“愛情と熱量”で喫茶文化の継承を後押し。 【京都】1963年創業の喫茶店〈喫茶マドラグ〉へ。名物メニューも看板も、当時の輝きそのままに。 LEARN 2021.09.02

明治末期に西洋の文化が流入し、全国に先駆けて濃密な喫茶文化が開花した京都。〈イノダコーヒ〉のように創業80年を経て色褪せない店がある一方、京都の「喫茶去」を代表する店の廃業も相次いでいる。が、ここ数年は若手有志による継承が始動。親族以外への引き継ぎを手助けするチームも現れ、独自の継承スタイルが築かれているのが特徴だ。今回は烏丸御池〈喫茶マドラグ〉をご紹介します。8月27日(金)発売 Hanako1200号「好きなのは、京都らしさ。」よりお届け。

困難を伴う喫茶文化の継承を自身の経験からサポート。

〈喫茶マドラグ〉

山崎三四郎裕宗(やまざきさんしろうひろたか)さんが1963年創業の喫茶店〈セブン〉を引き継ぎ、〈喫茶マドラグ〉をオープンして早10年。圧倒的なクオリティで洋食店〈コロナ〉の玉子サンドを復刻し、その後も京都の喫茶シーンを牽引する存在として、勢いは増すばかり。そんな山崎さんが相次ぐ名喫茶の閉店を憂い、もどかしい思いで立ち上げたのが「京都喫茶文化遺産チーム」だ。店主の高齢化や後継者問題など、さまざまな困難を抱える喫茶店をサポートし、若い担い手へと繋げる活動を行っている。

しかし継承には課題も多い。「一番のハードルは常連さんの記憶。乗り越えるには相当な愛情と熱量が必要」だと釘を刺す。実際に“美化された味の記憶”と戦ってきた彼だから言える言葉だろう。「ただでさえ重い荷物。愛情がなければ背負えない」。だからこそ、それを背負う覚悟のある人を応援したいのだと。先月、チームがサポートする〈珈琲 陣〉が〈INADA COFFEE〉へと引き継がれた。約50年続いた喫茶店を「愛情と熱量」がどのように導くのか。ぜひその目で確かめてほしい。

うけついだものたち。
【MENU】懐かしの喫茶メニューを現代風にアップデート。

【TABLEWARE】在りし日々を偲ばせる使い込まれた品々。

シュガーポットやミルクピッチャー、トレーなど、ステンレス製品の多くは廃業した純喫茶のお下がり。2006年閉店の名曲喫茶〈みゅーず〉から譲り受けたカトラリーやグラス、〈セブン〉の什器も現役だ。
シュガーポットやミルクピッチャー、トレーなど、ステンレス製品の多くは廃業した純喫茶のお下がり。2006年閉店の名曲喫茶〈みゅーず〉から譲り受けたカトラリーやグラス、〈セブン〉の什器も現役だ。

【POSTER】店の変遷を見守ってきた50年前のポスター。

〈喫茶マドラグ〉

本と映画が好きだった初代店主で故人の山崎奈津美さんが選んだモノが〈マドラグ〉の個性を形づくる。

〈喫茶マドラグ〉

煙草のヤニ色に変色した外国文芸誌のポスターは、〈セブン〉の創業間もなくお客さんが持ち込んだもの。

〈喫茶マドラグ〉

昭和の純喫茶にカフェの要素をほどよくプラスした店。継承喫茶が注目されるきっかけとなった。今年3月には須磨店がオープン。
■京都府京都市中京区押小路通西洞院東入ル北側
■075-744-0067
■11:30~売り切れ次第終了(ランチ15:00LO)日休
■18席

(Hanako1200号掲載/photo : Yoshiko Watanabe, Haruka Kuwana text : Atsuko Suzuki, Aya Honjo, Mako Yamato)

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