あなたにとって働きやすい会社とは? #3 mederi・池﨑未来さん  WORK&MONEY 2023.09.29

福利厚生や待遇が良いにこしたことはないけど、「決定権や裁量権を若手にまかせてもらえる」「人生のステージの変化によるパフォーマンスの波を受け入れてくれる」など、人によって「働きやすさ」は多種多様です。この連載では毎回、一人の女性の職場を訪問。人と会社のいい関係について考えます。第三回目は〈mederi(メデリ)〉の池﨑未来(みく)さんです。

オンラインピルの診療やサプリメントの開発など、女性がよりよく生きるためのサービスを提供するフェムテックカンパニー〈mederi(メデリ)〉でマーケティング担当者として働く池﨑未来(みく)さん。3回の転職を経験し、2023年1月に〈mederi〉に入社した。

「入社したきっかけは、先輩からの紹介です。以前、妊娠中の方や妊活をしている方向けのサプリメントなどを扱う会社で働いていたことがあるのですが、当時お世話になった先輩が〈mederi〉に転職していたんです。フェムテックは自分にとってなじみのある業界で、いつかまた挑戦したいと思っていたタイミングで声をかけてもらいました」(池﨑さん)

当時の働き方に疑問を感じていたことも転職を後押ししたという。

「会社の規模が大きかったこともあり、社員一人ひとりが担当する業務が細かく決められていました。キャンペーンを展開する際も、開始時期や期間、内容が細かく決められていて、私が関われるのは、その中のごく一部。業務の幅が狭く、裁量をもって働きたいと思うようになりました。今は、0から1を作り出す仕事ができていると感じます」

データからはわからないユーザーの「声」を大事にしたい

ユーザーインタビューは、Zoomを使ってオンラインで行うことが多い。
ユーザーインタビューは、Zoomを使ってオンラインで行うことが多い。

〈mederi〉のオンラインピル診療サービスは、ユーザーがLINEの公式アカウントから診療の予約を取り、テレビ電話を通じて医師の診療を受けた後、郵送で自宅にピルが届く仕組みになっている。ユーザーの多くは、20代前半〜30代の女性だ。

「私が担当するCRM(顧客関係管理)は、サービスを使っていただいているお客さまに、長くファンでいてもらうための施策を講じるのがおもな業務です。たとえば、ピルの飲み方についてLINEで配信をすることで、初めてピルを使う人へのフォローをしています。そうやって、自社のサービスを使ってもらう価値を生み出しています」

池﨑さんがユーザーにピルの飲み方のフォローをしていることからもわかるように、日本のピルの普及率は決して高くない。

国連が発表した「避妊法2019(Contraceptive use by method 2019)」によると、日本のピル普及率は2.9%。アメリカの13.7%やフランスの33.1%と比べると、その低さがよくわかる。

「日本にはまだ『ピル=避妊』という認識があるのだと思います。一方で、お客さまの声を聞いていると、婦人科の受診や友達が使っていることをきっかけにピルを飲み始めたという方も多く、ピルに対するマイナスイメージが少しずつ払拭されてきていると感じます。

低用量ピルは、月経困難症やPMSの治療にも有効とされています。『みんなつらいんだから、自分はたいしたことない』と、生理痛やPMSを我慢してしまう方もいますが、改善できる方法があると知ってほしいと思います。正しい知識を持ってピルを飲めば、生理中でもいつも通りに仕事ができ、パフォーマンスを発揮できる。避妊だけでなく、女性の生活が豊かになることを啓蒙していきたいですね」

女性の健康にかかわるデリケートなサービスを扱う上で、大切にしていることがあると話す。

「マーケティング担当として、大人数のデータに基づいた顧客分析は重要です。ただ、それだけではサービスの利用や解約に至った理由、ピルを服用してどのように症状が改善したかなどの深層部分まで把握することはできません。

