花井悠希の朝パン日誌 vol.54 地元の人々に愛され続ける、渋谷にあるパン屋さん。…〈Pain au sourire〉と〈fluffy〉 LEARN 2019.09.16

忙しなく人々が行き交うこんな街中にもちゃんとあったんだ。「あらー!〇〇さんいらしてたのー?」とか「お元気ですかー?」とか店員さんとお客様の距離が近いのはもちろん、お客様同士でも交流が生まれているような人の繋がりを感じるお店。ここは避暑地ならぬ避忙地!?温もり溢れまったりとした時が流れるパン屋さん、実は渋谷にあるんです。

コミュニティを育むパン屋さん…〈Pain au sourire〉

渋谷と表参道の間にあるパン屋さん、〈Pain au sourire〉。立地だけ聞くとTHE東京シティーなイメージが湧きかけますが、こちら温もり120%となっております。ウッディーな店内の雰囲気もパンのラインナップもどことなく落ち着く素朴さがあるんですよね。オーダーしてから作ってくださるバゲットサンドイッチを注文してから、イートインスペースへ。ぐるり見渡してみると、サクッと食べて出る人や友人と会話を楽しみながらパンをおやつに頂く人、ぽけーとパンに身を委ねたい人(もちろん私)、みなさま思い思いの過ごし方で楽しんでいらっしゃいます。

待っている間に聞こえてくる会話もほのぼの。「お久しぶりね、今日はいいお天気ですねー」とか「そのお洋服素敵ねー」とか。店員さんもニコニコで、交わされる笑顔を眺め心地よい会話に耳を傾けていると、自分の心もイキイキとしてきます。

渋谷 Pain au sourire

温めてくださったバゲットで作られたハムとチーズのシンプルなサンドは大きく口を開けてガリッとかぶりつきたくなるルックス。さぁ思いのままにガブリといってしまいましょう!カリッと歯切れよい音で始まりのゴングをならせば、もうあとは個々のお仕事にリスペクトを傾けるのみ。

渋谷 Pain au sourire

柔らかくしなやかなハムはシルキーな口当たりにのせて甘みのある脂がとろけ出すし、エメンタールチーズはほろりと崩れる度にのっそりとチーズの芳香を放ち、ちょっと遅れていいところを奪っていきます。あらあら、後出しじゃんけんはずるいじゃないの(←誰)。マスタードはその酸味でチーズの発酵味への橋渡し役をきっちりやってくれるし、バゲットはサンドイッチにちょうどぴったりな歯ごたえと軽やかさに香ばしさ。一つずつがエリート集団な上に、グループワークも得意なんだから全くもう困っちゃう(デレデレ)。

まだもう少しここにいたいな。もう一つ追加で頂いちゃいましょう。

「ココナッツバナナ」
「ココナッツバナナ」

注文したのは「ココナッツバナナ」。
近づけばバターの香りがフェイスパックをしてくれているかのようにリッチに届くデニッシュ生地。そこを土台にアーモンドクリームとバナナが一緒になればもはやこれはバナナケーキです!アーモンドクリームがしっとりしたジューシーさでケーキ感を底上げしたら、トロトロまでいかないくらいに形も存在感も残ったバナナは加熱によってほのぼのとした優しい甘さの世界を作り、そこへカリカリとしたココナッツがウキウキと弾んでいます。おーいどこまで行くんだー!目を離したらどこまでも弾んでいっちゃいそうなほどココナッツ、はしゃいでいます。

渋谷 Pain au sourire

と思ったら、デニッシュ生地の塩気が豊かなバター味と共にぐるりとちゃんと囲いをつけてくれていました。そうかい、この中でだったら好きなだけ弾むがよいよ(←だから誰)。この子片手にゆっくり紅茶をすすったら、ああいい時間だなぁとしみじみしてきました。

お持ち帰りで「プラムとクリームチーズ」を次の日の朝パンに。

自然豊かな立地にあるホールの楽屋で朝パン日誌。
自然豊かな立地にあるホールの楽屋で朝パン日誌。

しっかりとライ麦が香るクルミ入りの生地が香ばしくて、お、リスがいる、おや?どこからか枯葉を踏み締める音が聴こえるぞ?と自分の中でどこか遠い森の秋の描写が止まりません(←病)。外側を抜けると、クリームチーズの酸味とこんにちは。ご機嫌いかが?と会話を交わすこともなく、香ばしいライ麦生地との結束の高さを感じさせてくれました。こんな秋の味にはクリームチーズがよく合う。

渋谷 Pain au sourire

そこにまん丸一個入ったドライプラムがねちりと深い味わいで存分に心を満たしてくれました。この子のおかげでばっちり演奏出来ましたとも!

ホッと可愛いパン屋さん…〈fluffy〉

渋谷と代官山の間のエリアにあるこちらは天然酵母と国内産小麦を使ったパン屋さん。2人も入ればいっぱいになってしまいそうな小さなお店に、そのサイズ感に寄り添うような小ぶりなパン達がずらりと並び、ドアを開けるとお店の女性の方が「いらっしゃいませ」と朗らかな声色で迎え入れてくださいます。それだけでもう温かな気持ちになる私は心が飢えているのでしょうか(そんな事ないよ、ね?)?

ラインナップもパン屋さんによくあるものばかりじゃなくて、これどんな味がするんだろう、中身はどうなっているんだろうって想像力をかき立てられるものばかり!しかも一個の中に色んなテイストが詰め込まれているものもあって、童心にかえってキラキラと目を輝かせてしまいます。

渋谷 fluffy

その中で選んだのは「クリームチーズのパン」。なぜこれを選んだかって?見てくださいこの商品説明!

渋谷 fluffy

甘いも塩っぱいも欲しい貴方にも私にもジャストフィットではありませんか!?二つの山がそれぞれ「こしょう+クリームチーズ」「アプリコットジャム+クリームチーズ」だなんて。欲張りさん(←私)にも優しいです。

渋谷 fluffy

ほら。しとっと舌にくっつくような柔らかな生地に隠してもらっていたクリームチーズの二重人格が出てきましたよ。一つはクリームチーズとアプリコットジャムが絡みついて、クリームチーズのキュンと柔らかな酸味とコクがこれまたキュンと甘酸っぱいアプリコットと仲良くワルツ。水分量高めな生地も参加して甘くときめくメリーゴーランド。

渋谷 fluffy

そしてもう一方ですよ。クリームチーズにブラックペッパー。え?同じクリームチーズなの?と疑うくらいエッジの効いた変貌っぷりに目をパチクリさせてしまいます。たっぷりのブラックペッパーがトゲトゲと刺してくるのを、クリームチーズが盾で身を守りながら華麗にやりあっています。あののほほんとしたメリーゴーランドは一体どこへ行ったんだ。お口の中もこのスリリングな展開にボルテージは上がりっぱなしです。こちらは酸味よりもクリーミーさが前に来てブラックペッパーの棘を丸くしています。クリームチーズの二つの顔、とくとご賞味あれ。

三重から出て来たばかりの頃の渋谷はダンジョンのようにしか思えなくて、このようなお店があるなんて想像もつかなかったなぁ。駅前は大きなビルがそびえ立っていても一本入ると昔の姿そっくりそのまま残っている小さなお店などにも出会えるのが東京のコントラストが強くて面白いとこですよね。いやはや東京奥深し。

☆前回の記事「聖地巡礼!?…〈パンストック〉」はコチラから
☆『花井悠希の朝パン日誌』連載一覧はコチラから

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