花井悠希の朝パン日誌 vol.51 新風を掴め!…〈MORETHAN BAKERY〉と〈PAUL BOCUSE Carré〉 LEARN 2019.08.05

出口がなかなか見えない長い梅雨のトンネルからようやく出られたと思ったら、すっかり夏の暑さを忘れていた体がびっくりしています。どうも30回目の夏よ(←聞いてない)。去年の夏よりは涼しいとのことだけど、どうなることやら。8月はお休みするパン屋さんもあるくらいパンには厳しいシーズンですが、そんなこんなを吹っ飛ばし去年8月にオープンしたパン屋さんから今回はお届けします。

We are the World!…〈MORETHAN BAKERY〉

西新宿に出来たホテル〈HOTEL THE KNOT TOKYO Shinjuku〉内に去年8月にオープンした〈モアザンベーカリー〉。ホテル内にあるのもあって海外からのお客様も多く、老若男女、様々な言語が飛び交うお店です。となると、ここの共通言語は「パン」だなんてなんともロマンがありますねぇ。ホットサンドイッチを買ってチーズをびよーんとさせながら外へ駆け出す金色の髪を揺らす子供たち、見上げる程背の高い赤毛のカーリーヘアが素敵なジェントルマンがシュッとコーヒーとパンをテイクアウト、ホテルロビーでパンを片手に今日の1日のスケジュールを確認する(ように見える)家族、その光景をニタニタと微笑ましく見ている私(おまわりさーん!)。とても活気のあるお店です。

「ブリオッシュ バナナ」
「ブリオッシュ バナナ」

お客様の多様性に寄り添うように様々なパンが並ぶこちらの中でも異彩を放っていたこちら。ドラえもんの鈴みたい!東京駅の銀の鈴みたい!!とテンションあがってしまったルックス(要は鈴みたい)は、上手くトングで持てるか不安になるほど綺麗な球体を描き、スーパーボールにあったようなマーブル模様は見つめれば見つめるほど異次元にワープできそうです。

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うーむトラ猫にも見えてきたぞ(いつもの妄想力発揮)。鈴カステラを大きくしたような見た目を裏切らず表面はカリカリとオヤツらしさ全開。ぱっかーんとくす玉よろしく真っ二つに分けてみると、ひゃー!なんとカスタードクリームが入っているじゃありませんか!

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どうやらカスタードクリームゾーンとバナナ生地ゾーンがあるようです。ゾーンで分かれている感じとかも新惑星のようでいいよいいよー(何が?)!ルックスからだけでは想像出来ない、この内側の凝った作りは嬉しいサプライズ。

カスタードクリームは"らしい"とろりんさでそこにいて、バナナ生地はきっちりとバナナ味を発揮してくれる。1つ屋根の下(どちらかというと"1つ鈴の中"だけど)異なるキャラが干渉し過ぎず同居している面白さよ。でもちゃんと1つのコミュニティとして調和を保つべく、真ん中にはベースのマーブル生地がフカフカと存在し橋渡し役を買って出ています。フカフカだけどスッと溶ける、きめ細やかでなめらかな口溶けは、ここだけの話カスタードとバナナどちらにも負けないほどキャラ立ちしているような。ここでブリオッシュらしさを出しているんだしね。カスタードとバナナが嫉妬しちゃうのでここだけの話ということで(気遣い)。

「コンプレ スウィートポテト」
「コンプレ スウィートポテト」

非の打ち所がないほど焼き芋な見た目をしたこの子は、味だって想像以上に焼き芋!シナモンがまぶされた皮は、焼きがしっかりだからか石焼き芋の皮のような香ばしさで、焼き芋のあのクタッと黄色くなった身と茶色く硬く焦げた皮の間に出来る空洞の味すらもしてくるようです(←芋には細かい)!シナモンも持ち味の香ばしいかおりで皮と錯覚させる一役を担っている気がします。

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中に詰まったさつまいもがマッシュじゃなく角切りなのも、芋を食べているぞ感を盛り上げます。甘く煮られているけど火を通しすぎていないからお芋本来の繊維感と味がしっかりと残っていてシャッキリしているんです。今まで食べたサツマイモパンでも特段に最先端というか。皮の部分の生地だってワサワサした口当たりを感じた次の瞬間にはするりと溶けてなくなっていたりして、きっと私の味覚では感じ取れていない程ささやかな技や隠し味が忍ばされているのでしょう。こう見えてとても作り込まれたさつまいもパンでした。令和のさつまいもパンってこうなのか!

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パン屋さんのお向かいにあるレストランのランチビュッフェでは、〈MORETHAN BAKERY〉のパンが取り放題。スタンダードから変化球までちょこっとずつ色んな種類のパンを食べられるのでこちらもオススメ!

あなたはどっち?…〈PAUL BOCUSE Carré〉

もう一つは今年の春に出来たばかりの高級生食パンのお店を。そうです、今この「新風を掴め」というタイトルをつけるなら避けては通れないのが高級生食パンでしょう。フランス三つ星レストランの〈ポールボキューズ〉ブランドの生食パンは日本でここだけ、〈名古屋松坂屋〉で買えます。完売オンパレードの看板にに注目度の高さを感じつつ(自分は買えるのか心配になりつつ)入店!

「本・生食パン」
「本・生食パン」

ふかふか。フワフワとは違います。ふかふか。真っ白で空気の粒すら入り込めないほどきめ細やかに詰まった生地は、口に入れるとしゅんと溶け小さくなるとくにゅくにゅと震えます。このくにゅっと柔軟な感じは蒲鉾を連想させますね(はて?)。と、そこで説明書を読んで納得。こちらの生食パンは小麦粉だけではなく米粉も配合しているとのこと!だからかー!だから蒲鉾を連想させるのかー(そうなの?)!!と妙に納得してしまいました(私だけ?)。米粉配合だからこそ、ふかふかな上にこのもっちりと吸い付くテクスチャーが生まれているのですね。

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とはいえやはり私は生派じゃないわ。トーストをぱくりとした瞬間悟ってしまいました。生食パンってどうしても生で食べてね感がどのお店も強いけど、どのお店のもトーストした方が結果好き。というか、普通の食パンのトーストと、生食パンのトーストって明らかに違うんですよね。生食パンのトーストという味のジャンルがある気がします。そしてそれが私は好きみたい。

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みっしりとした厚みと弾力を感じていた生の時から姿を変え、薄い表面の膜がサクッと高らかに小気味よい音を立てると、間髪いれずまあるい甘みと、しゅんしゅんとしなやかに溶ける内側の生地が口内で大きく伸びをして広がります。そうそう!これぞ生食パンのトースト味!後味にねっとり残らない、穏やかな甘みは今の季節にもぴったりです。一本1,000円弱というなかなかに高級なお値段ですが、誰からも愛される味わいの食パンなので手土産にも良さそう!

今回はどちらもオープンして一年以内の新しいお店で今どきな(!?)パンたちをリサーチしてみました。勢いのあるお店のパンたちとの新鮮な出会いはワクワクさせてくれますね。都内だけでもどんどん新しいパン屋さんができているのに、全国へ広げたらもう行きたいところだらけ。あぁ、胃袋と足があと5つずつほしい…。

☆前回の記事「山さん角さんと共に参ります!…〈ペリカン〉」はコチラから
☆『花井悠希の朝パン日誌』連載一覧はコチラから

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