【神田エリア】“すこし手が込んだ”家庭料理がテーマの人気店と、ナチュラルワインが豊富な新店

今日は、あの街で一人呑み vol.09
“よそ行きの私”に少し“素”が混ざったような、どっちつかずの自分で楽しむ時間は外呑みならでは。そんな外呑みの醍醐味、たまには “ひとり”で味わいませんか。誰にも気を遣わなくていい。自分と対話をする。いつもじゃない人と出会う。知らない世界に飛び込めるひとり飲み、女性ひとりでも気負いなく楽しめる場所を、お酒業界の広報歴14年の児島麻理子さんが“あの街”で探索します。今回の街は神田。

お酒にまつわるプロデューサーやライターとして活躍。出版社、洋酒会社での広報の経験を生かし、お酒の楽しさを日々発信している。趣味は世界の蒸留所を巡ること。これまでに世界7か国国以上の蒸留所とバーを巡る。ハナコラボパートナー。2025年、お酒に特化したPR会社のTOASTを立ち上げ。Instagram:@mariccokojima
東京23区のほぼ中心に位置する神田。4路線が乗り入れるアクセスの良いオフィス街でありながら、北に流れる神田川や活気ある神田西口商店街が、レトロな雰囲気を残す街です。そんな神田は高架下のリノベーションや、新たな業態のお店の進出も進み、コスパの良い街から、モダンなグルメタウンへと変貌を遂げてきています。今回は、ニューオープンのワインバーと高架下の人気店で、ひとり飲み!
1軒目:オープンは15時から。開放感あるワインバーでアペロを。〈aux facettes〉
神田駅の西口からほど近い場所ながら、落ち着きある神田司町。そこに2025年3月にオープンしたのが、ワインバー〈aux facettes〉(オ ファセット)です。

店名の“facettes“とは宝石の切子面のこと。多面体のような輝きを持ちたいという想いが込められたこのお店は、神田の一八通りで、すでに異色の輝きを放っています。
ガラス張りの開放的な入口に、南国リゾートのようなタイルは、どこか異国情緒ある雰囲気。ビル街のなかでリラックス感のある空気を纏っています。

「イメージしたのは、ベトナムとか香港のような、ヨーロッパの雰囲気が残るアジアみたいな場所。ワインや人との出合いを楽しむ、多面体のような箱(お店)を作りたいと思いました」と語るのは、オーナーの長島和弘さん。

ワインのインポートの会社を経て、待望の店舗を開くにあたり、大切にしたのは新しい結びつきを作り出すお店であること。ワインだけでなく、人や生産者も繋ぎたいという想いから、メニューには、長島さんが通っていた飯田橋〈メリメロ〉、幡ヶ谷〈kasiki〉など、他店舗の名物も取り入れています。まだ訪れていないお店へも誘ってくれるメニューとともに、知らぬ間にワインの沼にはまっていきそうです。

ワインは、クラシックなタイプや日本産など広く揃えながら、7割はナチュラルワイン。
「ナチュラルワインに寄り添うものを考えたら、なるべく無農薬やそれに近いものになっていきました」という言葉通り、フードは野菜多めで手作り感があります。
本日の前菜の盛り合わせは、クミンを使ったキャロットラペと、ほどよい酸味のカブとハムのマリネ、ポテサラ。ワイン好きにはちょうどいいスパイス感や酸味が効いた、気の利く一皿。

オーナーのワイン愛が感じられるのが、カウンター裏のワインセラー。カウンターから見えるのは、ガラス超しに並ぶワインボトルです。
常に温度管理されたセラー内のボトルを、カウンターから頼むこともできるほか、セラーに直接入って、自分で選ぶことも。生産者の来日イベントも行われることのある〈aux facettes〉ならではのオーナーの想いが込められたセレクションを堪能できます。

そして、ワインだけでないのが〈aux facettes〉のセレクション。〆に楽しみたいのは、オーナーがお酒が好きになるきっかけになったという「ミッシェル・クーヴル」のウイスキー。スパイスナッツとの組み合わせで、ウイスキーの味わいの奥深さが増します。

さまざまなお酒との出合いの場を作ってくれる“多面体”のワインバーは、神田の新しいお酒の聖地となりそうです。
〈aux facettes〉

場所:千代田区神田司町2-16-4 佐一第2ビル1F
営業時間:15:00~23:00(月~土)
定休日:日曜
TEL: 070-1246-2164
公式Instagram:@auxfacettes
2軒目:レンガ造りの高架下でお洒落な家庭料理を味わう〈Sta.神田〉
神田川に架かる万世橋には、その昔2年間だけ駅があったといいます。駅に行きかう人々を見守っていた赤煉瓦を残した空間にあるのが〈Sta.〉です。
渋谷や日本橋、麻布台にも展開する人気ダイニングの〈Sta.〉ですが、すべてその場所の記憶を生かしながらリノベーションしているのがその特徴。さまざまな人が行きかう店にすべく、店名は駅(Station)が由来で、この場所はまさに〈Sta.〉の本丸といえる場所です。


丸いアーチは橋の名残。スタイリッシュにデザインされた空間ながら、提供したいのは、“すこし手が込んだ”日本の家庭料理です。10人掛けの大テーブルは、家族で囲んだ食卓の風景も思い出させるもの。みなでシェアする感覚のテーブルは、一人でも居心地よく時間が過ごせます。

“美味しいものをちょっとずつつまみたい”という、ひとり飲みの欲望に応えてくれるメニュー。時期によって内容が変わる水餃子や、コロッケ、唐揚げは2個からオーダー可能です。ごはん党の方には、生姜佃煮の小さなおむすびや、小さめが選べるカレーも。そんな心配りも日本の家庭料理の思想が感じられます。

そして毎日でも食べられるように、調味料から丁寧に仕込まれた料理は、ひと工夫がプロの技。米粉の唐揚げの衣には刻まれたレモングラスが使われたり、餃子のタレにはシナモンが合わせられたりと、家でも真似してみたくなるような、技ありの料理がそろっています。


こだわりのサングリアは、ナチュラルワインがベース。季節によって漬けられる果実とスパイスが変わりますが、春にお薦めなのは、「苺とカルダモンのサングリア」。イチゴの酸味とカルダモンが爽やかさを、ナチュラルワインの複雑さがある味わいが支えます。カフェやBarの利用もOKで、気軽に1杯を楽しむこともできます。

かつてこの場所で、旅立ちや、待ち合わせなど、いろいろな人生があった“駅”の記憶に想いを馳せながら、ほっとする家庭料理で気持ちを満たしてみては?

〈Sta.神田〉

場所:千代田区神田須田町1丁目25番地4 N10-12区画
営業時間:11:00~14:00、14:00~17:00、17:00~22:00(金土祝日17:00~23:00)
定休日:毎月第一月曜日
TEL: 03-6260-8890
公式Instagram:@sta.official
text_Mariko Kojima photo_Kaori Ouchi