食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE46 松島由恵

食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE46 松島由恵
連載〈HOME SWEET HOME〉
食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE46 松島由恵
LEARN 2026.06.09
おいしいものを作る人、おいしい場所をプロデュースする人。食に関わるプロフェッショナルのセンスを、プライベート空間のインテリアから学びます。今回は、住み慣れた古い一軒家を離れ、マンション生活を始めて1年となる料理家の松島由恵さん。広さは少々妥協し、環境第一で選んだ部屋は、高い天井と大きな窓が開放的。モノに頼らず、空間の有効活用を第一に考えたDIYも必見です。
photo_Michi Murakami illustration_Chikako Ban text & edit_Kei Sasaki
プロフィール
松島由恵
料理家

まつしま・よしえ/岩手県盛岡市生まれ。建築業界、レストランでの経験を経て独立。国際中医薬膳師、JSA認定ソムリエ。著書「エキゾチック薬膳 おいしくて楽しい。ごきげんな食膳生」(家の光協会)ほか。

Instagram:@yoshie_matsushima

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断捨離、そしてDIYで、新しい生活をデザイン。

料理家・松島由恵さんの自宅 インテリア
ミニマムなキッチンだが、シンクや作業台が広いシステムほか、使い勝手抜群。フランス〈プ・ル・ムールト〉のカラフルなパジャマをセットアップ的に。

12年暮らした築50年超えの一軒家を離れ、1年前に現在のマンションに住まいを移した。どちらも東京・世田谷区内で、直線距離にしたらわずかな転居だが、路線が替われば町のカラーもがらりと替わるのが東京の面白いところ。駅近の低層マンションは、「外観の感じがいい」ところがまず気に入った。築年数を考慮すれば、室内もとてもきれいだ。賃料も、以前より安い。

部屋のサイズに合わせ自分の手で内装を作り直す。

約40m²のマンションで、小学生の子供との二人暮らし。実際の広さ以上にゆったりと感じるのは、高い天井と、同じ高さがある一面の大きな窓のおかげだろう。大きな箱ものの家具がないことも、開放感の一助に。「以前の家より狭くなる分、徹底的に断捨離しましたから。食器棚として使っていたアンティークの医療用の棚を処分し、器はシステムキッチンの吊り収納に収まる量に整理しました」

ディスプレー収納に活躍するオープンシェルフは、でしつらえた。「料理を仕事にする前は、ゼネコンや住宅メーカーで年以上、オペレーターとして働いていたので、考えるの、苦にならないんですよ」と、話す。最近はビギナーにも優しい用品専門店も増えたが、頼みにしたのは大工さん御用達の〝ガチ〞な店。「安いし、金物を切る電動のこぎりなども一泊から貸してくれて助かるんです」と、さばさばと話す様子は、ファッショナブルな装いとのギャップがすごい。大きな窓にかけるカーテンもお手製。リビングの重厚なテーブルは、20代の頃に職場で手に入れ、大事に取っておいた天板に脚を付けたものだ。

「節が多いから店舗の施工には使えないと、大工さんが放り投げたものを〝捨てないで〜〞と(笑)。木目の表情が好きで、若き日の自分、よくやったと」

ディテールに目を凝らすと、「ロック」と「キッズ」のアクセントが浮かび上がる。OL時代、週末だけレコード店でアルバイトしていたほどの音楽好きは、今も変わらず。レコードやプレーヤー一式は、泣く泣く断捨離したが、アーティスト関連の書籍やポストカード、フィギュアなど、生活空間にはロックスピリッツが息づいている。

「キッズ」のあれこれは、家族であり相棒でもある子供のテリトリー。図工で作った作品に、絵本、おもちゃと、こちらもにぎやかだ。母の趣味の音楽と混じり合って、質実剛健な室内にイノセントなエネルギーを放っている。クリエイティブな魂が、料理以外にも及ぶことを雄弁に物語る家だ。

挑戦を諦めない姿勢が、暮らしを色鮮やかに。

センスに加え、決断と実行の潔さも、プロとしての味づくり、そして自身と家族の暮らしづくりのエンジンになっている。建設業界から、料理界への転職しかり。コロナ禍には「普段できないことを」と一念発起し、運転免許の取得に挑み、中医を学んで薬膳師の資格も手に入れ、仕事と生活の幅を広げた。

「夜中のうちに起きて仕込みを始めて、というケータリング中心の仕事は、楽しいけれどいつまでも続けられない。産後に体調を崩しがちになったのも、中医に興味を持ったきっかけで、ようやく自分のものにできた」

思い切った住み替えも、子供と自身の〝次のフェーズ〞を考えての決断でもあった。「通学その他を、子供が一人でも安全にできる環境が第一。プラス、学びや体験にできる限り選択肢ができるよう、生活コストの優先順位を整理しました」

誰もが常に制約や条件の枠内で生活を組み立てるが、その時々の「大事」が軸にある毎日は楽しそう。景色が変わっても、代の頃も今も。この先も、変わりながら続くのだろう。

料理家・松島由恵さんの自宅 インテリア 間取り
築約30年の低層マンション、40m²の1LDK。ミニマムだが、玄関周りにゆとりがあり収納も十分、浴室にも窓がある。1部屋は和室で、子供の勉強部屋兼寝室として活用。

【TODAY’S SPECIAL】手間がかかっても、旬をとことん味わう。

料理家・松島由恵さんの自宅 インテリア

子供の好物に合わせることは多いけれど旬の食材など、「自分の“好き”も譲らない、譲れない」春から初夏の食卓。下処理に手間がかかる食材も多いけれど、「一食でも多く」スピリッツで、新しい季節の気を取り込むのだとか。写真はホタルイカと実山椒の炊き込みご飯と、新タマネギと柑橘、あまどころのサラダ。ワインにもよく合う。

【MY ESSENTIALS】少しずつ買い集めたものも、集まってきたものも。

アンティークのチェア。

料理家・松島由恵さんの自宅 インテリア

国、時代、サイズや形も違う椅子をコレクション。写真は、国産の子供用。「昔のものは作りが丈夫で、大人がスツール使いしても安定感がある」

ロックスターのフィギュア。

料理家・松島由恵さんの自宅 インテリア

子供へのプレゼントについてきた母へのオマケ。〈SilkRoadBazaar〉のニードルフェルト作品で、デヴィッド・ボウイとボブ・マーリーがモデル。

実家から譲り受けた南部鉄器。

料理家・松島由恵さんの自宅 インテリア

「“終活”を進める母からのお下がり」と話す、故郷・盛岡の伝統工芸品である南部鉄器。タフでグッドデザイン、用途以外にも多目的に活用する。

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