女性ホルモンと歯の関係。|働く女性のための転機の準備 HEALTH 2023.07.13

思春期、妊娠期、更年期と、女性ホルモンのバランスが大きく崩れるとき、カラダにはさまざまな変化が現れる。特に注意したいのは、放っておくと全身に影響が出てしまうオーラルゾーンだ。Hanako世代が直面する妊娠期には歯周病のリスクを回避すべく、ケアを徹底したい。

INDEX

妊娠期は歯周病に黄信号。普段のケアから念入りに。

「女性ホルモンが歯に及ぼす影響を知っていますか?実は、女性ホルモンのバランスが崩れると、妊娠期の場合には歯周病リスクが一気に高まってしまうんです」と教えてくれたのは、〈すずき歯科クリニック〉の鈴木敬先生。今回は、Hanako世代が気になる歯の健康を考えていくことに。
「女性ホルモンのバランスが崩れやすいのは、思春期、妊娠期、更年期思春期や妊娠期にはエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が大幅に増加します。これにより歯肉が刺激されて炎症を起こしてしまうのです。更年期には唾液やエストロゲンが減ることでさまざまな不調が起こります」(鈴木先生、以下同)。妊娠期に活発になる女性ホルモンは歯周病の菌を刺激する成分を持っていて、このとき起こる歯周病は「妊娠性歯肉炎」と名付けられている「。母体が歯周病になってしまうと、それと戦うために作られる抗体が子宮に悪影響を与え、早産を引き起こすことも。また、歯周病患者の妊婦さんは、低体重児出産になりやすいというデータもあります」

女性ホルモンのバランスが崩れる時期

思春期「歯を磨けていてもホルモンの影響で炎症に。」
小学校高学年から中学生にかけて、ホルモンバランスの乱れや生活習慣の乱れが原因となって、思春期性歯肉炎が起こる。多くは一時的なものだが、なかには月経のたびに歯肉炎が起こってしまう人もいる。

妊娠期「カラダの変化と向き合いながら、最低限のオーラルケアを。」
女性ホルモンの分泌量は通常の10〜30倍になるといわれる。これによって歯周病菌が刺激されるだけでなく、つわりによる食生活の変化、歯磨きなどのセルフケアが難しくなることで、歯周病リスクはアップ。早産や低体重児出産の危険も及ぼすため、無理のないセルフケアを行いつつ、歯科でのクリーニングを定期的に行うのが理想。口内を洗浄する唾液も減る傾向に。

更年期「閉経後は骨が弱りやすく、トラブルが起きやすい。」
骨密度の低下を防ぐ役割もあるエストロゲンは40代頃から減少し、閉経後に激減。唾液の分泌も少なくなり、ドライマウスになると歯周病も進行しやすい。ガムを噛んだり、マッサージをしたりして、唾液を増やそう。

「歯周病はこんな病気。手遅れになる前に予防を。」歯と歯茎の間に汚れが溜まると細菌が増え、歯茎が腫れたり血が出たりする。さらに進行すると歯周ポケットの奥に入り込み、歯槽骨を溶かしてグラグラさせたり(骨吸収)、歯肉を下げて歯が抜け落ちてしまったりする。
「歯周病はこんな病気。手遅れになる前に予防を。」歯と歯茎の間に汚れが溜まると細菌が増え、歯茎が腫れたり血が出たりする。さらに進行すると歯周ポケットの奥に入り込み、歯槽骨を溶かしてグラグラさせたり(骨吸収)、歯肉を下げて歯が抜け落ちてしまったりする。

そもそも歯周病とは、歯茎に炎症を起こす歯肉炎と、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてグラグラの状態にしてしまう歯周炎の総称。若い頃には歯周炎の危険性は低く、30代〜40代には妊婦であるかどうかにかかわらず罹りやすくなるという。虫歯と違って痛みを感じないため、発見が遅れることも。放置していると、胎児への影響だけでなく動脈硬化や糖尿病、認知症など、全身の疾患にもつながってしまうという。

“妊娠期のホルモンバランス、つわりの影響は口内に!”

「ライフステージにより変化する女性ホルモンの量。」女性の性ホルモンは男性とは違い、分泌量が一定ではない。月経周期で増減するだけでなく、更年期を迎えると急激に減っていき、心身に大きな変化をもたらす。男性ホルモンの減り方と比べてみると、一目瞭然だ。※内閣府男女共同参画局HPより作成
「ライフステージにより変化する女性ホルモンの量。」女性の性ホルモンは男性とは違い、分泌量が一定ではない。月経周期で増減するだけでなく、更年期を迎えると急激に減っていき、心身に大きな変化をもたらす。男性ホルモンの減り方と比べてみると、一目瞭然だ。※内閣府男女共同参画局HPより作成

妊娠期に歯のトラブルを抱えやすいのは、セルフケアがしづらい生活になることも原因。つわりにより食べられるものが限られたり、ダラダラと食べ続けたりして食生活が乱れ、口内が酸性傾向になり虫歯リスクが増えてしまう。また、歯ブラシや歯磨き粉に拒絶感を抱くこともあり、ケアがおろそかになりがちだ。歯垢や歯石が溜まると歯周病リスクは高まってしまうのに、予防が難しいのが悩ましいところ。鈴木先生のおすすめケア方法は?
「つわりで歯磨きが大変なのは、私も妻を見ていたのでよくわかります。無理のない範囲で取り入れられるケアを考えてみました」。たとえば、動画を見ながら歯を磨いて気を紛らわせたり、ヘッドが小さい歯ブラシを使って異物感を軽減したり。「大前提として、正しいブラッシングができていることが重要ですね。『バス法』『突っ込み震わせ磨き』など4つの方法を紹介します。口をすすぐだけでは歯垢は取れませんから、一日3回、10分ほどかけてじっくりと行いましょう」。歯垢がタンパク質と結合して石灰化した歯石は、セルフケアでは除去ができないため、定期的な歯科検診も欠かせない。
「論文によって諸説ありますが、歯石が溜まってくるのが3カ月くらい。この周期をめどに通いましょう。歯の磨き方は皆さんそれぞれの歯並びによっても違いがあるため、歯科でアドバイスを受けるのも実践しやすくおすすめです」。妊娠中の歯医者での治療は、5〜8カ月目までは可能。重度の歯周病になればカ月おきの通院も考えられるため、体調が良いときを見計らって定期検診を。

“正しいブラッシングを習慣化し、いつでも実践できるように”

正しいケアがルーティンになっていれば、生活スタイルやライフステージが変わったときにも難なく続けられそう。「赤ちゃんの世話に気を取られる産後も、自分のことが後回しになってしまいがち。虫歯菌は子供にうつってしまうので、パートナーと分担しながら、各自のケアも大切にしてくださいね」

セルフケアの8つのコツ

1.動画・お風呂・掃除などの間に“ながら磨き”を取り入れる。
2.食後や寝る前にこだわらず体調のいいときに歯磨き。
3.ヘッドが小ぶりな歯ブラシで喉の粘膜を刺激しない。
4.唾液が溜まらないようにして、吐き気防止。
5.歯磨き粉は無香料にしたり省いたりしてもOK。
6.キシリトール配合ガムやうがいで無理なくケア。
7.睡眠中は唾液量が減るので前後は特に注意深くケアを。
8.唾液を出すためマッサージもプラス。

illustration : naohiga text:Kahoko Nishimura

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