親が亡くなった後じゃ遅い!相続問題の切り出し方3選

親が亡くなった後じゃ遅い!相続問題の切り出し方3選
親が亡くなった後じゃ遅い!相続問題の切り出し方3選
LEARN 2025.04.28
必要なことだとわかってはいても、親子間の相続の話は身構えてしまうもの。けれど、会話の糸口次第では、気軽に相続の準備のきっかけをつくることができる。
text_Sachiko Nakano
教えていただきました
奥山晶子
葬儀ライター

おくやま・しょうこ/葬儀社を経て出版社へ転職し、日本初の葬儀誌『フリースタイルなお別れざっし 葬』を発行。著書に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)など。

いつかは訪れる親との別れ。それがいつやってくるのかわからない中で、相続の準備ができている人はどのくらいいるだろうか。人ごとではないと思ってはいても、親の死を自分ごととして想像したり、相続について自分から親に切り出したりするのはなかなか難しい。

一方、親世代では相続の準備などを含む終活を必要だと思っている人が約8割にのぼるが、実際終活をしている人はその半数にも満たないという調査結果がある。多くの親にとって、相続の準備は「やりたいけどできていない」ことなのだ。

奥山さんは、「親との別れの準備をすることは寂しいこと。でも、親と自分で準備した経験が、親を見送るときの自分を支えてくれます」と言う。「相続の準備は、親と自分のために必要なことだと捉えましょう」

まずは財産の“見える化”を。

「親が亡くなった後に親名義の不動産が発覚し、予期せぬ固定資産税の支払いが生じた」「親が生命保険に入っていることを知らず、請求ができなかった」とはよく聞く話。「これらは親の財産を把握できないことで生じるトラブル。そうならないために、まずは財産を見える化することが大切です」と奥山さん。

財産には、現金や預貯金、有価証券などの金融資産、自宅や土地などの不動産、車・貴金属・家財・骨董品などの動産があり、見える化作業には、

・使用していない銀行口座を解約し、できれば金融資産のリストをつくる

・使用する予定がない不動産は手放して現金化する

・値打ちのわかりづらい貴金属や骨董品は、鑑定書や鑑別書を作成する

などがある。また、ローンの債務残高や未払金などマイナスの財産がある場合も。遺産を個別に放棄することはできないので、相続放棄を行う場合は、プラスの財産もマイナスの財産も放棄することになる。

生前贈与には落とし穴も。

「日本人の寿命が長くなり、親が亡くなったときに、子のライフステージは最もお金のかかる新婚や子育ての期間を過ぎているという場合も多くなりました。親の財産を必要なときに活かすためには、生前贈与が有効です」

生前贈与では、教育資金や住宅資金の特例を使わない限り、年間110万円までの贈与なら贈与税がかからない。ただし、税制の改定によって相続開始前7年以内に行われた贈与は相続税の対象になる。

「生前贈与を受ける際は、ほかの相続人に事前に内容をシェアすることが必須です。また、きょうだい間では納得できていても、その背景を汲まない配偶者が納得できず、揉めるというケースもよくあること。配偶者にも十分な説明をしましょう」

相続の知識や情報を糸口に。

相続の基礎知識や情報を身につけておくと、「税制が変わったって知ってた?」「知り合いが親の不動産の処分で苦労したみたいで……」といった相続の準備につながる会話を切り出すことができる。子から親へのさりげないアプローチが、大きな親孝行になるかもしれない。

賢い相続のための会話テンプレート1. 親の財産を知りたい場合

「おじいちゃん家ちって今どうなってるんだっけ?」

「ネット銀行って使ってる?」

まずは不動産とお金を確認!

“親の実家”あるあるで、共同名義の不動産や資産価値の低い不動産は扱いが難しいため、早めに知っておこう。休眠口座を放置していると、預貯金は引き出しに面倒な手続きが必要に。紙の通帳がないネット銀行は存在に気づきにくいのでとくに注意。利用しているかどうかだけでも確認を。IDとパスワードがわからなくても相続の手続きはできる。

トークの糸口キーワード1 「空き家問題」

敷地の面積が200 m2 以下の場合、固定資産税の支払いは軽減措置によって6分の1となっているが、空き家を放置し続けて「特定空き家」「管理不全空き家」に指定されてしまうと、軽減措置から除外。固定資産税が6倍になる。

トークの糸口キーワード2 「ネットバンクのキャンペーン」

お得なキャンペーンが豊富なネット銀行。定期預金の金利アップやキャッシュバック、ポイントプレゼント、振込手数料が無料になることも。親がネット銀行に抵抗がない場合、預貯金口座整理のきっかけに利用するのも◎。

賢い相続のための会話テンプレート2. 生前贈与を受けたい場合

うちの子、将来は留学したいんだって!

贈与の特例って知ってる?

教育資金は1,500万円まで、住宅資金は1,000万まで非課税!

生前贈与のメリットは、親が生きているうちに本人の希望通りに財産を分けられること、相続税が軽減される可能性があること。ただ「お金を援助してほしい」ではなく「こんなことがやりたい」と目的を伝えると、親も協力しがいがある。非課税制度である「(孫などへの)教育資金の援助」「(子などへの)住宅資金の援助」の特例があるのも話題にしやすい。

トークの糸口キーワード 「生前贈与の7年ルール」

「相続税の対象は死亡日以前3年間に贈与された財産」だったが、租税回避行為を防ぐために2023年度の税制改正で対象期間が3年間から7年間に延長された。生前贈与の開始が遅ければ、相続税の節税効果は低くなってしまう可能性が。

賢い相続のための会話テンプレート3. エンディングノートを書いてほしい場合

エンディングノート
「項目のバランスが最強」と奥山さんが太鼓判を押すエンディングノート『もしもの時に役立つノート』。「生きている間も使える」というメッセージが強く打ち出されている。薄くて書きやすいのも筆が乗る。デジタル遺産の項目が最低限なのは注意。(コクヨ/2,178円)

お互いの緊急時の連絡先やしてほしいことを教え合っておこうよ!

エンディングノートは全世代に必要!

亡くなったときではなく、あくまで急な病気や入院のときのために、緊急時の連絡先やしてほしいこと(電気代・ガス代の支払い、入院に必要なものを買うときの出金口座など)を知りたいと伝えよう。「私も書くからお母さんも書いて」と言うのも効果的。自分の終活にも役立つ。ノートに法的効力はないが、記された希望や思いは遺産分割協議の参考になる。

トークの糸口キーワード 「祭祀財産」

墓地や墓石、仏壇などの祭祀財産は相続税の対象外。親が生前に購入しておくと、課税対象となる現金が減るために節税となる。ローンで購入して完済前に亡くなった場合、残額は債務控除にならない点は要注意。

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