運命の1本に出会えるかも!
ワイン通がわざわざ酒屋で購入するワケ LEARN 2023.11.21

オンラインでも手軽にワインが買えるようになった今、ワイン選びの指標を教えてくれるようなリアルなワインショップが知りたい。頼み方やお店の答え方を覗き見たら、ワイン通がショップに足を運ぶ理由、分かってきました。

ワインを選んだ人と選んでもらった人

頼りになるのはワインショップ

〈鈴木屋酒店〉店主の兵藤昭さんは、イタリア旅から帰国したばかりの料理家岸本恵理子さんがやってくると、

「次はポルトガルに行ってきてほしいと思って!」

とリクエストしながらポルトガルワインのボトルを並べ始めた。旅で感じた現地の空気を料理に落とし込む〝出張料理人〞岸本さんも、ポルトガルはまだまだ体感不足。

「この間兵藤さんにお勧めしてもらったFluiを飲んでから、ポルトガルが気になってました。ワインや料理から大らかな空気を感じます。またすぐ旅ですね」
 
兵藤さんが自信を持ってワインを勧められるのは、岸本さんが品種や生産地に縛られずに興味を持ってくれると知っているからこそ。

「初めてお店に来てくださったお客様とは、どんなワインが好きなのかを探り探り話します。何度か直接話して好みやライフスタイルが分かると、提案もしやすくなりますね」
 
岸本さん自身もワインをオーダーするときは、どんなに忙しくてもメールではなく、来店か電話で兵藤さんと〝直接話す〞のがこだわり。

「ワインの情報は自分でも調べられると思いますが、兵藤さんの言葉で味のイメージや思いを聞いた方が頭に残るんですよ。兵藤さんは私の料理の味もよくご存じなので安心して任せられますね。〝誰が、どのように〞造ったワインなのかだけでなく、〝誰から、どのように〞買うかは、ワイン選びで大切にしているポイントです」

「好奇心旺盛な岸本さんはきっと惹かれると思って」

と兵藤さんが勧めるのは、太陽みたいに明るくて棘がない味のポルトガルワイン。

「土着品種を大切にするポルトガルワインは、僕でも全く知らない品種で造られていることがあります。好みの品種からワインを探す方も多いですが、世界には自分の知らない品種の方が多いです。キノコのような香りがするMonte Pratasや、淡いけれど芯がしっかりした品種のClos Fonte do Santo Cherry Capなどに合わせて、岸本さんがどんな料理にチャレンジするのか気になりますね」

約10年前にイベントを通して出会った岸本恵理子さん(左)と兵藤昭さん(右)。月に1度は対面もしくは電話で話しながら、購入するワインを決めているという。
約10年前にイベントを通して出会った岸本恵理子さん(左)と兵藤昭さん(右)。月に1度は対面もしくは電話で話しながら、購入するワインを決めているという。

そう語る兵藤さんの言葉や表情をよく見ながら、岸本さんが合わせる料理のイメージを膨らませていく。

「ポルトガルには発酵調味料や干し鱈といった日本に似た食文化があります。〝焼きキノコとブドウの白和え〞や〝鰹のたたきと柴漬け〞などの和食とワインを合わせてみたいですね。現地で胃袋・肝臓・五感をフル稼働させて、ワインに合わせた私なりのポルトガル料理を兵藤さんに食べてもらわなきゃ」
 
ワイン選びの第一歩は店主との会話。その言葉に耳を傾け、温度感を感じることで自分なりの関係を築けたら、ワインがもっと楽しく、そしてワインをきっかけとした未知の世界への旅も始まるかもしれない。

セレクトしてもらったのはこの6本

〈鈴木屋酒店〉の店主兵藤昭さんが料理人の岸本恵理子さんにセレクトしたワインを紹介します。

〈鈴木屋酒店〉の店主兵藤昭さんが料理人の岸本恵理子さんにセレクトしたワイン

左から、グラウ バウメのUNDO Orange 2021(オレンジ)(ポルトガル/4,900円)、フムスのPalhete 2021(ロゼ)(ポルトガル(リスボン)/3,900円)、ドミノのMonte Pratas 2020(白)(ポルトガル(ドウロ)/4,100円)、ラディダディのPinheiro Clarete 2021(赤)(ポルトガル(ダオン)/3,950円)、キンタ・ド・ジャヴァリのClos Fonte do Santo Cherry Cap 2020(赤)(ポルトガル(ドウロ)/4,500円)、パッソ・デ・ジガンテのAlvarinho Curtimenta 2021(オレンジ)(ポルトガル(ヴィーニョヴェルデ)/4,900円)

photo_Yu Inohara text_Uno Kawabata (FIUME Inc.) edit_Rio Hirai (FIUME Inc.)

Videos

Pick Up