花井悠希の朝パン日誌 vol.53 聖地巡礼!?…〈パンストック〉

LEARN 2019.09.02

あれは3年前。〈博多座〉での公演で福岡に1ヶ月滞在していた頃です。暇を見つけては調べ、福岡のパン屋さんに出かけていた私。でも忙しさと車がないのもあって街中のパン屋さんにしかなかなか行けませんでした。営業時間と立地的にハードルが高くて、その時願っても叶わなかったあのお店。それこそが〈PAIN STOCK〉さんです。3年越しの想いを両手いっぱいずっしり抱えて(重いわ!)ついに行って参りました!

3年越しの想いを両手いっぱいずっしり抱えて…〈PAIN STOCK〉

福岡 PAIN STOCK

福岡県内だけでなく全国に〈パンストック〉さん卒のパン屋さんもあるほど、人気実力共に福岡パン界を牽引するお店。朝11時頃に到着するともうお店の前には行列がズラリ。グリーンで彩られた外観を見ながら、胸がドキドキしてきます。

福岡 PAIN STOCK

店内の天井にはドライフラワーが飾られ、木のテーブルに木のトレイで、なんとも落ち着く内装。こんなに人がたくさんいるのに『パンストックの世界』に迷い込んだような気分になれる不思議な魅力がありました。

みんな違ってみんないい。

「明太フランス」
「明太フランス」

パンストックで有名なパンといったらこちらの「明太フランス」は外せません。大人気のため買えるか不安でしたが、買えたーーー!!!なのに、せっかく撮った一本まるっとの写真を消してしまいました…。なので断面図のみです、すみません。買えた時点で運を全て使ってしまったんですね、そうですねきっと(ただの私のミス)。。

気を取り直しまして実食!一口目でノックアウトされました。これが世間にその名を轟かせている明太フランスなのか!と。パンと明太子の組み合わせはある程度どれも美味しいけども、違う。違うんですこの子は。初めて明太フランスを食べたのはいつだったか思い出せないけれど、その印象から5倍くらいパワーアップした明太フランスがここにあります。これが王者の風格ってやつですか!?まずちゅるちゅると口内を惑わすのは明太フィリング。明太子の生感覚な存在感とコク、トロッと口内へとろける移ろい、香り高く引きが強いもちっとコシのある生地、口内に香ばしく残る小麦の余韻、そのどこをとっても5割増し。惜しみなく入れられた明太フィリングが物語っています。出会い頭の美味しいインパクトが強烈で、目の覚めるような出会いを求めているあなたに届けたい(←誰)。

「イタリアの恵」
「イタリアの恵」

生ハム・クリームチーズを入れてプチトマトとフレッシュなバジルでカプレーゼをイメージ…ですって。タイトルから説明から見た目からオシャレさが漂うではありませんか。こんな小さな身体でこんなたくさん抱えて、えらいえらい(何様)

福岡 PAIN STOCK

ぱっくり半分に割るとなんとも美しい断面が現れました。しばしその美しさに敬意を評し拝みましょう。もちもちとした生地は柔らかく口内でくにゅくにゅと姿を変え、その中からクリームチーズの塊が寄り添うようにとろけていきます。そこにプチトマトが待ってましたとばかりにプチっと明るい旨味を弾けさせると、生ハムの塩気がすかさず合いの手を。
生のバジルがフレッシュなその香りで最後の仕上げを施したら、さながらイタリアンのアミューズ(前菜)のようなパンの完成です。コース料理に出てきてもフィットするような完成度の高さ。小さいからって甘くみてはいけません。

「新生姜のハチミツ漬けとブルーチーズ」
「新生姜のハチミツ漬けとブルーチーズ」

味の想像が出来なかったけど、なんだかすごそう(←語彙力な)とただならぬオーラを感じてトレイにのせた子。私の目に狂いはなかったぜ(誰)。
パカっと開封するとこれまでの私のパン人生で感じたことのなかった刺激的な香りが!それこそが新生姜の刺激でした。自家製ジンジャエールに入っているみたいなハチミツ生姜の香りが甘さと刺激どっちも携えてぷあーんと香ってきます。
そしてそんな刺激的な香りに、あたかも仲間な顔をしてブルーチーズが近づいてきました。そのリッチで芳しい香りを上乗せしていきます。いやいや、しれっと便乗している風ですけど、全然君、目立ってますやん(突然関西弁)。ツッコミを入れずにはいられません。

福岡 PAIN STOCK

生姜をガリッと齧ると、思っていたよりもずっと生姜感が強いです。ハチミツ漬けというより、もはや「ガリ」くらいな生姜感(あ、ダジャレ…。)。リアルな生姜の辛味は遠慮なしで真っ直ぐ届き、甘みが後から慰めにやってきます。
そんなときにも負けず劣らず被さってくるのはブルーチーズ。被せるよねぇーー!このこのぉーー!!っておちょくりたくなります(病気)。パン生地全体にチーズの味わいが浸透し塩味も感じるから、粘度高い内側のもちもちも相まって、ポンデケージョのようなおやつっぽい瞬間もあります。なにかと合わせるというよりちょびっとちょびっとじっくりいろんな角度で楽しんでほしいパン。

「いちじくとマスカットのルヴァン」
「いちじくとマスカットのルヴァン」

大きくカットされたドライイチジクは焼き芋みたいなねっとり感と味わいの濃さが引き出されて、大ボス感が凄まじいです。そうか、焼き芋を作る時にアルミホイルでさつまいもを包むみたいに、パン生地全体でイチジクをまるっと包むから、焼き芋のような濃密な舌に絡みつくようなコクと甘みが育っているのですね。
そこにマスカットが酸味をチラチラと光らせます。ぎゅっと味わいが深いイチジクに対して、マスカットの爽やかな酸味がピカッと光りを刺すから、全体に抜けがうまれて暑苦しくないんです。
こんなにたわわに具材が入っているから、もちろんルヴァンの生地にもフルーツの甘みが溢れています。フルーツの果汁を吸って(ドライフルーツではあるけど)膨らんだかのようなジューシーさで、一口一口が旨味たっぷり。薄くスライスしても十分にその豊かな実りの味わいが感じられるはず!バターとも相性良さそうです。

店内は大混雑でも、お店の持っている世界観、店員さんのハキハキした声と笑顔で、お客様みんな楽しそう。硬いパンが好きな人も柔らかいパンが好きな人も、甘いのが好きな人、塩系が好きな人、一人一人それぞれ違う好みがあっても、一つずつそれに寄り添ってどんと受け止めてくれる包容力のあるパン屋さん。パンの聖地、ここにあり!!?

☆前回の記事「好きの引力!?…〈MONET〉と〈NiOR〉と〈ひらみぱん〉」はコチラから
☆『花井悠希の朝パン日誌』連載一覧はコチラから

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