ハナコラボ 宇宙部レポート! 働く女性の知見が宇宙生活に生かされる?!地上と宇宙の暮らしを考えるワークショップを体験。 LEARN 2020.08.20

宇宙飛行士が宇宙での滞在中に感じた困りごとや改善点は、これから宇宙旅行をするかもしれない私たちにとって他人事ではなく、また地上での生活にも共通するところが多いという。JAXAでは、民間事業者の共創プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の中に、宇宙と地上双方の暮らしをよくする「THINK SPACE LIFE」プラットフォームを始動し、第2回のワークショップを開催。オンラインで参加する企業がアイデアを練る中、ハナコラボ宇宙部も模擬企業としてワークショップに参加し、各企業のプレゼンも聞くことができた。第1回にも参加したバイオリニストの花井悠希さんに加え、アロマ空間デザイナーの石井保子さん、ハナコラボ ディレクター土屋志織がレポートする。

第1回のレポートはこちら

宇宙生活を快適にするミッションを読み解く。

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この日は〈ワコール〉〈資生堂〉〈京セラ〉〈トヨタ自動車〉など、JAXAとの共創をねらう21社が参加。自社のリソースを生かし、これまでになかった「宇宙」という文脈のもとに新たな取り組みを目指していく。

ワークショップは三段階に分けられ、まずはウォーミングアップとして宇宙課題が記されたたくさんのカードをチェック。その中から選んだカードを手に、地上ですぐに実現でき、宇宙で時間をかけて達成していくことを考える。例えば、「閉鎖空間で仕事をする中でのストレス軽減方法」や「炎天下、酷暑環境下での熱中症対策」は、まさに今地上でも課題とされていることだし、「長時間の宇宙滞在で筋力を衰えさせない服や靴が欲しい」というリクエストは介護やリハビリのシーンでも求められそうだ。チェアマンとして登壇した〈NPO法人ミラツク〉西村勇哉さんは「石が使い道を与えられるまでただの石だったように、物の価値は文脈によって与えられていく。『宇宙』という文脈の上で意義が見出されるものを考えてみてください」と促した。

左から、花井さん、土屋、石井さん
左から、花井さん、土屋、石井さん

ハナコラボ宇宙部も考えてみることに。バイオリニストでありドレスのデザイナーとして活躍する花井さん、アロマやインテリアなど機能性とデザイン性を兼ね備えた空間演出を手がける石井さん、出版社でディレクターとして経験を積んできた土屋は、それぞれのバックグラウンドやノウハウを生かせるテーマ、興味のあるテーマを選択する。

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花井さんは「宇宙でも地上でも快適な『ハイテク衣類』」、「炎天下、酷暑環境下での作業を助ける冷却ベスト」のカードをピックアップ。「冷却ベストはすでに製品化されているようだけど、生地に這わせた冷却チューブをデザインに落とし込めばおしゃれになりそう!」とデザイナーの顔に。石井さんは「宇宙でも美味しく食べられるスパイスのきいた宇宙食カレー」、「足の筋肉や皮の脆弱化を防ぐ『宇宙運動靴』」のカードを手に取り、「機能性のある香りは癒し効果も期待できる。食べ物や靴にも活用できるのでは?」とアイデアを巡らせている。これまでさまざまなイベント作りに携わってきた土屋が選んだのは「宇宙でファッションとアートを融合させる『スペースオートクチュール』」、「宇宙を旅した酵母を使った土佐宇宙酒」のカード。「地上にいながら宇宙に関心を寄せるきっかけになるかも!」とのこと。ファッション好き、お酒好きにも宇宙とのつながりができそうだ。

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次に、新たな製品やサービスを考案しシートに書き込んでいく。石井さんは「食欲がなくても取り入れられるサプリなら、宇宙空間でもスパイスの効能を感じられるのでは?」と「スパイスサプリ」を考え出した。

この間、他の企業はそれぞれの技術や強みを宇宙課題に生かすアイデアを形成中。ハナコラボは”模擬企業”としての参加だったが、実際の企業はどんなアイデアを生み出したのだろう?特別に〈久光製薬〉、〈資生堂〉とオンラインで繋ぎ、それぞれの案を聞いてみることができた。「サロンパス」や「フェイタス」など貼り薬で有名な〈久光製薬〉では、宇宙空間に対応できる様々な新たな貼り薬、〈資生堂〉では長年の研究を生かした「クイックむくみケア」など、ワクワクする案が膨らんでいた。「本当に実現できそうだし、出来上がりが楽しみな商品ばかり!」と花井さんも感心しきり。

宇宙生活課題は身近な技術でも解決できる!

