「東京の奇跡だ」エッセイスト・平松洋子さんの「私の帰る場所、喫茶店。」

「東京の奇跡だ」エッセイスト・平松洋子さんの「私の帰る場所、喫茶店。」
「東京の奇跡だ」エッセイスト・平松洋子さんの「私の帰る場所、喫茶店。」
CULTURE 2025.04.28
作家、クリエイターの心の中にある「マイ喫茶店」のストーリーコラム。それは家族と過ごした日々だったり、下積み時代だったり、誰かとの約束だったり。写真家・市橋織江さんによる撮り下ろしカットとともにお届けします。
第一回はエッセイスト、作家の平松洋子さんの「私の帰る場所、喫茶店。」
profile
平松洋子

ひらまつ・ようこ/エッセイスト、作家。『野蛮な読書』で講談社エッセイ賞、『父のビスコ』で読売文学賞を受賞。近著に『おあげさん 油揚げ365日』(文春文庫)などがある。

profile
市橋織江

いちはし・おりえ/写真家。広告、CM、映画など多分野の撮影を手がける。映画『ホノカアボーイ』『恋は雨上がりのように』などでは撮影監督を務めた。主な作品集に『サマーアフターサマー』ほか。

新宿DUG(ダグ)の店内

新宿の街が変貌しても、「DUG」は変わらない。ここには鳥の巣のような安心がある。

初めて地下へ通じる狭い階段を下りたのは一九七〇年代後半だった。当時の店名は「new DUG」。

赤煉瓦造りの内装、ジャズの音色を響かせるスピーカー、

店主の写真家・中平穂積さんによるジャズプレイヤーたちの写真、客のさんざめき……

コージーな空間に潜り込むと、つい長居になった。週一、二度通っていたときもある。

二〇〇〇年代に「DUG」と改名しても、今日まで同じ居心地のよさ。新宿の、いや東京の奇跡だ。

本を読む、ただぼんやりする、誰かと待ち合わせ、映画を観たあと、いつでも立ち寄る。

昼間はコーヒーとブラウニー。夕方はビールかカクテル。夜はウイスキー。

これほど懐が深いジャズ喫茶があるだろうか。

新宿のどまんなか、ジャズの音色とともに地下でスイングする「現在」。

中平さんのモノクロームの写真にも強烈に会いたくなる。

information
DUG(ダグ)

住所:東京都新宿区新宿3-15-12 B1
TEL:03-3354-7776
営業時間:12:00~23:30(18:30~バータイム、カバーチャージあり)
定休日:無休
席数:40席 喫煙席あり

〈新宿ピカデリー〉隣の地下に佇むジャズ喫茶&バー。ジャズ写真家の中平穂積(なかだいらほづみ)さんが創業し、この地での営業は1977年から。

※記事内に特段の記載がない場合は禁煙店です。
※20歳未満の方は喫煙可能エリアへは入ることができません。

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