言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第29回~ LEARN 2020.06.26

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。前回から引きつづき、初インド旅4日目に訪れた〈タージ・マハル〉について。

「インドに行ってきた」(その8)

 さて、〈タージ・マハル〉が持つ美しい愛の物語とは。私はこういう風に聞きました。

 その昔、17世紀に当時の王が愛してやまないムムターズ・マハルという王妃がいた。仲睦まじく愛し合っていた二人だが、妃は病気になってしまう。もう長くはないと悟った妃が病床で王に二つお願い事をした。一つは私の死後に妃を取らないで、ということ。もう一つは美しい霊廟を造り、それを見る度に私を思い出してほしい、ということ。闘病も空しく王妃が亡くなってしまった後、王はその二つの願い事を守り、長い歳月をかけて愛する人のため、莫大な費用と職人たちを集めてタージ・マハルを造ったという(作り話か実話かは、まったく分からない)。

 荘厳かつ雄大、だけど温かみがあるのは、これが愛によって造られたものだからなんですね。「わあ、やっぱり愛する人と結ばれて結婚するって素敵なこと。死が二人を分かつとも、なお思い合っているなんて…。私もそういう人見つけたいな~」なんて思いました、ちゃんちゃん!と、なると思ったら、大間違い。私がそんなタイプだと思っているひとは、まだまだ私のことを分かっていないな、と思う。ぜひこの連載を第1回から見直してほしい。
 もちろん、そんな風に思えるのはとっても素敵なこと!なんだけど、いつしか心が曇ってしまった私の感想は「まじかよ、妃。自分がいなくなった後でさえも、王を縛り付けるのか…」でした。現世とあの世を超えた、王妃から王に対する束縛に引きました。
 ここからは、愛を知らない可哀そうな人だと思って読んでください。実際、結婚したことないし、正直、妃のリクエストはまったく理解できない。私がこの世からいなくなっても、ずっと思い続けてっていうのは、さすがにエゴではありませんか?だって、残された人はそれからの人生もあるわけだし、いつまでも縛っておくわけにはいかないでしょ…と思ってしまう…。でも本当に愛していたら、そうなるのかしら。とはいえ、国が傾くくらいのお金と何十年という月日をかけて造らせるってそれってどうよ。う~ん。答えは出ないし、正解もないですね。

 そんな斜に構えた心持ちで見ても、タージ・マハルはものすごく綺麗だったから、本当に正真正銘のホンマもんだと思います。でーんと真正面にタージ・マハルが見えたときの気迫というか、発せられるオーラというのが自信に満ちているように感じられたのは、きっとこんな逸話を聞いたからかもしれませんね。悶々と悠久のかなたに思いを馳せながら、タージ・マハルを見て回り、その後アグラ城というお城にも行くことになった。このアグラ城にも、先ほどのストーリーがついて回る。
 王があまりにもタージ・マハル造りに入れ込んでしまったため、国が存続の危機に陥ってしまった。そんなタイミングで次の実権を握ったのが息子。息子は父をタージ・マハルが窓から見えるアグラ城の一室に幽閉し、何年も父はそこから出られることなく、ただただ自分の造ったタージ・マハルを見るだけの晩年だったという。あまりにもロマンチックすぎる人生だ。そんな王が使っていた部屋と眺めていた窓が辛うじて残っていて、アグラ城に行ったら王と同じようにタージ・マハルを見ることが出来る。正面というよりは、裏から斜めに見る感じなのですが、絶妙な距離でなんだかさすがの私でも少し切なくなりました。
 そんなストーリー込みで、インドに行ったら必ず行ってほしい場所。皆さんにはこのロマンチックでちょっぴり切ない建物がどう見えるだろうか。
 
次回:7月10日更新予定

photo:moron_non
photo:moron_non

【弘中のひとりごと】
もちろん虹プロ見てます。

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