民藝って意外と使える! 初心者におすすめうつわ3選|“センスがいい人”になりたくて Vol.6

民藝って意外と使える! 初心者におすすめうつわ3選|“センスがいい人”になりたくて Vol.6
民藝って意外と使える! 初心者におすすめうつわ3選|“センスがいい人”になりたくて Vol.6
LEARN 2025.04.25

家は自分だけの特別な空間。お気に入りのものを、納得いく洒落感でスタイリングできたら毎日がもっと“気持ちいい”のは確実。だけれど、私たちを悩ませるのが「なんかしっくりこない問題」。これ、センスの問題? 素敵な暮らしづくりのプロ、菅野有希子さんにありがちお悩みをぶつけます。今回は、民藝がテーマです。

菅野有希子
菅野有希子
テーブルコーディネーター/プロップスタイリスト

雑誌、書籍、WEBメディア等でライフスタイル提案のスタイリングや撮影を行う。リノベーションしたマンションでのおしゃれなライフスタイルを紹介するインスタグラムが人気。うつわ愛好家。ハナコラボパートナー。 Instagram:yukiko130

なんとなく気になるけど、素朴すぎて食器だけ眺めても魅力が伝わりづらい。意外と個性的な柄も多く「組み合わせ方が難しそう」と不安要素を感じてしまうのが民藝のうつわではないでしょうか。

ですが! 実は食卓のアクセントにピッタリで、和食も洋食もおいしく見せてくれる頼もしいアイテムなんです。今日は、難易度高そうと感じるポイントを解決しつつ、モダンなライフスタイルにも取り入れやすいも3つのうつわをご紹介します。


民藝とは?


そもそも民藝とはなんでしょう。

大正時代、思想家の柳宗悦が考案した概念「民藝」。名もなき職人たちの手による手仕事、その実用品としての素朴な美しさに「用の美」を見出す民衆的工芸品たちのことを指します。

民藝のうつわと聞いて思い浮かべるだけでも産地それぞれさまざまな窯元や技巧があり、一概にこのビジュアルとはいえないのですが素朴な風合いや手仕事ならではのあたたかみは共通した良さかと思います。

個性的なのに意外と合わせやすい! 名脇役

代表的なものだけでも、飛び鉋(とびかんな)が特徴的な小鹿田焼(おんたやき)、濱田庄司らによって見出された素朴な益子焼瑠璃色が美しい出西窯(しゅっさいがま)など、産地を代表する民藝のうつわはさまざまありますが、比較的厚みがあり無骨で男性的、また意外と色柄に個性があるものが多いように感じます。

そのパワフルなルックスに反して実は馴染みやすいというのが民藝の良さです。

こんなふうに白い磁器のうつわや、藍色の染め付けのうつわ、焼き締めのように釉薬のないものまで多種多様な食器と合わせて食卓に並べても不思議としっくりきます。もちろん、極端にモダンな洋食器などは合わせづらいと思いますが、和食器の定番であれば何を合わせてもなぜかまとまる。その包容力に驚かされます。

今の手持ちのうつわが単調すぎてなんか物足りない、でも合わせやすいものが欲しい。そんな欲張りな人向けのちょうどいいアクセントに民藝のうつわはぴったりです。


毎日のおうちごはんがおいしそうに見える

素朴なうつわ、ということで肉じゃがや煮付けなど地味な和食が似合うというのは当然ですね。和食との相性の良さはあたりまえですが、意外なことに洋食ともマッチしてくれるんです。パンやグラタン、パスタやハンバーグなど、洋食を民藝のうつわにのせると不思議としっくりきちゃう。

気取らないおうちごはんこそ、民藝のうつわがその威力を発揮します。その厚手で素朴で力強いうつわのおかげか、気取らないおうちごはんがおいしそうに見えるというのも嬉しいところ。

同じハンバーグでも、白いプレートに乗せると洗練らされたオシャレさが際立ち、民藝のうつわに乗せるとほっとする家庭料理感やおいしそうなシズル感が出るのが不思議。あえて洋食を民藝のうつわに乗せる上級者スタイル。ぜひ試してみて欲しいです。

存在感があるからこそ形はシンプルに

何かと力強さを感じる、個性あるうつわの多い民藝。だからこそ形はシンプルなものを選ぶのがおすすめです。まずは手のひらサイズの丸いお皿から始めてみるのが良いのではないでしょうか。

「なるほど、ちょっと試してみたいな~」と思ったそこのあなた。検索してその種類の多さにびっくりされたのではないでしょうか? そうなんです。民藝って選び方が難しいんですよね

