花井悠希の朝パン日誌 楽しみをあたためて…〈comme’N〉 LEARN 2020.06.18

今回は群馬の名店〈comme'N‬(コム・ン)〉さんでお取り寄せした冷凍パンをご紹介させてください!〈comme'N‬〉さんは昨年「モンディアル ・デュパン」世界大会で優勝された憧れのお店。あれ?前回お取り寄せ疲れたとか言ってなかったっけ?とお気づきの皆様、ご名答。でもこちらはヨーイドン!システムじゃないのです。お忙しいときなのに、InstagramのDMでオーダーを受け付けてくれて発送のご連絡もくださり、丁寧な対応をして下さったおかげで、安心して届くのを待つことが出来ました。なのですが!その通販は5月末をもって残念ながら終了となってしまったのです。悲しみに暮れそうな所ですが、理由は新店舗の準備に入られるとのこと。現在〈comme'N‬〉さんは休業中。新店舗は8月中旬から9月頭あたりを目処に東京の九品仏駅前にオープンされるそう!これは楽しみです!!

なんだこれは!衝撃が走ります。「小さめサイズの食パンかな?」と、食パンを待ち受ける体制でスタンバイしていた私の舌と脳は途端にスパークしてしまいました。だって私の知っている食パンとは全く違う子が颯爽と現れたのです。いや、サクッと表面を齧ったところまではまだ勝手知ったる食パンの様子だったはず。そこからある瞬間を境に生地がへーんしん!液体に変わるのです。生地の甘みを口全体で感じるや否やとろりとテクスチャーが変化して広がります。まるでムースのような質感は初めての体験。この甘みとふわふわとジューシーな感じはブリオッシュにも近いかな?いや、でもやっぱり何にも形容はできません!ぜひ体験していただきたいです!

ふかふかとしゅわしゅわと。飲み物?くらい無抵抗にスルスルと喉を滑り落ちる生地。含まれる空気の粒は繊細で細かく、密度は高いのに構成する全てが柔らかいから、いとも容易く喉を通り抜けます。そして口に残される甘みが淡い夢を見させてくれたかのようにセンチメンタルな気持ちにさせてくれるんですよ(出た妄想癖)。何もつけなくても甘みのある生地はきっと、生でそのまま食べても美味しい。大人はもちろん、お子さまも大好きなはず。今回は冷凍のお取り寄せパンだったので生でそのままは叶わなかったのですが、お店が出来たら手で大胆にさいてトーストせずハフっといきたい。

表面の薫り高いチーズの香ばしさを抜けると、ぬんっと引っ張られます。引かれるままについていくとふわふわ生地に抱きしめられて、気がつけばあたりはすっかりトロトロに。こちらの生地もたまりません。外側はしっかり厚めの皮でカリッと、焼けたチーズと共に香ばしさを炸裂させますが、このね、チーズの香り方がまた上品なんですよ。華やかに薫り高いのに、決して大っぴらにしてないかんじ。カボチャが入っているからなのかそのチーズを穏やかにくるんで、奥ゆかしさを感じる香り立ちと、風味立ちになっています。リベイクでトロトロと緩んだチーズが生地の歩調に合わせて一緒になり、まったりとした速度で口溶けていきます。チーズなのにどこか物柔らかなパンに心が解れること間違いなしです。

一口齧ったら、顔も心もフニャッとほころんでしまいました。だってだって、こんなに甘やかされたの久しぶりなんですもの(どうした)。表面に散りばめられた黒豆(!?)は和菓子のような上品な甘さと芳ばしさを静かに放ちます。加えて、外側はさっくりしつつ内側はもちもちだから自ずと大福の妄想がふつふつと広がっていきます。それを知ってか知らずか絶えず側で微笑みかけてくれるのはきな粉。きな粉ペーストが練りこまれ、一時もきなこの香り高さが離れません。でも甘さはそこまで強くなく、ベースの生地の味わいにのってふわふわと届きます。さらにゴロゴロと入ったクルミが、森の香りを閉じ込めたみたいな香ばしさを畳み掛けてきます…。ね?思わず鼻を近づけて大きく深呼吸してみたくなるでしょう?

さっくりと歯が入り贅沢なチョコの甘さがぶわりとくると、白い金平糖のようなお砂糖の塊がシャリっと砕けるのを合図にさらなるご褒美が。ポテンシャルを最大限まで引き出されたくるみが香ばしさを高らかに叫び、そこにホワイトチョコレートのミルキーなコク、甘やかなチョコチップ。誰しもが美味しい!ってダイレクトに感じられる慣れ親しんだチョコレートの甘さがあるのに、決して単調にならず、むしろそれに照らされて沢山のこだわり一つずつが瞬くよう。ふわふわの生地の内側はまったりとしたチョコレートの潤いが閉じ込められて、この薄さの中に表面と内の温度差がある事に驚きます。親しみやすいのにこんなにもうっとりと酔わせてくれる。あなたは私のヒーローさ(←病)。

見てください、こちらの断面!たっぷり入った小松菜とクルミを掴んで離さない、たゆんたゆんに水分を抱えた内側。乾燥肌の私が嫉妬してしまうほどです(自虐)。潤いを携えたモチモチ心地は、きっとみんな嫉妬する。小松菜からはほんのり塩気、とろとろの内側の生地のどこからかチーズのような芳香も!?なので、さながらグラタンを食べているような錯覚に陥ります。クルミがコリッコリッとまたいいお仕事をしてくれるので、ついついサムズアップでお返事しました(何様)。

いやはや、本当にどの子も生地が好みすぎました。共通する性格はありながらも一つずつこちらをハッとさせてくれる個性の放ち方で、さてこの子はどんな子かな?って食べる前からワクワクさせてくれます。お店のInstagramを遡っていると、毎日さまざまな種類のパンが並んでいて、その豊富なバリエーションと日々変化するオリジナリティー溢れるラインナップに見ているだけでも心踊ります。
今回ご紹介させていただいたパンが新しいお店で並ぶのかわかりませんが、その日その時のパンとの出会いが、間違いなくトキめくものになるだろうって確信させてくれるパン屋さん。しばらくの間は、冷凍庫に大切に保管したパン達で(でももう無くなりそう。涙)新店舗のオープンを待ちたいと思います。あぁ、もうこうなったら九品仏に引っ越すしかないかな(←ストーカー)。

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