カルチャー発ソーシャル行 Meet #15/
『シン・中国人』+『オオカミちゃんには騙されない』 CULTURE 2023.07.31

映画、小説、音楽、ドキュメンタリー…あらゆるカルチャーにはその時代の空気や変化が反映されています。そんな「社会の写し鏡」ともいえる、秀逸な作品を編集部Sが紹介。

「新居を買ってこそ、男は結婚できる」。中国の新・結婚条件が爆誕した事情。

2013年から2021年までの8年間で結婚率は半減し、2019年の離婚率は日本の倍。首都のマンション価格は最低でも億ションからで平均年収の40倍(先進国の平均は10倍)。こちら、お隣さんの中国の話。1996年から北京に在住している斎藤淳子さんの著書『シン・中国人』は、人類史上最速ともいえる、90年代からの経済発展(「中国速度」と呼ぶらしい)と社会の急激な変化、特に若者の素顔をレポートしたものだが、そのダイナミックさはもはやSF。例えば2010年代以降に普及した「結婚するには男性は家を持っていなければいけない」という条件。新婦の母の「娘には安定した生活をしてほしい」という潜在的願望と、不動産会社とメディアの煽りがトリプルクロス。中国速度で「結婚の常識」として定着。当然億ションなど持たない結婚できない男性があふれる。

シン・中国人

『シン・中国人―激変する社会と悩める若者たち』斎藤淳子・著/北京在住26年の著者が見てきた、恋愛、結婚、住宅事情、競争社会における若者の実情を描く。(ちくま新書/946円)公式サイト

我が日本はどうか。恋愛リアリティショー『オオカミちゃんには騙されない』の新シリーズがNetflixで配信スタート。俳優、格闘家、モデル。西野カナも震えるくらいの美男美女が10人。黄レンジャーものび太くんもいない。全員が出木杉くんとしずかちゃん。「億ション」に対してこちらは「ルックス」と「センス」が大切なのだろう。恋の駆け引きは観ていて楽しいのだが、少しギュッと胸が苦しくなった。いつの時代も競争というやつは苛烈だ。


真実の恋をしたい男女10人に密着。しかし、女性メンバーの中には「好きなフリをしつつ恋をしてはいけない」という嘘つきオオカミが少なくとも1人潜んでいて…。Netflixで配信中。

[今月の担当]編集部S/8月3日から『バチェラー・ジャパン』の新シリーズがスタート。そういえばどのリアリティショーが好きかで年齢や世代の差がもろに出ますね。

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