使っているし、細かく神経を使っていると思います。出産や子育ては、産むときにどれだけ大変かという話はよく耳にしてきましたし、相応の心構えを持って臨んだけれど、産んだあとの大変さについてはなぜかあまり耳にすることがなくて……。子育てがこんなにも大変なものだとは誰も教えてくれず、毎日がとても忙しない(笑)。目の前のことをひとつクリアしたら終わりではなく、月齢が変わればまた新たな課題がどんどん押し寄せてくる。きっとこれからもその繰り返しなんでしょうけど、ただ寝顔を見ているだけで、すべてとは言わないけれど、救われたような気持ちになります。

最近は、意思疎通ができるようになってきて、「この子もいろんなことを考えながら生きているんだなぁ」なんてしみじみすることも。意思が強めで、やりたいことが明確で、それを絶対に曲げない。「お風呂にはこのオモチャを持っていく」「ゴハンは今じゃない」と、もちろん内容は2歳児なんですが、子どもが何がなんでも貫きたい部分を理解した上で、「じゃあこうしてみる?」と提案してみると、お互いが心地よくいられる。それが最近の発見です。私の母には「昔のあなたを見ているようだ」と言われるくらい、私のちっちゃい頃にそっくりらしく少々複雑ですが。でも、それならばもう諦めるしかないと腹をくくってます(笑)。同じように、夫に似ている一面を見せることもあるので、ちゃんとミックスされているんだなと不思議な気持ちにも。
 
100%自分だけの時間というのが難しいからこそ、

なんてことなかった30分がとても尊く、ありふれた日常さえ貴重だと再確認。

いかにして自分の時間を生み出すかやりくりして、じゃあその貴重な30分に何をするのか、それが勝負どころ。例えば、ゆっくりお茶を淹れて飲む30分にするか?夕食の下ごしらえをする30分にするか?ただ、絶対に何かしたほうがいいとわかっているのに、疲れすぎて体が動かないなんて日もしばしばです。そうやって毎日、自分の中でせめぎ合っています。

もちろん美容院や買い物に行ったり、友達と会ったりする日もたまにはあるので、そのときだけは思いっきり楽しむ。メリハリがあるからストレスを溜めずにいられる。それに、子育てをしていると日々ちょっとずつ子どもの成長を目の当たりにする。どこで覚えたのっていう言葉を使ったり、昨日まで歌えなかった歌が歌えるようになったり、先日は急に前転をしはじめて慌てました。子どもの世界もどんどん広がっていく。そんなひとつひとつの瞬間を大切に、見逃さずにいたいですね。

Theme #2 外食

自分にとって“当たり前だったこと”に価値を見出すようになった今、私の中で元気になれるスイッチはおいしいゴハン。自分ではなく誰かに作ってもらえることに、本当に本当に幸せを感じます。普段の食卓には辛いものは出せないし、子どもがかなり偏食なので何を作っても残されたりしてヘコむことも。そんな日々を送っていると、たまに外で食べるゴハンは自分の好きなもので、かつ本当においしいものを妥協せずに食べなければと集中。

せっかくカロリーを摂るのなら、本当においしいもので摂りたいんです!

一人での食事ならカウンターでコース料理を自分のペースで楽しみたいですね。以前は、それが特別なことだとは思っていなかったんですが、今となっては貴重な一食なので、無駄打ちは決してしないと誓っています。

本当に好きなものだったり、大切な時間、これだけは譲れないものなど、改めて自分を知る機会も増えました。認識はしていたけど、よりシンプルにくっきり見えてきた感覚があります。私は自分のことをすごくインドアな人間だと思っていたんですが、実は少しでも外に出ないとリフレッシュできないタイプだったとか、ファッションやメイクに関しても、後回しになって楽しめないことにすごくもどかしさを感じるとか。本来好きなものに対して、自分が思っていた以上に愛情を持っていたし、かけがえのないものだったと気付かされることがたくさんあります。それらに触れられる瞬間は本当に鮮やかで、心が満たされるんです。

Theme #3 声の演技

桐谷美玲さん 2

私の声って、変な声だなと思っていて、♭(フラット)がついている声っていうのかな?半音下がるマイナーコードな声で「特徴的ですね」とよく言われます。今回、映画『それいけ! アンパンマン ロボリィとぽかぽかプレゼント』で久々に声優を務めさせていただき、お芝居自体久々な上に、声だけの表現ということで緊張でいっぱい。私が演じたのは、ロボリィという生まれたばかりのロボットで、まだ何も知らず天真爛漫なキャラクター。いつだって自分が一番だと思っている子なんですが、アンパンマンたちと触れ合ううちに心が成長していく。台本を読んでいるときに、その姿にキュンとして心が動かされました。子どももアンパンマンが大好きなので、「ママ、すごいでしょ?」といつか自慢できたら……なんて引き受けましたが、セリフがたくさんあって一瞬後悔したのも事実(笑)。

声のお芝居は、自分が思っている以上にオーバーに表現しないと伝わりにくく、表情や身振手振りがなく、すべての表現が“声のみ”という難しさに苦戦しました。ロボリィは特に元気な女の子で、ジャンプをしたり、攻撃をよけたりするシーンが満載なので息遣いが重要。また、アンパンマンの声優のみなさんはかなり声量があると伺ったので、その点を踏まえて、自分が想像する声に近づけるために事前に自分の声を録音して、聞いてみて…を繰り返して役作りをしました。プロではないので、キャラクターにあわせて声を作ることはできないけど、

できないからこそ理想に近づける努力を重ねるしかないな、って。

圧倒的に難しさが先に立つけれど、普段なら絶対に出さないような声を出して、枠から飛び出したような表現ができたことはすごく楽しかったです。

今、わくわくしているのはこの作品で子どもの映画館デビューをすること。上映時間が約1時間で、映画館内の照明は明るめなので、初めての映画にぴったり。親子に寄り添った作品に携われたことがうれしいですし、デビューから15年以上ずっと応援してくれるファンの方たちも親になっている人が多いので、お子さんと一緒にこの作品を楽しんでほしいですね。

この2年ほどは子育てが中心になって、仕事内容も変化してきました。先日、何年ぶりかに対面イベントをやったんですが、人が来てくれるのかすごく不安で。いざスタートすると、顔見知りのコたちが変わらずに集まってくれて、いただいたお手紙には「美玲ちゃんが自分らしく、マイペースにやっている姿を見られるのがすごくうれしいから、そのまま楽しくやってください」と書かれていました。テレビに出る機会が減っても、直接会えるイベントが少なくても、それでも私が楽しくやっているならそれでいい、と。不安になったり、迷ったりすることが多いからこそ、無条件で全肯定してくれるファンのみなさんに励まされています。

Information

映画『それいけ!アンパンマン ロボリィとぽかぽかプレゼント』

昭和・平成・令和と3つの時代を通じて愛されてきたアンパンマン。映画&テレビ35周年、絵本『あんぱんまん』誕生50周年記念作品となる本作では、思いやりと笑顔の大切さを描く。6月30日(金)より全国ロードショー。

photo : Mariko Kobayashi styling : Chie Takeoka hair & make : Ai Inuki (agee) text : Hazuki Nagamine
ワンピース61,600円、レースキャミソール38,500円(共にアキラナカ|ハルミショールーム TEL:03-6433-5395)

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