産地も窯元もたくさんあるし、見た目も結構まちまちで、何から取り入れたらいいか迷ってしまうと思います。そんなみなさんに、今から民藝をはじめるなら! 初心者向け3選をお伝えします。

まずは小さい食器でお試し!「丹窓窯 / スリップウェア豆皿」

丹窓窯 / スリップウェア 豆皿 10cm 1,430円。商品ページ


個性的な色柄が多い民藝だからこそ、まず豆皿で試してみるというのはどうでしょうか?日本でスリップウェアを広めたとされるイギリスの作陶家バーナード・リーチ氏の工房で技術を受け継ぎ、丹波でスリップウェア(陶器の表面を化粧土=スリップで装飾したうつわ)を作られている窯元「丹窓窯(たんそうがま)」

スリップウェアは“THE民藝”なうつわの一つですが、波のような抽象的な柄が比較的インパクトあるので、豆皿で面積が小さく食卓に取り入れてみるだけでも食卓の印象はガラッと変わると思います。


フルーツを乗せたり、ちょっとしたおつまみを乗せたりちょうど良いサイズ。少し軽くて分厚すぎない厚さなので民藝といっても比較的モダンな印象。ふだんシンプルな食器が多い方にもおすすめできる一品です。

素朴な黄色とイッチンがさりげなくおしゃれ「小代焼ふもと窯6寸皿」

《小代焼ふもと窯 小代焼 6寸皿》 3,080円。商品ページ

こちらもスリップウェアですが、また趣の異なるものを選んでみました。熊本の「小代焼(しょうだいやき)ふもと窯」さんのこちらのお皿は先ほどのものに比べてより厚みもあり色合いにも温かみを感じます。とにかく渋くてかっこいい。

黄釉(黄色い釉薬)の色合いも素晴らしいです。この深みのある黄色が料理をおいしそうに見せてくれます。茶色いおかずも、緑色の野菜も意外となんでも似合っちゃうんですよね。


なんてことないトーストが、まるで懐かしい喫茶店の一瞬や、イギリスの片田舎のような趣を見せる。これが民藝パワー。今回セレクトした中でも特に個人的にお気に入りです。

料理を乗せた時にほんのり下のポン描き(イッチンとも呼ばれる化粧土などを先の細いスポイトを使って絵を書くこと)の柄が見えてちょうど良い華やかさを添えてくれるのも良いですね。

セレクトショップ別注が優秀! BEAMS fennica「濱田窯 7寸皿」

《BEAMS fennica【別注】濱田窯 / 益子焼 7寸皿》 4,620円。商品ページ

最後はメイン料理を盛り付けられるくらいの大きさのうつわです。民藝運動を支えた濱田庄司が益子に開窯した「濱田窯」。民藝の申し子みたいなうつわの中でもなんとセレクトショップ《BEAMS》別注を見つけました!

これまたイッチンでの装飾が特徴的なお皿ですが、今回は料理を盛り付けた時に周辺にぐるっと囲むように白い柄が入ったもの。素朴なラインがやりすぎない程よいアクセントで非常に使いやすい。そして、全体的に落ち着いた素朴なムード。民藝初心者さんにも取り入れやすいと思います!

形やサイズもおうちごはんで出番の多いカレーやパスタ、メインのお惣菜など乗せるのにぴったり。活躍してくれること間違いなしです。

このfennica(フェニカ)という《BEAMS》のレーベルは、「“デザインとクラフトの橋渡し”のため、日本を中心とした伝統的な手仕事と世界中からの新旧デザインを融合する、ライフスタイル提案型レーベル」と銘打つ通り、伝統的な手仕事を現代の暮らしにマッチさせた“ちょうど良い”品々ばかり。

こちらの濱田窯のお皿に限らず、ほどよい民藝のうつわを探している方にはぜひチェックして欲しいものばかりでした。

民藝の食器は、うつわ単体で見ると地味すぎたり個性が強くて敬遠されたりすることもあるかと思いますが、実は他の食器と組み合わせたり料理を乗せるとその真価を発揮するにくいやつ。

なかなかお店に行ってうつわだけ並んでいるところを眺めていても良さに気づきにくかもしれませんが、いざ家庭で使ってみるとその魅力にハマること間違いなし!

形がシンプルなものや小さいアイテムから始めてみれば、みなさんの食卓にも取り入れやすいと思いますよ。

手に取りやすいオンライン販売のものを3つご紹介した結果、スリップウェアやイッチンの仕上げと比較的似た仕上げのものになってしまいましたが、これ以外にも民藝のうつわは奥深くさまざまな種類があります

ぜひクラフトの良さを実感できる民藝の世界に足を踏み込み、自分のお気に入りの1枚を見つけてみてくださいね。

text&photo_Yukiko Sugano

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