「まだ見ぬパン屋さんへ。」by Hanako1196 【金沢】大正時代の建築をリノベしたパン屋〈ひらみぱん〉。モーニングのクロックマダムは名物に。

FOOD 2021.05.18

パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まだ見ぬパン屋さんへ。」を掲載。城下町の面影が残る金沢市長町にある大正時代の鉄工所跡がビストロ兼パン屋さん〈ひらみぱん〉に。新幹線開通とともに朝食が人気となり、街のランドマークになりました。

僕は本になって、誰かの背中を押したい。

平見高広さん。
平見高広さん。

平見高広さんの人生にはいつも本があった。言葉に背中を押され、情熱的な生き方を選んだ。三代目魚武濱田成夫(うおたけはまだしげお)の本を読んで大学からドロップアウト、上京してファッションデザイナーを目指した。夢叶わず、能登へ帰郷。そのとき、雑誌『ku:nel』で、能登〈二三味(にざみ)珈琲〉を見て、「田舎でも自分で仕事を作って、いい感じに暮らしてる人がいるんだ」と行動を開始。朝市で、手作りのカバンとパン、コーヒーを売りはじめた。

古書店やアンティーク店などが集う最近人気のエリア。大正時代の建築をリノベ。
古書店やアンティーク店などが集う最近人気のエリア。大正時代の建築をリノベ。

当時、街づくりを仕事にしていた人に言われた言葉は「ないものねだりじゃなく、あること探しをしよう」。すると、なにもないと思っていた田舎町にたくさんの宝物があるのが見えてきた。金沢のフレンチレストランに勤めたあと、次の仕事先を探して歩いていたとき、鞍月(くらつき)用水の水辺にある交差点の角に大正時代の洋館があるのを見つけた。ここでブラッスリーをやりたい。不動産屋さんにすぐ電話した。隣は、毎日のように通い詰めていた金沢の名物古書店〈オヨヨ書林〉。フロアにはもちろん大好きな本を置きたい。

パッションフルーツショコラ270円。キューブ食パン(オレンジピールとチョコチップ入り)378円。
パッションフルーツショコラ270円。キューブ食パン(オレンジピールとチョコチップ入り)378円。

タルティーヌは、パリの名ブーランジュリー〈ポワラーヌ〉みたいな自家製のカンパーニュで作ろう。最初は1種類だけだったが、そのうちいろんなパンを並べるようになり、人気ベーカリーに。触発されてまわりにもいろんなお店ができ、たくさんの人が訪れる界隈になった。雑誌で見たデンマーク製自転車に一目惚れしてはじめた出張販売。コロナ禍になっても、近所でおいしいパンが買えるとみんなによろこばれたり。アイデアを思いついたら、わくわくしながら動きだせば、周囲も動きだして、おもしろいほうへ転がりだす。「僕は本になりたい。読んだ人が『自分もやってみようか』って思えるような、誰かの背中を押してあげられる人になりたいんです」

〈ひらみぱん〉

〈ひらみぱん〉

自家製パン充実のブラッスリー。カヌレやモーニングのクロックマダムも名物。
■石川県金沢市長町1-6-11
■076-221-783
■18:00~18:00(コロナ禍により現在時短営業、ディナー休止中)月休、不定休
■22席

Navigator…池田浩明(いけだ・ひろあき)

パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。

■パンラボblogpanlabo.jugem.jp

(Hanako1196号掲載/text:Hiroaki Ikeda)

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