ニッポンのお茶のニューウェーブ。#2 おいしさがますます進化中! 今こそ和紅茶を飲まなくちゃ。 FOOD 2022.10.21

緑茶大国の日本で今、じわじわと存在感を増しているのが和紅茶。その魅力を体感しに、注目の専門店〈TEA ROOM Yoshiki Handa〉と茶園〈吉田農園〉を訪ねました。おいしさがますます進化中の和紅茶を、今こそ、飲まなくちゃ! 9月28日(水)発売Hanako1213号「新しいニッポンのお茶。」特集よりお届けします。

そもそも、和紅茶ってなに?

その字の通り、日本で栽培し、作られる紅茶のこと。国産紅茶、地紅茶とも。インドやスリランカとは異なる、日本の品種らしい柔らかな味わいと繊細な香りが特徴。もともと明治期から作られていたが、再び注目を集め出したのは2000年代ごろから。とくに2015年前後から和紅茶を集めたコンテストも複数登場し、優秀な作り手を輩出。台湾や中国大陸の烏龍茶の手法を活かす生産者が現れるなど、作り方が多様化しているのも面白い。和紅茶は急速においしさが進化中なのだ。

〈TEA ROOM Yoshiki Handa〉世界の紅茶を知る店主が 夢みた、国産紅茶の専門店。

凛々しい黒服姿の半田さん。
凛々しい黒服姿の半田さん。

下町情緒が息づく、町屋の一角。店主の半田貴規(よしき)さんは、パリ発祥の紅茶店〈マリアージュ フレール 銀座本店〉で経験を積んだ人物。世界中の紅茶に触れ、テイスティングを重ねる日々の中で、作り手の顔が見える国産紅茶に惹かれ、全国の茶園を巡るように。やがて「これほど品種も味わいも多彩な和紅茶こそ、もっと日本の生活に溶け込んでほしい」と昨夏、念願の専門店を開いた。

メニューは静岡や宮崎、茨城などキラ星のような茶園の和紅茶をはじめ、自ら配合するブレンドやフレーバーティーも。さらに銀座〈和光〉のケーキショップで腕を磨いたパティシエの妻・久美さんが作る、〝和紅茶に合うスイーツ”が花を添える。

ティールームでは「小さな体積の中で茶葉に均一に熱が入り、旨みを引き出せるから」と、常滑の急須で抽出。たとえば店の看板である、静岡の名園〈井村園〉の「べにふうき紅茶」なら、鮮やかな赤紅色と桃のような甘美な香りに心が華やぐはず。「ここがお茶に親しむ入口になれば」と半田さん。格別のお菓子とともに、和紅茶の愉しみを教えてくれる。

〈TEA ROOM Yoshiki Handa〉
住所:東京都荒川区町屋3-6-1│地図
TEL:03-6770-3166
営業時間:11:30〜19:00(18:00LO)
定休日:月、火、水曜
席数:8
和紅茶と手作り洋菓子の専門店。町屋の住宅街に2021年7月オープン。詳細は公式HPより

〈吉田農園〉和紅茶界のキーパーソン、さしま茶の作り手を訪ねて。

和紅茶の品種・いずみの茶畑にて。左から、6代目の𠮷田正浩さん、7代目の浩樹さん。
和紅茶の品種・いずみの茶畑にて。左から、6代目の𠮷田正浩さん、7代目の浩樹さん。

茨城県西部で育まれる「さしま茶」。この小さな茶の郷が今、和紅茶の発信地として注目されている。その担い手の一人が、〈吉田茶園〉の6代目・吉田正浩さんだ。
「さしま茶は茶園が30軒ほどの小さな産地なので、栽培から加工まで一貫製造するのは当たり前のことなんです」と吉田さん。こうした背景が柔軟なお茶作りの原動力なのかも。

そして当園の代名詞が、1993年から栽培する幻の品種「いずみ」。10年ほど前に煎茶に加え和紅茶作りにも挑戦し、2017年から中国烏龍茶の製茶法を取り入れたことで、仕上がりが劇的に変化。「いずみ」ならではの芳醇な香りが花開き、コンテストの常連になっていく。園主が中国茶器で振る舞ってくれた受賞茶は、美しく輝くオレンジ色。飲めば「いずみ」の特徴という白い花の香りが広がり、甘い余韻が長く続く…!

取材時、茶畑の蜘蛛の糸について尋ねると、「蜘蛛の巣が張るのは生態系のバランスがとれている、健康な畑の証拠」と吉田さん親子。猿島台地の健やかな茶園から、和紅茶の可能性が生まれている。

〈吉田農園〉
住所:茨城県古河市大堤1181│地図
TEL:0280-31-8827
営業時間:10:00〜17:00
定休日:日、月曜
1839年創業の老舗茶園。古河市内には当園の茶葉が飲めるカフェ〈room’ztea〉もある。詳細は公式HPより

photo:MEGUMI, Shinsaku Yasujima text & edit:Yoko Fujimori

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