30代のうちに知っておきたい、妊活や更年期のこと


たかお・みほ/医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。〈イーク表参道〉副院長。ヨガ指導者。婦人科診療やメディアでの発信を通して女性の悩みに寄り添う。
女性特有の不調について考える時、密接に関わってくるのがSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の考え。
「性と生殖に関する健康と権利のことです。生理痛にどう対処するか、子どもを産むか、更年期のこと。自分の体のことは自分で考え決める。女性という船の舵は自ら取ることが肝心です」
体の機能だけで考えると出産は20代〜30代半ばがベスト。「キャリアも諦めたくない現代女性が出産の時期を決めるのは難しい。パートナーがいない場合、たとえば卵子凍結を選択する女性も増えていますが、保存維持にはコストがかかり、もし使わずに廃棄となるとまた違う悩みを持つことに。不妊治療も妊娠できる可能性が100%なわけではまったくありません。タイムリミットを理解し自分の人生設計を見通すことが大事」
さらに人生は長く、続く。30代後半、エストロゲンが減少しだすプレ更年期から不調が増える人も多い。「更年期は必ず訪れる時期ですし、特に40代から婦人科系の疾患は増えていく。家族やパートナーと話をする、婦人科の先生と情報を共有するなど、自分の体の状態を自分だけでなく周囲の人たちと共有し、解像度を上げていくことも大切な考え方です」
課題1. 将来のカラダのこと、何が心配?
・婦人科系の病気が気になる。
・自分が妊娠できるかどうか。
・更年期になるとどう体が変わるのか。
・何歳までなら子どもが持てるか。
・閉経したらどうなるのか?
・すでにプレ更年期を感じて不安です。
妊娠できるか、またそのリミットは? ということと、加齢に伴う体調の変化や病気のリスクへの心配が多数。女性ホルモンにまつわる悩みは閉経後も続く。
課題2. 近い将来、妊娠・出産をどう考える?
「10年以内に妊娠・出産したいと思う?」という問いにYESと答えたのは半数以上の58.5%。10年後、仕事はどうしている? 結婚はしている? 具体的な道筋をみつけるために今から何ができるだろう?
課題3. パートナーと考えてる? プレコンセプションケアのこと。
プレコンセプションケアとは、将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うこと。パートナーとライフプランをすり合わせればより解像度が上がる。カップルで受けられるプレコンセプションチェックも1つの方法。
プレコンセプションチェック、たとえばこんな検査が。
[AMH 検査]
血液検査で妊娠のための卵巣予備能力があるかを調べる。「数値が高い=妊娠できる」ではないため、総合的判断が必要。
[ホルモン検査]
排卵や精子形成に関わるホルモン値を調べる。主な項目は、FSH、LH、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなど。
[経膣超音波検査]
膣を通して超音波で子宮や卵巣の形状、子宮内膜の厚さなどを見る。子宮筋腫や卵巣のう腫、子宮内膜ポリープなどもチェック。
課題4. きちんと理解している? 不妊や命にも関わる女性の病気。
【乳がん】
30〜40代から増加。エストロゲンが影響するため、初潮が早く出産や授乳の経験がないとリスクが高い。
【子宮筋腫】
子宮の筋層にできる良性のこぶ。膀胱や直腸を圧迫したり、子宮内膜に影響して過多月経を引き起こすことも。
【子宮がん】
ウイルス感染が原因の子宮頸がんと、閉経後から増える子宮体がんがある。検診は2年に1回が推奨されている。
【子宮内膜症】
子宮内膜に似た組織が何らかの原因で子宮外にできる。増殖して慢性的な癒着を起こし、痛みや不妊の原因に。
【卵巣がん】
卵巣に発生する悪性腫瘍。年齢が上がるとリスクが高まる。子宮がん検診の際、卵巣の状態も同時にチェックを。
【卵巣のう腫】
卵巣にできる良性の腫瘍。小さいうちは自覚症状がないが、急に大きくなったり、悪性に変わる危険性もある。
課題5. まったくちがうプレ更年期と更年期って?

プレ更年期
特徴 医学的な表現ではないが、ストレスなどによる自律神経の乱れが原因。イライラなど更年期と似た症状が。
対処法 ストレス由来なので、十分な睡眠時間、適切な食事、運動習慣の導入など、生活習慣を見直すことが大事。
更年期
特徴 卵巣機能が低下しエストロゲンが減少することで起きる。ほてり、イライラ、頭痛など症状もさまざま。
対処法 エストロゲンを足すホルモン補充療法や、サプリ・漢方薬の服用が効果的。生活習慣の見直しも必須。