コーヒー好きが語るお茶の魅力。
( INTERVIEW WITH COFFEE LOVERS ) LEARN 2023.05.15

コーヒーと合わせたり、スイーツに取り入れたり。コーヒーの器具をお茶に利用したり。
コーヒーとお茶。コーヒー好きに、日本茶に惹かれる理由を聞いてみた。

日本のお茶の世界をもっと知ろう。

何気なく飲んでいる日本のお茶。その世界は在来茶にブレンド茶など進化を遂げている。
お茶の淹れ方を見直したり、注目の品種を試したり。新たな日本のお茶の世界を体験してはどうだろう。

Satén japanese tea|小山和裕

”コーヒーの器具から日本茶の味わいを抽出”
東京・西荻窪に5年前にオープンした〈Satén japanese tea〉。オープンと同時にお茶をテイクアウトする人、トーストとお茶でくつろぐ人がやってきてにぎわう、今や日本茶のカフェとして知られた存在だ。実はオーナーの小山和裕さんは、カフェの世界に入る前はコーヒーの世界に足を踏み入れていたという。日本茶のセミナーに顔を出してみると、生産地による味の違い、茶葉から味を抽出することなど、コーヒーと共通点があることに気づいた。そこで目をつけたのがコーヒーの器具だった。

「旨み、香りなどよりよい抽出をすることを考えてのことです」と小山さん。例えばコーヒーグラインダーで粉にしたほうじ茶を、エアロプレスを使って抽出しラテを作るなど、効率のよさを考えるとコーヒーの器具と日本茶の相性はよかった。「家庭でお茶を楽しむのなら必要ないと思いますが、お客様に安定した味のお茶を提供するためには、コーヒー器具が最適でした」
 
今ではコーヒードリッパーブランドとして知られる〈ORIGAMI〉とコラボして、日本茶ドリッパーを開発するように。「適度な大きさがなかったので、茶せんで抹茶ラテを作るための片口抹茶碗も作ってもらいました」。コーヒー専門のメーカーも日本茶の可能性に注目しているようだ。

BONGEN COFFEE |白石航

”日常を豊かにする日本茶の奥深さに惹かれる”
コーヒーショップとしてはめずらしい、和の設えに心がなごむ。漢字で「盆源珈琲」と書くように、焼き杉のカウンターの奥で目を引くのが美しい盆栽。日本人のアイデンティティとして“和の心”を大切にするオーナーの白石航さんは、店でもほうじ茶や抹茶をあつかう日本茶愛好家でもある。

「コーヒーと日本茶には共通点が多く、たとえば産地や品種によってその個性が異なることや、お湯の温度や量で味が大きく変わる点も似ています。カップや湯呑みに注いで上澄みを飲むという味見の方法は完全に同じ。僕はリラックスしたいときに上品な甘みと深みがある掛川茶を飲むのが好きで、新茶が出る季節になると、新しいコーヒー豆に出合ったときと同じくらいわくわくします(笑)。コーヒー豆は実、お茶は葉。そうした自然の実りをいただくことを大切に丁寧に伝えていきたいです」

LIT COFFEE & TEA STAND|吉田直矢

”苦みや渋みといったお茶の個性をポジティブに表現”
東京・芝の商店街に店を出すと決まったときから「日本茶も気軽に楽しめるカフェができたらと思っていた」と吉田直矢さん。生豆の個性を楽しみたいからコーヒーは絶対にブラック派。日本茶も同様に、茶葉の風味や香りを楽しんでもらえるようにと工夫を凝らす。

「祖母がお茶が好きだったので、子どもの頃から日本茶の苦みや渋みも“らしさ”だと思っていました。茶葉の品質や温度にもこだわって、日本茶の多彩な魅力を感じてもらえたらうれしいです」
 
人気のほうじ茶エスプレッソラテには静岡の〈カネイ一言製茶〉で焙煎されたオリジナルのほうじ茶を使用。その軽やかな焙煎香を最大に引き出せるようにとエスプレッソマシーンで抽出する。高温すぎると苦みが強くなるため、届いた茶葉を見ながら設定温度をその都度変える。日本茶愛が伝わる一杯で、癒しの時間を過ごしたい。

CLEHA COFFEE & TEAROOM|佐野亮介・亜也加

”コーヒーと日本茶の共通項を追求し続ける”
今年1月に開店した〈CLEHA COFFEE & TEAROOM〉のメニューはとても潔い。なにしろスコンと飲み物のセットのみなのだ。

「喜んでもらえることを仕事にしたいと考えたときに、どちらも好きなコーヒーとスコンの店を作ろうと」と店主の佐野亮介さん。亮介さんはコーヒー専門店と抹茶スイーツの店でも経験を積んだ経歴の持ち主。亜也加さんもまた別の専門店でコーヒーに携わってきた。「お茶の時間は日常から解放されて、自分に優しくなれるひととき。必要なのは空間と、食べ物と飲み物」と亮介さん。そこにコーヒーや紅茶、日本茶という垣根は不要なのかもしれない。

「静岡出身ということもあり日本茶はとても身近な存在。日本茶の魅力は良質な渋みです。ティーライクなコーヒーを追求するのと同時に、これから先は旨みのある日本茶とスコンの提案もできれば」

LOU|加藤健宏

”日本茶を飲みながら心と頭をオフモードに”
日本のインディペンデント・コーヒーショップの先駆けとしても知られる東京・幡ヶ谷〈PADDLERSCOFFEE〉に次いで、中野にコーヒーやナチュラルワインを楽しめる〈LOU〉を開いた加藤健宏さん。“コーヒーの専門家”として、頭のなかにはつねにコーヒーがあるが、気分転換したいときは“仕事”を離れて徳島の阿波晩茶を飲むのが息抜きになっているという。

「四国には古くから発酵茶の文化があり、阿波晩茶は無形民俗文化財にも指定されています。全国的にも乳酸菌で発酵させた日本茶というのはめずらしいのですが、口当たりがまろやかで旨みが濃い。カフェインが少ないので、夜のリラックスタイムに飲むのが習慣です」と話す。心のスイッチをゆっくり切り替えるために。コーヒーのプロが日本茶を愛する理由がそこにある。

photo : Kenya Abe (Satén), Taro Ota, Yoshiko Watanabe (CLEHA) text : Keiko Kodera, Mako Yamato (CLEHA)

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