バレーボール選手から大学院生へ キャリアの転機インタビュー。FILE #1 荒木絵里香|働く女性のための転機の準備 WORK&MONEY 2023.05.19

第二の人生における職業“セカンドキャリア”について考えたことはありますか?今回は、新たな分野にチャレンジしてより輝きを増す、2人の女性をクローズアップ。一人目のインタビューは、トヨタ車体クインシーズ チームコーディネーター・荒木絵里香さん。「転職は気になるけど、なかなか勇気が出ない」と悩んでいる人、必読です。

バレーボール選手から大学院生へ。

“よく学び、競技者以外の自分を高めていけたら”

高校卒業後に実業団入り。妊娠・出産を経験しながら、現役バレーボール選手として躍進してきた荒木絵里香さん。惜しまれつつも、37歳で現役生活にピリオドを打った。
「当時はチームを移籍するたびに引っ越し。娘が小学生になるタイミングで生活環境を安定させてあげたかったんです。東京オリンピックには出場したいという思いもあり、現役を続けさせてもらいましたが、引退を決めた一番の理由は、競技者としてこれ以上技術を向上させるのは難しいと判断したから。ただ、引退後もバレーはもちろん、スポーツに携わりたいという気持ちはあったので、最後に所属した女子バレーボールチーム『トヨタ車体クインシーズ』で、チームコーディネーターとして残ることに。チームの強化のため、選手にアドバイスをしたり、話を聞いてあげて精神面でのケアをするほか、PR、スタッフのサポートなど仕事内容は様々。私は引退してまだ年数が経っていないため、選手により近い立場でいられるのは強みですね」

「選手とスタッフの潤滑油的な存在で、チーム全体を支えています。」
「選手とスタッフの潤滑油的な存在で、チーム全体を支えています。」

そして、荒木さんの大きな転機となったのが、早稲田大学大学院に入学したこと。
「実は、高校生の頃に大学か実業団のどちらに進むか悩んだ時期があって。そのとき、両親に言われた『大学はいつでも行けるよ』という言葉が頭に強く残っていたのと、いままでも引退後に大学院へ進学している先輩方を見てきたので、引退したらまずは大学院に行こうと、20代のときから決めていました」
学生生活は1年間。仕事をしながら週3日は校舎に通い、授業を受け、研究し、修士論文を進めるという怒涛の日々を送った。
「現役時代に知りたかった、バレーのプレー・ブロックの実践知について、トップ選手にインタビューし、修士論文にまとめられたこと、同じ目的をもつ、幅広い年齢層の他競技の指導者や現役選手と知り合えたことは貴重な体験でした。何より、色々な角度で物事を見られるようになったことは大きいなと。大学院で学んだことは、チームの選手たちにフィードバックしていきたいです」

パソコンの操作は周囲の人に助けてもらいながらできるように。
パソコンの操作は周囲の人に助けてもらいながらできるように。

「今後も学ぶ姿勢は忘れずに、色々なことに挑戦していきたい」と語る荒木さん。大学院を修了した現在は、コーチのライセンス取得を目指し、チームコーディネーターのほか、スポーツ解説者、講演、バレー教室の講師、JOCアスリート委員会の活動など、多忙を極める。
「あくまでコーチは選択肢の一つであり、どういう形でスポーツに携わっていくかは模索中です。そのためにも、いまは色々なことに挑戦していきたい。引退したとき、競技者ではない自分は何をもっているのかと考え、まずは知識を得ようと決めました。これからも、知らなかったことを知るおもしろさとやりがいを感じていきたいです。挑戦し続ける気持ちは、自分の成長を促してくれるもの。“できない”という固定観念は、自分で壁を作ってしまう。〝やってみよう"という前向きな気持ちになり、様々なことに取り組むことが、転機においては大事だと思います」

転機のためにやっておいて良かったこと

1.周囲の人にとことん聞く。
同じように社会人で大学院へ進学した先輩や友人に、大学の選び方からリサーチ。リアルな声はとても参考になりました。

2.イメージをもってから行動。
悩んだときは、すぐに知識のある人に相談。「自分でもできるんだ」と自信をつけ、将来設計を立ててから実行しました。

3.家族にサポートをお願いする。
仕事と学生生活の両立は大変。現役時代に引き続き、生活のサポートをしてもらえるよう、母親には事前にお願いして万全の状態に。

illustration:Yu Tokumaru text:Moe Tokai

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