そこで取り組んでいるのが、ユーザーの方やサービスを解約した方へのインタビューです。データに基づいた分析とお客さまの生の声を聞くこと、この両軸で考えることを大切にしています」

「ヨガ・お酒・推し活」が仕事の原動力に

友人(左)と上野にある居酒屋〈大統領〉で。貴重な日本酒「日高見(ひたかみ)」を飲んでテンションが上がったそう。
友人(左)と上野にある居酒屋〈大統領〉で。貴重な日本酒「日高見(ひたかみ)」を飲んでテンションが上がったそう。

スタートアップとして成長し続ける〈mederi〉。社内でたった1人のCRM担当者として奮闘する池﨑さんを支えているのが、プライベートの時間だ。

休日は午前中にホットヨガに行き、夜は友人や恋人など、誰かと一緒に行きつけの店や気になっていた店に足を運び、お酒を飲む。年齢も職業も異なる人たちとのお酒を介したコミュニケーションは、ユーザーへのインタビューにも生かされていると話す。

そして、プライベートの中でもとくに熱を注いでいるのが「推し活」だ。

「高校生の頃から、アイドルグループSexyZoneの中島健人さんを推しています。好きになったきっかけは見た目の格好良さでしたが、今はアイドルとしてのプロ意識の高さや、忙しさを理由にせず有言実行する姿に、自分もがんばらなきゃと刺激を受けています。グループでデビューする前から応援しているので、推しと一緒に成長しているような感覚です」

全国ツアーがあれば土日を利用して遠征し、推しの誕生日にはケーキを用意して祝う。また、外出先で推しのアクリルスタンドと一緒に写真を撮るほか、推しの縁の地を巡る聖地巡礼もするという。控えめな口調ながら、その行動力に推しへの熱量の高さがうかがえる。仕事もプライベートもフルパワーで力を注いでいて、息切れをすることはないのだろうか。

「『休日だから寝ていたい』と思うことはなく、むしろ予定が詰まっている方が元気になれるんです。プライベートの時間を楽しんだら月曜日から仕事をがんばれるし、週末に楽しみがあると仕事の原動力になる。そうやって、うまく循環しているんでしょうね」

働きやすい環境を実現するのは、自分次第

仕事とプライベートを軽やかに充実させている池﨑さんは、すでに自分のスタイルを確立しているようにも見える。働きやすさについてはどう考えているのだろう。

「職場環境も働きやすさを左右する要素の一つではあるものの、すぐに変えるのは難しいですよね。それなら、働きやすさを実現するために自分がどう変わるかを考えたほうがいいと思います。たとえば、同じ仕事でもダラダラとやっていたら終わらないけど、やるべきタスクの優先順位をつけて意識的に取り組めば、スケジュール通りに終わらせることができると考えています」

フルリモートで働いていた池﨑さんは、転職後にフル出社へと変化した。通勤の負担がなく自由度の高いリモートワークを求めて転職する動きもある中で、フル出社の今のスタイルが合っていることに気づいたという。

「リモートワークの良さもありますが、その反面『オンラインでわざわざ聞くことではない』と質問するのをためらってしまうことも。対面なら、困ったことがあればすぐに上司やメンバーに相談できます。

また、弊社は社員同士の仲がよく、一緒にランチに行ったり、仕事が早く終われば飲みに行ったりすることもあります。じつは少し前にリモートワークが続いた時期があったのですが、久しぶりに出社してメンバーと話をしたら、気持ちが晴れやかになっていることに気づきました。『笑うことって大事だな』と、改めて実感しました」

最後に、これから仕事で挑戦してみたいことを聞いた。

「社内にCRMチームを作ることです。弊社は成長スピードが速く、私が入社した頃と比べてお客さまの数も社員の数も増えました。今は1人で担当している仕事をチームで進めることができれば、より多くの施策や分析を行うことが可能になるはず。お客さまに、さらなる価値を提供する方法を考えていきたいです」

mederi (メデリ) 株式会社
text:Naoko Hata photo:Yuka Uesawa

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