言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第12回~ LEARN 2019.10.11

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。第12回はJK時代の恩師の言葉について。

「彼氏にフラれてもしょげるな!」

 いつ、どの時代も楽しくは生きているのだけど、じゃあいつが私の歴史で一番の分岐点だったかというと、JK時代だと思う。 私は高校で過ごした3年間がどの時代よりも色濃く残っているし、何より私の人格形成に多大なる影響を与えていると思う。
 私の高校には卒業生なら誰もが知っている名物先生がいて、その先生の授業が好きだった。生徒とも仲が良くて、親子以上の年の差がある生徒にタメ口で話しかけられるような、フレンドリーで親身になってくれる先生だった。私はその先生の、綾小路きみまろさんみたいな漫談風のしゃべり方でまくしたてるように話す人生論が好きだった。

 今でもよく覚えているのは、先生がよく言っていた「男は踏み台、使い捨て」という言葉。よくそんなフレーズを無垢な女子高校生に教えるなぁと今になって驚く。先生が熱心に教えていた伊勢物語のことは何一つ覚えていないのに、この言葉だけは頭の隅にこびりついているのだから、当時からしても辛辣でキャッチーだった。けれども、その頃の私たちは「彼氏にフラれてもしょげるな!」くらいの意味でしかとらえていなかった。まだ恋らしい恋もしていなかったし、よくわかっていなかったのだと思う。
大人になってふと思い出したとき、一体あの言葉はどういう意味だったのだろう、先生は子どもだった私たちに何を伝えたかったんだろう、なんであんな言葉を使ったんだろう、と疑問が沸いてきた。あの言葉に隠れた真意が知りたかったのと、久しぶりに先生の講義が聞きたくなって、連絡をとってみた。孫がじゃれてきて大変だ、と開口一番に言う先生の話しぶりが当時とまったく変わっていなくて、それだけで懐かしくなる。

 あの言葉の真意を問うと先生は、「女子高なりの独立自尊」を伝えたかった、と話した。独立自尊というのは福沢諭吉の言葉なのだけど、文字通り、何事も自分で判断し責任を持って行動しようという教え(私なりの解釈を含みます!)。誰かに頼るのではなく、自分の足でしっかり立っていけるような女性になりなさい、ということで、ハード面でも精神面でも、他人がいないと生きていけないような人にはなるな、ということなんだそうだ。「男は踏み台、使い捨て」は一見かなり強い言葉だし、男性をモノのように見ているみたいだけれども、実は「きっと彼についていけば一生安泰、大丈夫」だったり、「彼と結婚したら私は幸せになれる」というような夢見がちドリーマーな私たちをぶん殴る言葉だったのだ。あなたたちなら自分で出来るんだから、と先生は最後に付け足した。確かに誰かにオールを託すのは楽だ。けれども、まず漕いでみなさい、と。

 「彼氏にフラれてもしょげるな!」でもおおよそ解釈は間違っていなかったが、アラサーになってから聞くこの言葉の重さは、超ド級。仕事に行き詰まったり、嫌なことがあったりすると「誰かのチワワになりたいなぁ」なんて考えてしまうのだけれど、他人を当てにするのはやめて、今いるところで自分が踏ん張るしかないんだなあ、としみじみ考えさせられるのです。

Photo:moron_non
Photo:moron_non

(次回は10月25日更新予定)

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