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肩慣らしを終え、より具体的な案を組み立てるワークショップに移行。ハナコラボ宇宙部は引き続き模擬企業の形で体験する。まずは宇宙生活で困ることや要望の詳細が書かれているシートから気になるものを抜き出し、無重力空間、日の出や日没がないこと、水や生活用品の制限など、宇宙空間の特徴を踏まえつつ課題解決を図る。ハナコラボ宇宙部が気になったのは「閉鎖空間のなかで、プライベートな空間をいかにデザインできるか?」「宇宙空間で機能的な衣服はできないか?」「日の出や日没がないなかで体内時計や生活リズムはどうつくるか?」「オムツのあり方はどう考えられるか?」「無重力空間で不便なく身だしなみを整えるには?」のシート。もしも自分たちの知見を生かすなら?とチーム内で考えをまとめることに。

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服のデザインや香りの知識など、3人のアイデアをどこに落ち着かせるか、想像力がどんどんかき立てられて話が尽きないハナコラボ宇宙部。「せっかくなら女性目線で考えてみたい!」と「オムツのあり方はどう考えられるか?」のシートで膨らませていくことに決定した。宇宙飛行士は宇宙船の打ち上げと帰還時、船外活動時にはオムツを着用するという。それを心地よく使えるようにするには?そもそもオムツ自体の方法を変えられないか?というミッションだ。今回は3人がより気になる生理用品に絞って考えることに決めた様子。

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「シートには『オムツは案外快適』という声もあるから、問題はニオイやゴミにあるんでしょうか?」と土屋。「最近はナプキン不要の生理用パンツが普及し始めているから、それを応用できればゴミ問題は解決できるかも。水洗いが必要な部分には課題が残りますね」とは石井さん。「そもそも宇宙服は女性が用を足すには難しいデザインらしい。その辺りもデザインを考えたら、手足の不自由な人の衣服にも活用できそうですね」と花井さんも別の角度で意見を出していく。

だんだん方向が定まってきたところで、ワークショップは最終局面へ。

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最後のワークショップでは、先ほどのアイデアを2050年までに実現させる場合のシナリオとロードマップ作り。ディスカッションの結果、「ナプキン不要の生理用パンツをベースに、デリケートゾーンを守るシートを使い捨てに。そのシートはコンポストにできるようにして、ゴミを出さずに資源として循環させていく」という形に意見がまとまった。「まずは、今は目新しい生理用パンツが地上生活で定着することが前提ですね」と花井さん。「同じようにコンポストの機械が家庭で普及することも大事」という石井さんの意見も取り入れながら、ハナコラボ宇宙部なりのシナリオを組み立てていく。「その上で、『土に還る生理用パンツ』のようなものができたら、地球環境に優しく、宇宙でのゴミ問題も解決できそうですね!」と土屋がまとめる。「デザインや香りについても、アイデアを生かせそうです!」と花井さんと石井さんが声を揃えていた。

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最後は、同時にアイデアを固めていた他の企業のプレゼンを聞かせてもらった。普段から手にしたり耳にしたりしてきたアイテムやサービスを、宇宙課題に合わせて柔軟に変容させていくアイデアに3人は唸るばかり。参加したメディアはHanakoのみというなかで、一般消費者としての意見を求められる場面もあった。

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今回のワークショップに参加した感想は?

花井さん「最後のプレゼンではいろいろな企業のお話を伺いましたが、企業同士の掛け合わせでさらに良いものができそうだな、と思いました。太陽光に似た光を発するライトで生活リズムを整えるアイデアは、宇宙だけでなく病院や地上の閉鎖空間でも活用できそうです。アイデアひとつで、すぐに課題解決できそうなことが多いんですね」

石井さん「宇宙美容の話を伺って、私もぜひ参画したいと思うほど嬉しい出会いでした。女性ならではの視点が入ると、宇宙の話題が近くなり、そしてアイデアも広がっていくんだと実感しました!」

土屋「どの企業のお話もリアリティがあって面白かったです。花井さんも話していた自然光を作り出すライトは、海外旅行ができない今、例えばハワイの太陽を再現できたら嬉しい!と妄想が膨らんでしまいます」

ハナコラボ宇宙部のメンバーにもご注目!

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現在JAXAでは、宇宙と地上双方の暮らしをアップデートする生活用品のアイデアを募集中。詳しくはこちらから。

今回はワークショップのテーマであるヘルスケアの分野に合わせてメンバーを集めたハナコラボ宇宙部。それぞれプロとして自身の分野で活躍するだけに、JAXAや参加企業とも相互刺激になった様子だ。今後もメンバーを増やして活動していく予定。ご期待ください!

(photo:Natsumi Kakuto)

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